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重力操作のスキルを得た翌日の日。
俺は高揚する気分を隠すことなく、フィーリネと途中出会ったゾイトを引き連れて街を歩いていた。
目的地は冒険者ギルド。その他には興味はありませんといった感じで、一直線に歩く俺の足取りは軽い。
「おい、フィーリネ。何故アイツは気持ち悪い笑みを浮かべてるんだ? とうとう頭がおかしくなったのか?」
「ううん、そういうわけじゃないの。ただ、やっと念願が叶ったというか、努力が報われたというか……。とにかく、凄く喜んでるんだよ」
コソコソと会話をする少女たちの声が背後から聞こえてくる。一人は事情を知らないため不審がり、一人は事情を知ってるからこそフォローを入れてくれている。
そんな彼女たちの会話をBGMに、俺は鼻歌混じりに視線を手元へと向けた。
視界に入るのは小さな純白の羽。羽毛布団の中身のようなそれは、何を隠そうドゥルドゥーの羽。
今朝むしり取ってきたばかりのものである。
「まさか……あんな呆気ないとは思わなかったけどな」
思い出すのは今朝のことだ。
スキル『目覚まし』で昨日と同じく深夜に叩き起こされた俺は、ドゥルドゥーの羽欲しさに奴らのいる平原へと訪れた。
そこで手に入れたばかりの重力操作のスキルを試してみると、思いのほかあっさり奴らの動きを止められた。
それからは早い。動けない連中の身体から羽をむしり取る。ただそれだけの単純作業の末に、俺は拍子抜けするほど簡単に羽を手に入れてしまったのだ。
重力ってものが便利なのはわかるけど、こんな簡単だと俺の苦労はなんだったんだろう。
などと最初は思っていたが、結果良ければ全て良しという言葉があるように、羽を入手したという結果があるのだから良しとしよう。
仮に重力操作を手に入れずに、ただ加減を覚えるという行為に走っていたならどうだろう。
ただ時間を浪費して、前に進めなかったなら俺はどうなっていただろう。
そう考えれば、たとえ自分の努力が無駄になったとしてもこれで良かったのだと俺は思えた。
などと自分を納得させつつ、手の中に収まる純白の羽をニタニタ笑みを浮かべながら見ていると
『我が主よ。フィーリネはともかくとして、あの小娘にまで良いように言わせておいてもいいのか? どうやら主のことをバカにしているようだが……』
パタパタと小さな翼を上下に動かし、そばに寄ってきたのは黒龍。
黄金色のつぶらな瞳には若干不満気な様子が見え隠れしていた。
「ありがとうな、コーラル。でも良いんだよ。あいつが俺を小馬鹿にしてくるのはいつものことだし。いちいち気にしていたら、アイツとは付き合えないだろうしな」
気にする必要はないと言ってみれば、渋々といった感じで頷く黒龍……もとい、コーラル。
いつまでも『黒龍』などと種族名みたいなもので呼ぶわけにもいかないからと、昨日フィーリネと一緒に考えて名付けた名前だ。
本人も結構気に入っているらしく呼ばれるたびにその尻尾を犬のように振るのだから可愛いもんだ。
そんなコーラルは羽を動かして俺の頭上に移動。秒もしないうちに頭に重みを感じたと思えば、彼は俺の頭の上で落ち着いていた。
「俺の頭の上ってそんなに気持ちがいいものか?」
『うむ……少なくとも、フィーリネ殿に絞め殺されるよりはマシだ。主は我に手を出そうとはしてこないだろう?』
「そりゃまぁ……」
女の子の胸に圧迫される。
男からすれば夢のような話ではあるのだが、どうやらコーラルにとってのその行為は地獄以外の何物でもないらしい。
確かに、昨日も家に帰ってから抱きつかれていた。
『一緒に寝ましょう』って、彼女の寝室に連れていかれる時など、涙を瞳の端に浮かばせて俺に対して助けを求めてきたくらいだ。
一応、俺の婚約者という存在故に大きな抵抗は見せていないが、それでも好きで静かにしているわけでもないらしい。
だが、いつまでもやられているばかりでは精神的に疲弊する。だから、俺の頭へと避難してきているわけだ。
