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赤と白と黒
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白い、そして天井の高い空間。
清潔的な白い風景は私達の身体を焼くように眩しい。
そしてここは狭い。たった5m四方の中に何十人もの子供が収容されている。
普通の子もいれば獣の耳を生やした者や、魚の尾を持つ者もいた。
もっとも、見た目が普通でも中身までがそうだとは限らないが。
自分の手を見る。子供の手だ。
その細い両手首に枷がついている。
足首にもだ。
足に視線を落としていると急に暗くなった。
誰かが前に立ったのだろうか。
窓もないこの牢の子供はみんな正気がない。
研究員が私を使いに来たのだろう……。
そう思ってゆっくり顔を上げると、そこに立っていたのは髪の白い男の子だった。
ルビーのような赤い目でニコニコとこちらを見ている。
「元気無いね。あの時みんなを、僕を励ましてくれたのは君だったのに。」
そう……確かにそう…。狭い牢の中でみんなに生きろと、希望はある、だから生きろと言ったのは私だった。
けれど……。
「君は僕にとっての光だった。太陽だった。全てだった。けれど……。」
少年がそう言うと突然景色が赤黒く染まった。
辺りに座っていた子供達がみんな床に倒れている。赤黒い液体にまみれて。
目の前の少年もいつの間にか倒れていた。
みんな、動かない。
みんな、息をしていない。
みんな、生きていない。
そんな中で白い髪の少年の頭がぐるりとこちらを向く。
「光が消えた。太陽が消えた。全てが消えた。」
血のように赤い目が私を見ている。
「君を信じて生きて、苦しんで、死んでいった子が何人いると思う?」
「光が消えて、今も暗闇に囚われている子が何人いると思う?」
「君は最後の最後で自分を選んだんだ。」
「ああ、君が、」
辺りに倒れていた子の頭も一斉にこちらにぐるりと回る。
「逃げたから」「私達が」「ああ」
「憎い」「羨ましい」「恨めしい」「痛い」「苦しい」「憎い」「憎い」「憎い」「憎い」「憎い」「憎い」「憎い」「憎い」
耳を塞がない、目を塞がない。
ただ冷たい目でそれらの呪詛を見下ろす。
全てを受け入れようとする。
するとまた突然目の前にあったものが全て無くなる。
そこには真っ白な空間と、静けさと、
長い黒髪の女の子が立っていた。
女の子はくすりと笑うと口を開く。
「私は全てを受け入れた」
「でもそんなことがいつまで持つと思う?」
「さあ、私の目をよく見て」
言われるがままその黒い、真っ黒い瞳を見つめる。
「あなたはもう」
そこに映っていたのは16歳の姿をした自分。
その身体には赤黒い呪いが張り巡っていて、
それが顔に広がり、目に到達すると、
「壊れているの」
青い瞳が赤黒く染まった
ーーーーーーーーーーーーーーー
「……ぅ……ぁ……」
「お姉様!!私の声が聞こえますか!?」
あまり…よく見えない…
視界がぼんやりする……
「ネイルア!聞こえたら返事をして!」
ヴェティヴィア? フレイミィ?
「こ…こは…?」
どこ?さっきの路地裏じゃない。
「…! 近くの宿です。安心して下さい。人避けの結界をフレイミィが張りました。」
「そう………………。」
「…………………………。」
……はっ!
「ハルセっ!!!」
飛び起きて叫んだ。彼は…彼はどこに!?
