砂糖な彼氏と塩な彼女の異世界冒険記!

星の書庫

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伊織、魔導士になる⁉︎

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《伊織side》
    さえちゃんは、僕にぞっこんです。
本人は隠している様ですが、僕は知ってしまったんです。さえちゃんが、僕を庇っていろんなことをやっているのを……。
「いおり……。多分右」
「あ、うん!」
いつもはこうやって、頭の回転が早かったり、感が鋭かったりして僕を助けてくれる、クールなお姉さんです。……でも、僕の事で怒ると、とっても怖いです。
「街ってどんな所だろうね!楽しいかな?良い人いるかな?」
「……悪い人いそう」
「そうかなぁ……。……うん!そっか!きっとそうだよ!」
「……ん」
さえちゃんがそう言うなら、絶対そうです!悪い人をやっつけなきゃいけないのかなぁ……。でも、さえちゃんがいるなら大丈夫です!だって、さえちゃんは強いから!
    それなのに僕は……。九条伊織は……。何も出来ません。全部さえちゃんに頼ってばかりで、自分に取り柄はありません……。だから、この世界では……。この、異世界では、さえちゃんを守りたいです。さえちゃんに頼られる自分になりたい。そんな事を思っていた矢先でした。
    いきなり、大きな水流が僕達を襲いました。
「さえちゃん、危ない!」
僕がさえちゃんを庇おうとしたら、さえちゃんは笑いました。まるで、天使のような微笑みでした。次の瞬間には、さえちゃんが僕を抱えて、跳んでいました。それは、普通の人にはありえない高さで、木高さを優に超えていました。
「なっ ︎なにこれ ︎」
「分からない。でも、私の運動能力が底上げされてる」
また、天はさえちゃんに味方したみたいです。僕には無くて、さえちゃんにあるもの。僕は、自分の才能の無さを恨みました。でも、今はそんな事で悩んでられません。さえちゃんに頼るしか無くなった僕は、信じて、身体を預けます。数秒後、無事に着地したさえちゃんは、真っ先に僕の心配をしてくれました。
「伊織、怪我はない……?」
「う、うん!ありがとう!」
「……ん。良かった」
あぁ……弱いなぁ……、僕。
    なんて思っていると、急に目の前に一人の男の人が現れました。当然、僕達は警戒して、身構えました。
「やぁやぁごめんごめん!怪しい者じゃ無いんだ。君達に危害を加えるつもりも無いよ。警戒を解いてくれないかい?」
男の人の言葉に耳を貸さず、さえちゃんは警戒を緩めません。
「さえちゃん、この人多分嘘は吐いてないよ。話だけでも聞こう?」
「……ん」
そう言うと、さえちゃんは警戒を緩めてくれました。
「話が早くて助かるよ。まずは自己紹介をしようじゃないか。僕の名前はリン……マーリンさ。人は僕を、『堕ちた大賢者』と、そう言うね」
「……」
「おぉぉ……。格好良い……」
「ここに来たのには理由があってね……」
「……?」
「理由?」
「伊織君。君なら分かるんじゃないかい?」
「えっ?」
名前を教えた覚えは無いのに、僕の名前を呼ばれました。マーリンさんの魔法でしょうか……。
「そうさ。僕の魔法だよ。相手の心を読む、読心魔法さ。さえちゃん……?と言ったかい?その子から教えてもらったよ。最も、勝手に読み取ったのだけどね」
「っ ︎」
「ほぉ……凄いなぁ……」
「これは、おそらく伊織君にしか分からない物だ。だから……」
そう言いながら、マーリンさんは僕に近付いてきました。
「少し、二人で話をしようか」
それは、数瞬前とは違った、威圧感のある声でした。僕は怖くなって、黙って首を縦に振りました。
「さえちゃん、ちょっと待っててね……」
「……ん」
隠しても、どうせすぐにバレる。なら、この人に言うしか無い。この人なら……僕の悩みを、解決してくれるかもしれない。そう思ってしまいました。
「良い判断だ」
    不敵な笑みをその爽やかな顔に浮かべながら、マーリンさんは森の中へと入って行きました。
ある程度歩いて、彼は指を鳴らしました。