『それとも、主は迷惑だろうか? 不満があるのなら素直に退くつもりだが……』
「別に構わないさ。重いわけでもないし、気持ち悪いわけでもないしな。お前が来たい時に避難してくればいいさ」
『すまぬ……』
短く謝罪を口にして、それ以降コーラルは何も喋らなくなる。
視線を頭上に向けてみれば、完全に力を抜いて静かにコーラルが寝息を立てる姿が目に入った。
親の胸の中にいるような安心しきった顔は、見ているこちらも穏やかな気分になってくる。
「まぁ、ゆっくりしてろよ」
そう静かにつぶやいて、俺は出来るだけゆっくり歩くよう務めるのだった。
それからやや時間も経った冒険者ギルド。
相変わらずの賑やかな雰囲気は健在で、見回せば大半の連中が酒を片手に仲間内と談笑している姿が目に入る。
アイツらはここを酒場と勘違いしているのではないかとは思うが、冒険者っていうのは基本的に荒くれ者の集まりのようなものだ。
酒を片手に武勇伝を語り、語られ、それをツマミにまた酒をあおる。それが冒険者なんじゃないだろうか。
中には真面目に依頼を請け負ったらしく受付で色々やってるやつもいるみたいだが、大半が談笑するためにテーブルを囲んでいるみたいだ。
そんな冒険者たちを尻目に俺は受付まで行くのだが、何故か俺がギルド内に入ってからやたらと視線を感じる気がした。
「……?」
周りをみれば変わらず談笑している冒険者たちの姿があるけれど、時折こちらを伺うように見てくる。
だが、視線を向ければ顔を背けるのだから何なのかわからない。
頭に疑問符を浮かべつつ、受付まで顔を出してみる。すると、受付のお姉さんが変わらない営業スマイルを向けて来てくれたのだが、その表情が俺を視界に収めるなり引き攣ったものに変貌する。
いや、正確には頭上の小さなドラゴンだろうか。
「え、えっと、いらっしゃいませ……?」
何故疑問符なんだ。俺は一応一昨日もこのギルドに来たんだぞ。
突然のお客様対応に苦笑しながら、俺は手の中にあった羽をカウンターに置く。そして懐から以前もらっていた『仮ギルドカード』を取り出すと
「これで、一応は試験達成だと思うんだけど、大丈夫ですか?」
「……えっ!? あぁ! 新人冒険者の方ですね! 申し訳ありません、気づくことが出来ず……」
慌てて頭を下げる受付のお姉さん。
まぁ、一日置いての達成報告だしな。それまで何人もの冒険者やお客の相手をしているわけだし、いちいち俺のことを覚えているはずもないだろう。
初日に凄まじい魔力量を出したはずなのに、忘れられたことなんて全然気にしていない。いや、ちょっぴり悲しいかも……。
そんな俺の心情など知るよしもないお姉さんは、カウンターから少し席を外すと裏方へ。それからしばらくすると、金色のカードを乗せた盆を持って帰ってきた。
「こちら、春崎暁人さんのギルドカードになります」
「ありがとうございます」
お礼と同時にカードを手に取る。
クレジットカード程度の大きさのそれには、俺の氏名と『F』と英語表記の文字が描かれていた。
「この文字は何ですか?」
「それは、言わば持ち主の強さの値のようなものです。『Aランク』から『Fランク』までの分かれており、上に行くほど高ランクの仕事を受けることが多くなるでしょう」
「なるほど……。ちなみに、このランクを上げるにはどうすれば?」
「魔物を狩って強さを示すか、頼まれた依頼を見事完遂してみせるかのどちらかですね。暁人さんはまだギルドに登録したばかりなので知名度が低いです。なので、しばらくは魔物を狩って行くしかないでしょうが……」
つまり上を目指すなら行動して結果を見せろということか。
魔物を倒して強さを示す。それはまぁ、問題ないだろう。
たかがドゥルドゥーから羽を得るためだけに何匹の魔物と戦ってきたかはわからないが、要はその時同様に魔物を倒してそれを持ち帰れということだ。
それだけでランクが上がるというのなら簡単な話だ。
だが、知名度が低いから依頼が受けられないというのはどうなのだろう。ギルドでは依頼の受注が出来ないのだろうか?