「あ……。」
辺りを見回すとヴェティヴィア、フレイミィ、エアが心配そうな面持ちの中に困惑を滲ませて私を見ていた。
しまった、取り乱す様子を見せてしまった。
「あー、すまない、敵は?」
「私達が駆けつけた時には既にお姉様だけでした。」
あの後誰も来なかったのか…。
そういえば左腕を切り落とした筈だが。
左腕を動かしてみる。
「勝手ながら施術させていただきました。違和感などはありませんか?」
まるで元から付いていたかのようだ。
そう、時間は経っていない筈なのに。
「いや、大丈夫。流石だな、ヴェティヴィア。」
そう微笑んで言うと彼女はとても嬉しそうに「いえ…。」と言った。
さて…そろそろ気になっていたことでも聞こう。
「で……どうして戻ってきた。二度と関わるなと言った筈だ。」
一瞬三人は怯えたような表情をした。
そうだ。私は怒っている。
何故言うことを聞かない。
何故私の意図を理解出来ない。
以前の巫姫神社でのようにまた押し黙るのか。
しかし、フレイミィが口を開いた。
「足でまといになっていたかもしれない。でもここで逃げたくない。」
「ここで逃げたら、この先永遠に後悔する。」
私はそれを静かに聞く。
「だから命を賭ける。これまで以上に。」
「腕が邪魔なら腕を切り落とす。この首が足でまといになるなら首をはねる。力が足りないなら命を燃やす。」
「だから」
「最期まで一緒に戦わせて欲しい。」
清潔的な白い風景は私達の身体を焼くように眩しい。
そしてここは狭い。たった5m四方の中に何十人もの子供が収容されている。
普通の子もいれば獣の耳を生やした者や、魚の尾を持つ者もいた。
もっとも、見た目が普通でも中身までがそうだとは限らないが。
自分の手を見る。子供の手だ。
その細い両手首に枷がついている。
足首にもだ。
足に視線を落としていると急に暗くなった。
誰かが前に立ったのだろうか。
窓もないこの牢の子供はみんな正気がない。
研究員が私を使いに来たのだろう……。
そう思ってゆっくり顔を上げると、そこに立っていたのは髪の白い男の子だった。
ルビーのような赤い目でニコニコとこちらを見ている。
「元気無いね。あの時みんなを、僕を励ましてくれたのは君だったのに。」
そう……確かにそう…。狭い牢の中でみんなに生きろと、希望はある、だから生きろと言ったのは私だった。
けれど……。
「君は僕にとっての光だった。太陽だった。全てだった。けれど……。」
少年がそう言うと突然景色が赤黒く染まった。
辺りに座っていた子供達がみんな床に倒れている。赤黒い液体にまみれて。
目の前の少年もいつの間にか倒れていた。
みんな、動かない。
みんな、息をしていない。
みんな、生きていない。
そんな中で白い髪の少年の頭がぐるりとこちらを向く。
「光が消えた。太陽が消えた。全てが消えた。」
血のように赤い目が私を見ている。
「君を信じて生きて、苦しんで、死んでいった子が何人いると思う?」
「光が消えて、今も暗闇に囚われている子が何人いると思う?」
「君は最後の最後で自分を選んだんだ。」
「ああ、君が、」
辺りに倒れていた子の頭も一斉にこちらにぐるりと回る。
「逃げたから」「私達が」「ああ」
「憎い」「羨ましい」「恨めしい」「痛い」「苦しい」「憎い」「憎い」「憎い」「憎い」「憎い」「憎い」「憎い」「憎い」
耳を塞がない、目を塞がない。
ただ冷たい目でそれらの呪詛を見下ろす。
全てを受け入れようとする。
するとまた突然目の前にあったものが全て無くなる。
そこには真っ白な空間と、静けさと、
長い黒髪の女の子が立っていた。
女の子はくすりと笑うと口を開く。
「私は全てを受け入れた」
「でもそんなことがいつまで持つと思う?」
「さあ、私の目をよく見て」
言われるがままその黒い、真っ黒い瞳を見つめる。
「あなたはもう」
そこに映っていたのは16歳の姿をした自分。
その身体には赤黒い呪いが張り巡っていて、
それが顔に広がり、目に到達すると、
「壊れているの」
青い瞳が赤黒く染まった
ーーーーーーーーーーーーーーー
「……ぅ……ぁ……」
「お姉様!!私の声が聞こえますか!?」
あまり…よく見えない…
視界がぼんやりする……
「ネイルア!聞こえたら返事をして!」
ヴェティヴィア? フレイミィ?
「こ…こは…?」
どこ?さっきの路地裏じゃない。
「…! 近くの宿です。安心して下さい。人避けの結界をフレイミィが張りました。」
「そう………………。」
「…………………………。」
……はっ!
「ハルセっ!!!」
飛び起きて叫んだ。彼は…彼はどこに!?
「あ……。」
辺りを見回すとヴェティヴィア、フレイミィ、エアが心配そうな面持ちの中に困惑を滲ませて私を見ていた。
しまった、取り乱す様子を見せてしまった。
「あー、すまない、敵は?」
「私達が駆けつけた時には既にお姉様だけでした。」
あの後誰も来なかったのか…。
そういえば左腕を切り落とした筈だが。
左腕を動かしてみる。
「勝手ながら施術させていただきました。違和感などはありませんか?」
まるで元から付いていたかのようだ。
そう、時間は経っていない筈なのに。
「いや、大丈夫。流石だな、ヴェティヴィア。」
そう微笑んで言うと彼女はとても嬉しそうに「いえ…。」と言った。
さて…そろそろ気になっていたことでも聞こう。
「で……どうして戻ってきた。二度と関わるなと言った筈だ。」
一瞬三人は怯えたような表情をした。
そうだ。私は怒っている。
何故言うことを聞かない。
何故私の意図を理解出来ない。
以前の巫姫神社でのようにまた押し黙るのか。
しかし、フレイミィが口を開いた。
「足でまといになっていたかもしれない。でもここで逃げたくない。」
「ここで逃げたら、この先永遠に後悔する。」
私はそれを静かに聞く。
「だから命を賭ける。これまで以上に。」
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「だから」
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