「邪魔が入ったら困るからね。結界を張らせて貰ったよ。まずは座ろうか」
「は、はい」
「僕に敬語はいらないよ。気軽に喋ると良い」
「うん。分かった、マーリンさん」
マーリンさんはその場に座り、にこにこしながら僕を見つめています。僕が座ると、彼は話を始めました。
「伊織君、君は……何か悩みがあるんじゃ無いかい?……例えば、「中森梓を守りたい」とかかな」
「えっ ︎何故それを ︎」
「言ったろう?僕は読心魔法が使えるんだ。君らの所に来たのは、本当に偶然だった。魔道具が暴発してしまってね。君らの所に水が押し寄せてきただろう?あれを止めるべくこっちに来たら、見てしまったんだよ。伊織君を抱えて跳ぶ、梓ちゃんの姿をね」
「……」
「そんなにしおらしくなるなって。あれは、剣の神『ラプラス』の加護を受けている。恐らく君には……。彼女と同じ転移者の君には、魔法の神『イリヤ』の加護を受けている。ストレージを開いてみてごらん」
「ストレージ……?」
聞き慣れない言葉に首をかしげると、マーリンさんは左手の指を横に振りました。僕が、同じ様に左手の指を振ってみても、ストレージは出てきませんでした。
「出ない……」
「君は左利きだね。右で振ってみてごらん」
「右……?」
「うんうん」
今度は右手の指を振ってみました。すると、鈴の様な音と一緒に、視界の端に僕の名前が見えました。
「わぁ!」
「出たかい?それがストレージさ。名前の下を見てごらん。『イリヤの加護』と書いていないかい?」
名前の下を見ると、『イリヤの加護』と『大賢者の卵』の二つの単語がありました。
「あったけど……。『大賢者の卵』って?」
「なんだって ︎君はその称号を持っているのかい ︎」
「分からないけど、書いてあったから……」
「それは本当かい ︎……いや、君は嘘を吐いていないな。だとしたら、あの大賢者の下に……。よし、決めた!伊織!今日から僕は君達と共に行動しよう!いいね ︎」
「えっと……。それはさえちゃんに聞いてみないと……」
「ダメ」
すると、後ろからさえちゃんの声がしました。
「やっときたね。君ならこの結界くらい簡単に破れるものだと思っていたけどね?」
「機会を伺っていただけ。とっくに破いていた」
「知っているよ。なんたって結界を張ったのは僕だからね。どんな物でも結界に仕掛けられるんだ」
「……それより、一緒に来ちゃダメ」
「どうしてだい?僕がいなきゃ、君達……」
マーリンさんは俯き、顔を上げたかと思うと、今までとは違う表情でこう言いました。
「死んじゃうよ?」
「「っ ︎」」
あまりの恐怖に、僕達は後ずさってしまいました。
「こんな圧に怯えるくらいじゃ、街にたどり着く前に死ぬね?ここには、グリズリーなんて目じゃ無い魔物がいるんだから。逆に、ここまで生き残っていれたのが奇跡だよ」
「……分かった」
「さえちゃん?」
「ほう……?」
「でも、条件がある」
「伊織を傷つけるな。だろ?大丈夫さ。僕は、敵しか殺さない。……これで良いかい?」
「……ん」
さえちゃんは不満そうにしながらも、マーリンさんの同行を許可してくれました。
「それで、伊織。僕は君を大賢者の所に連れていかなければならない。僕がいるのはそこまでだけど、良いかな?」
「う、うん……。大賢者って、どんな人?」
「あの称号を持っているなら、こっちに来た時に会っているんじゃないかい?そう、その女だよ。あいつも、あっちの世界から来たんだ。そして、魔法を教えた僕をあっさりと追い抜き、蹴落とした。そして、大賢者となったのさ。あいつはもう……人間じゃない。気をつけた方が良いぞ」
「……」
「そうなんだ……」
「さて。立ち話もなんだし、最寄りの街に向かうかい?」
「……早く案内して」
「怖いなぁ。そんなに急がなくても街は逃げないさ。気楽に行こうじゃないか」
こうして、マーリンさんと言う新しい仲間が加わりました。さえちゃんは嫌そうだけど、何とかなるでしょう。僕はマーリンさんに魔法を教わって、さえちゃんを守れるなら大歓迎です。これからが楽しみです!
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