「あの……要はどういう?」
申し訳無さげに聞いてみれば、お姉さんは苦笑しながら教えてくれた。
それらを要約するとこうだ。
一昔前までは、依頼人がギルドにやってきて依頼を頼み、ギルド側がそれを掲示板に張り出すような形で依頼の受注をしていたのだという。
冒険者は張り出された依頼を吟味し、可能なものであれば請け負う。そうして、ギルドは依頼人の頼みごとを解決していたらしい。
だが、近年では『冒険者が依頼を選ぶ』のではなく、『依頼人が冒険者を選ぶ』というものに変わったのだという。
「少し前の冒険者の方々は、こう言ってはなんですが怠けている人の方が多かったんです。お金が無いから渋々依頼を受ける。依頼は適当に張り出されるので、適当な時間に受ければいいのだろうと。ですが、ギルドは助けを求める依頼人を救うための施設です。そのような考えでは、助けられる人も助けられません」
「だから、依頼人が冒険者を選ぶ手法にしたんですか」
「はい。お金を手に入れるには、魔物を倒して換金するか、自分を指名してくる依頼人が現れるのを待つしかありません。冒険者になった以上は、責任を持ってことに当たってもらわないと……こちらとしても、依頼人への対応が大変なんですから……」
嘆息するお姉さんの表情は随分と疲弊していた。
まるで、コンビニにやってきたクレーム客の対応を終えたあとの社員みたいな。いや、つまりそういうことなんだろう。
そんな彼女にお疲れ様と苦笑を向けて
「じゃあ、当分は魔物を狩ってくればいいってことですね?」
「……はい。そういうことになりますね。『C』ランクからは冒険者ボードに張り出されるので、それまでは頑張ってください」
「分かりました。あっ、そうだ」
これでギルド登録は終了ですと笑みをみせるお姉さん。
そんな彼女に待ったと言葉を続けると、自分の頭上でスヤスヤと眠るコーラルを指差して
「コイツの飼育許可も欲しいんですけど、大丈夫ですか?」
そう告げたのだった。
俺は高揚する気分を隠すことなく、フィーリネと途中出会ったゾイトを引き連れて街を歩いていた。
目的地は冒険者ギルド。その他には興味はありませんといった感じで、一直線に歩く俺の足取りは軽い。
「おい、フィーリネ。何故アイツは気持ち悪い笑みを浮かべてるんだ? とうとう頭がおかしくなったのか?」
「ううん、そういうわけじゃないの。ただ、やっと念願が叶ったというか、努力が報われたというか……。とにかく、凄く喜んでるんだよ」
コソコソと会話をする少女たちの声が背後から聞こえてくる。一人は事情を知らないため不審がり、一人は事情を知ってるからこそフォローを入れてくれている。
そんな彼女たちの会話をBGMに、俺は鼻歌混じりに視線を手元へと向けた。
視界に入るのは小さな純白の羽。羽毛布団の中身のようなそれは、何を隠そうドゥルドゥーの羽。
今朝むしり取ってきたばかりのものである。
「まさか……あんな呆気ないとは思わなかったけどな」
思い出すのは今朝のことだ。
スキル『目覚まし』で昨日と同じく深夜に叩き起こされた俺は、ドゥルドゥーの羽欲しさに奴らのいる平原へと訪れた。
そこで手に入れたばかりの重力操作のスキルを試してみると、思いのほかあっさり奴らの動きを止められた。
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重力ってものが便利なのはわかるけど、こんな簡単だと俺の苦労はなんだったんだろう。
などと最初は思っていたが、結果良ければ全て良しという言葉があるように、羽を入手したという結果があるのだから良しとしよう。
仮に重力操作を手に入れずに、ただ加減を覚えるという行為に走っていたならどうだろう。
ただ時間を浪費して、前に進めなかったなら俺はどうなっていただろう。
