悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

文字の大きさ
61 / 339
第3章

60.頼りになる我が友人

しおりを挟む
「嫌がらせって何をすれば良いと思う?」

「そりゃ、あの小説みたいにすれば……って、小説って見せ場のために結構酷いことを平気でするからあんまり参考にはならないわよね……」

そう、小説の中でのいじめとは相当過激なものだった。
主人公の教科書や制服などを汚したり、隠したり。彼女に直接危害を加えたり。
貴族の令嬢としては決してしなような行動の羅列に現実味がないと感じるほどで、ある意味”物語”として読むのに丁度良い作り込みだった。

だがそんな派手な悪事をさせることで”悪役令嬢”に制裁が下された時、読者にすっきりさせるのがこの物語の目的である。
端から現実でそれを参考にしようとする方が間違っているのだ。

と、いうことは嫌がらせの内容については自分で考えなければならないわけで……。

「でも嫌がらせするのってやっぱり気が引けるわ。小説みたいに復讐なんてされるの怖いし……」

つい零れた本音を聞き、ナタリーは大きなため息を吐くと心底呆れたように言った。

「あのねぇ……。何かを得るためには多少の犠牲はつきものなのよ。多少痛い目に遭うぐらい我慢するべきだと思うわ」

そう告げる彼女の声や仕草は同い年とは思えないほど達観していて、まるで20は年上に見えてしまう。
そう思うや否や鋭い視線で私を差した。

「今ものすごく失礼な事考えなかった?」

「え? 別に考えてないわよ」

何なのよ、怖いよ。
今のナタリー、まるで老婆の魔女のような存在に見えたよ。

だが、確かに彼女の言う通り何かしらの制裁を受けなければおそらくヴァリタスとの婚約破棄などできないだろう。
こんな私の不出来さをもってしてもなお、婚約を破棄した方が良いかもしれないといった意見が表立って出てきていないのが良い証拠だ。
もしかしたらそれは、ベルフェリト家がそれほどまで国民に人気からなのかもしれないし、ヴァリタスの計らいから来るものなのかもしれないが、現状がこの状態であるならば私が相当公爵令嬢として宜しくないような失態を犯さない限り、
私が望むようなことにはなりはしないだろう。

つまり逆から読み解けば、令嬢らしからぬ(しかも相当酷い失態)を私が犯せば婚約破棄の道が開かれるわけで……。
そう考えるともしかしたら、先ほど否定した”物語上の演出のための過激ないじめ”をすれば婚約破棄できるかもしれない。
なにせ本当に令嬢らしからぬ行動が目に余って仕方なかったほどだし。

しかし、これから”悪役令嬢”をどう演じるにしろナタリーから借りた本のシリーズだけでは情報が少なすぎる。

「ねぇナタリー、”悪役令嬢”が登場する小説って他にないかしら。これだけじゃ参考にするのに情報が少なすぎるわ」

「それならたくさんあるから教えてあげてもいいけど、あまり参考にならないと思うわ。だって”悪役令嬢”の行動パターンって結構似たり寄ったりだから」

「それでもいいわ、教えて」

私の訴えに参考になるかわからないと眉をひそめながらも、快く教えてくれた。
つらつらと小さなメモ用紙に本の題名を書いていくのだが……。思っていたよりだいぶ多いわね。
もしかして恋愛小説に”悪役令嬢”って定番だったりするのかしら。

「私が知っている本の中で参考になりそうなのはこのぐらいだと思うわ」

やっと書き終えたらしく、パッと出してきたものを確認する。
ざっと見ただけでも10以上の題名が並んでいる。まさかここまであるとは。

「恐らくだけど、うちの学院の図書館にもどれか置いてあると思うわ。もし急ぎなら放課後にでも探しに行ってもいいかもしれないわよ」

「え? 学院の図書館に?」

庶民が読むような娯楽本がこの学院の図書館にあるなんて驚きだ。王族や上位貴族が通う我が学院は格式を重視する校風なため一見おいてなさそうなものなのに。
しかし、これは良い事を聞いた。早く計画を進めたい私にとって今日帰って使用人たちに本を用意してくれるよう頼んだとしてもそれが私まで届くのには早くて2-3日は掛かってしまうことだろう。
それならば自分で探しに行って買いにいったほうが早いためそうしたいのはやまやまだが、なにせ今の私は放課後は用が無ければまっすぐ帰らなければならないというきっつい制約がある。
しかし、それが図書館で参考資料を探していたという大義名分があれば恐らく放っておかれて終わりだ。あの人たちは私がどこかで道草を食うのが気に食わないだけなのだから。

さっそくナタリーが教えてくれたように、放課後図書館に出向くとしよう。
昨日今日と婚約破棄に向けてすごく前進した気がする。
それがうれしくてつい柄にもなく鼻歌を歌ってしまった。

「ふふ、ご機嫌になったみたいで良かったわっと。次の授業の準備があるから私は先に行くわね」

次の時間は彼女の嫌いな歴史の授業だ。
そのため彼女は嫌いな授業や苦手な授業の前には予習を少ししてから挑むのが日課になっている。
いつも好きな事に夢中な彼女らしくない真面目さだと関心していたら、どうやらその方法は彼女の婚約者に教えてもらった方法らしい。

なるほど彼女の婚約者は相当に真面目な人間らしいとその時は思ったものだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

【コミカライズ企画進行中】ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!

あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】 小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。 その運命から逃れるべく、九つの時に家出を決行。平穏に生きていたが…。 ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。 その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。 優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。 運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。 ※コミカライズ企画進行中 なろうさんにも同作品を投稿中です。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...