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同じ月の下
しおりを挟むフレイミィは恐る恐る通りに出る。
通りには露店もあればカフェもあり、人が溢れかえっている。
店に並べられた商品はどれも初めて見るものばかり。
綺麗な刺繍の施されたハンカチや、木彫りの温かみのある食器達。
フィオーレの露店では魔石などのマジックアイテムが大抵紛れて並んでいることが多かったので、つい珍しさに近寄って見てしまう。
「いらっしゃいお嬢ちゃん。見ていっておくれよ」
見ていると、陽気なこの店の主人が声を掛けてきた。
こんな状況だけれど、だからこそ楽しんでおきたい。
「おすすめの物はどれですか?」
「そうだなぁ、こっちのハンカチの刺繍は若い観光客の娘に人気の柄だよ」
「じゃあそれ下さい」
「10RONだよ」
「10れい?」
まさか……通貨がGじゃない?
異世界だとは、分かっていた。分かっていたけど、さっきまでフィオーレに居たものだから認識が足りていなかったようだ。
一応身の回りをぱたぱた確認してから言う。
「あ……すいません、やっぱりいいです」
「ふむ………ほら、お嬢ちゃん。持っていきな」
おっちゃんは私の手を掴んだと思うと私の手には綺麗なハンカチが握らされていた。
「あの……これは……」
「サービスだよ、サービス。可愛い娘にはね。それにあんた、イカしたタトゥーいれてるじゃないか」
そこで、はっとして顔の右側を手で覆う。この人はこう言ってくれたが、変に思う人がいるかもしれない。後で何とかしないと。
「あ、ありがとうございます……あの……本当にいいんですか?」
「いいのいいの。あ、これも持ってくかい?」
そう言って見せてきたのは、君の悪い陶器の置物だった。
男の顔を模していて、その男の口には鋭い牙が生えていて血が滴っている。
「……これは?」
「お嬢ちゃん知らないかい?ここ、ルーマニアといえば"吸血鬼伝説"じゃないか。それはドラキュラ伯爵のお土産だよ」
「…………」
「んーちょっと気味が悪かったかな?じゃあそのハンカチだけ持って行きなさい」
「あ、いえ、ありがとうございます!」
ハンカチをスカートのポケットにしまってその場を去る。
と、ついでに異空間にしまっていたマントを取り出してフードを被る。
これで顔の刻印も多少は隠せるはずだ。
「吸血鬼……」
ネイルアの友人、というのはまさか……。
憶測を広げても仕方が無い。まずは仲間に合流しなければいけない。
しかし、手掛かりも何もない。
「どうしよう……」
その時だった
ピヨピヨ、ピヨピヨ、ピヨピ……
と、デフォルメされたひよこの鳴き声が頭に響く。
わ、忘れてた……。
通信用のひよこ石があるんだった……。
まさかここでも使えるとは。
道の端によって直ぐに出る。
『ガガ…聞こえ、る…?フレイ…ガガ?』
ノイズがかなり入ってしまっていて聞き取りずらいが、この声はヴェティヴィアだ。
「一応聞こえるよ。今どこにいるの?」
『ノイズが入って…わね。魔力が足りないせいかしら』
自分もそうだと思って、自らの魔力を石に流すと大分聞きやすくなった。
「だーかーら!どこにいるの!?」
『相変わら…うるさいわね。私はエアと一緒に森の中にいるわ。周りに人はいない。でも……っ!!』
「でも何!?どうしたの!?」
ヴェティヴィアが突然余裕のない声になった。と、同時に向こう側が騒がしい。
『大丈夫…。でも悪性の魔物がうじゃうじゃいるわ。今二人で応戦してる』
「どこの森か分かる?」
『さあ。さっぱり。でもこの通信が通じたという事はそう離れていないはず……』
「分かった。こっちで調べるから、持ち堪えて!」
『……了解。ぴっ------』
通信を切られる。
心配だけれど行動しなくては。
ええと、まずは地図ね。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
Side ネイルア
パラディンの猟犬を片付けた後、目的の場所に座標をきっちりあわせて扉をくぐる。
さっきまでの明るい川岸とは一変。
暗闇にそびえ立つは荘厳なる古城。
頭上では月が黒い夜空を照らしている。
「やっぱり3人ともばらけちゃったか…」
その場を見渡して3人がいない事を確認する。
次に、探すために軽く、3人の魔力を探知する。
少し離れたところに多数の微弱な魔力に紛れて1人。
それより少し近いところに二人分の反応と複数の悪性反応が。
1人は街中、2人は森で戦闘中、と言ったところだろうか。
「3人を探してきて」
使い魔の青い蝶達に指示を出すと、ひらひらと舞って、背後の森の奥に消えていった。
ネイルアはそれを見送ると古城に視線を戻す。
「さて」
「私の旧友は元気かな」
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