そう考えれば、たとえ自分の努力が無駄になったとしてもこれで良かったのだと俺は思えた。
などと自分を納得させつつ、手の中に収まる純白の羽をニタニタ笑みを浮かべながら見ていると
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気にする必要はないと言ってみれば、渋々といった感じで頷く黒龍……もとい、コーラル。
いつまでも『黒龍』などと種族名みたいなもので呼ぶわけにもいかないからと、昨日フィーリネと一緒に考えて名付けた名前だ。
本人も結構気に入っているらしく呼ばれるたびにその尻尾を犬のように振るのだから可愛いもんだ。
そんなコーラルは羽を動かして俺の頭上に移動。秒もしないうちに頭に重みを感じたと思えば、彼は俺の頭の上で落ち着いていた。
「俺の頭の上ってそんなに気持ちがいいものか?」
『うむ……少なくとも、フィーリネ殿に絞め殺されるよりはマシだ。主は我に手を出そうとはしてこないだろう?』
「そりゃまぁ……」
女の子の胸に圧迫される。
男からすれば夢のような話ではあるのだが、どうやらコーラルにとってのその行為は地獄以外の何物でもないらしい。
確かに、昨日も家に帰ってから抱きつかれていた。
『一緒に寝ましょう』って、彼女の寝室に連れていかれる時など、涙を瞳の端に浮かばせて俺に対して助けを求めてきたくらいだ。
一応、俺の婚約者という存在故に大きな抵抗は見せていないが、それでも好きで静かにしているわけでもないらしい。
だが、いつまでもやられているばかりでは精神的に疲弊する。だから、俺の頭へと避難してきているわけだ。
『それとも、主は迷惑だろうか? 不満があるのなら素直に退くつもりだが……』
「別に構わないさ。重いわけでもないし、気持ち悪いわけでもないしな。お前が来たい時に避難してくればいいさ」
『すまぬ……』
短く謝罪を口にして、それ以降コーラルは何も喋らなくなる。
視線を頭上に向けてみれば、完全に力を抜いて静かにコーラルが寝息を立てる姿が目に入った。
親の胸の中にいるような安心しきった顔は、見ているこちらも穏やかな気分になってくる。
「まぁ、ゆっくりしてろよ」
そう静かにつぶやいて、俺は出来るだけゆっくり歩くよう務めるのだった。
それからやや時間も経った冒険者ギルド。
相変わらずの賑やかな雰囲気は健在で、見回せば大半の連中が酒を片手に仲間内と談笑している姿が目に入る。
アイツらはここを酒場と勘違いしているのではないかとは思うが、冒険者っていうのは基本的に荒くれ者の集まりのようなものだ。
酒を片手に武勇伝を語り、語られ、それをツマミにまた酒をあおる。それが冒険者なんじゃないだろうか。
中には真面目に依頼を請け負ったらしく受付で色々やってるやつもいるみたいだが、大半が談笑するためにテーブルを囲んでいるみたいだ。
そんな冒険者たちを尻目に俺は受付まで行くのだが、何故か俺がギルド内に入ってからやたらと視線を感じる気がした。
「……?」
周りをみれば変わらず談笑している冒険者たちの姿があるけれど、時折こちらを伺うように見てくる。
だが、視線を向ければ顔を背けるのだから何なのかわからない。
頭に疑問符を浮かべつつ、受付まで顔を出してみる。すると、受付のお姉さんが変わらない営業スマイルを向けて来てくれたのだが、その表情が俺を視界に収めるなり引き攣ったものに変貌する。
いや、正確には頭上の小さなドラゴンだろうか。
「え、えっと、いらっしゃいませ……?」
何故疑問符なんだ。俺は一応一昨日もこのギルドに来たんだぞ。
突然のお客様対応に苦笑しながら、俺は手の中にあった羽をカウンターに置く。そして懐から以前もらっていた『仮ギルドカード』を取り出すと
「これで、一応は試験達成だと思うんだけど、大丈夫ですか?」
「……えっ!? あぁ! 新人冒険者の方ですね! 申し訳ありません、気づくことが出来ず……」
慌てて頭を下げる受付のお姉さん。
まぁ、一日置いての達成報告だしな。それまで何人もの冒険者やお客の相手をしているわけだし、いちいち俺のことを覚えているはずもないだろう。
初日に凄まじい魔力量を出したはずなのに、忘れられたことなんて全然気にしていない。いや、ちょっぴり悲しいかも……。
そんな俺の心情など知るよしもないお姉さんは、カウンターから少し席を外すと裏方へ。それからしばらくすると、金色のカードを乗せた盆を持って帰ってきた。
「こちら、春崎暁人さんのギルドカードになります」
「ありがとうございます」
お礼と同時にカードを手に取る。
クレジットカード程度の大きさのそれには、俺の氏名と『F』と英語表記の文字が描かれていた。
「この文字は何ですか?」
「それは、言わば持ち主の強さの値のようなものです。『Aランク』から『Fランク』までの分かれており、上に行くほど高ランクの仕事を受けることが多くなるでしょう」
「なるほど……。ちなみに、このランクを上げるにはどうすれば?」
「魔物を狩って強さを示すか、頼まれた依頼を見事完遂してみせるかのどちらかですね。暁人さんはまだギルドに登録したばかりなので知名度が低いです。なので、しばらくは魔物を狩って行くしかないでしょうが……」
つまり上を目指すなら行動して結果を見せろということか。
魔物を倒して強さを示す。それはまぁ、問題ないだろう。
たかがドゥルドゥーから羽を得るためだけに何匹の魔物と戦ってきたかはわからないが、要はその時同様に魔物を倒してそれを持ち帰れということだ。
それだけでランクが上がるというのなら簡単な話だ。
だが、知名度が低いから依頼が受けられないというのはどうなのだろう。ギルドでは依頼の受注が出来ないのだろうか?
「あの……要はどういう?」
申し訳無さげに聞いてみれば、お姉さんは苦笑しながら教えてくれた。
それらを要約するとこうだ。
一昔前までは、依頼人がギルドにやってきて依頼を頼み、ギルド側がそれを掲示板に張り出すような形で依頼の受注をしていたのだという。
冒険者は張り出された依頼を吟味し、可能なものであれば請け負う。そうして、ギルドは依頼人の頼みごとを解決していたらしい。
だが、近年では『冒険者が依頼を選ぶ』のではなく、『依頼人が冒険者を選ぶ』というものに変わったのだという。
「少し前の冒険者の方々は、こう言ってはなんですが怠けている人の方が多かったんです。お金が無いから渋々依頼を受ける。依頼は適当に張り出されるので、適当な時間に受ければいいのだろうと。ですが、ギルドは助けを求める依頼人を救うための施設です。そのような考えでは、助けられる人も助けられません」
「だから、依頼人が冒険者を選ぶ手法にしたんですか」
「はい。お金を手に入れるには、魔物を倒して換金するか、自分を指名してくる依頼人が現れるのを待つしかありません。冒険者になった以上は、責任を持ってことに当たってもらわないと……こちらとしても、依頼人への対応が大変なんですから……」
嘆息するお姉さんの表情は随分と疲弊していた。
まるで、コンビニにやってきたクレーム客の対応を終えたあとの社員みたいな。いや、つまりそういうことなんだろう。
そんな彼女にお疲れ様と苦笑を向けて
「じゃあ、当分は魔物を狩ってくればいいってことですね?」
「……はい。そういうことになりますね。『C』ランクからは冒険者ボードに張り出されるので、それまでは頑張ってください」
「分かりました。あっ、そうだ」
これでギルド登録は終了ですと笑みをみせるお姉さん。
そんな彼女に待ったと言葉を続けると、自分の頭上でスヤスヤと眠るコーラルを指差して
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