悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

文字の大きさ
105 / 339
第3章

104.強引な気持ちの整理

雨に打たれた私は、案の定風邪を引いてしまった。
朝起きて体調が悪そうな私をみるミリアの顔のなんと冷たいことか。
それでも休むのはなんとなく嫌で、どうにか支度をしようと起き上がった私に気が付き、ミリアは慌てて止めた。

両肩を押さえつけられベッドに戻される。
流石に自分よりも大きく、力のあるミリアに風邪を引いた私が敵うわけもなく。
結局今はこうして大人しく横になっていた。

でも、変な感じ。
こんなに日が高い内からベッドに横たわって窓を眺めているだけなんて。

体はそんなに丈夫な方ではないけれど、こうして病気に罹ることなんて滅多にないことだ。
しかし、こうしているのに違和感を覚えながらも懐かしさも感じていた。
おそらくそれはリヴェリオの頃の習慣だったのだろう。
習慣というほど良いものでもないが。

リヴェリオは幼いころから体が弱く、病気がちだった。
それはもう、箔が付くほどに弱すぎた。
城下町でさえ出向くことができないほどに。

馬車に乗ると10分も経たない内に、酔いが回ってしまいそのまま2,3日体調が悪い日が続いた。
そういえば、幼いころあの子と一緒に西の方へ視察に行くと言われていたのに、私の体調が悪くなりすぎて1日も経たず引き返したっけ。
あの時のあの子ったら、私をポカポカ叩きながら可愛く怒っていたっけ。

思い出して思わずフッと噴き出した。
だが、そんな苦い経験が有りながらも、好奇心は旺盛だった私は両親に散歩に行く嘘を吐いて中庭を冒険していた。
広すぎる宮殿の中庭は、外に出られない私にとっては魅惑の場所だった。
いろんな場所を駆けずりまわり、体力がないため小刻みに休憩を入れながらも存分に中庭で遊んでいた。
バートンはその都度付き合ってくれていたが、5分毎に私の体調を気にするものだから少し鬱陶しかったのを覚えている。

そして次の日は決まっては体を崩していた。
その都度、両親やバートンに心配されたり、怒られたりしていた。

あの頃は本当に楽しかった。

しかし、超が付くほどの虚弱体質は大人になっても変わることはなかった。
そのために、公務である各地の視察や軍の長として戦前に出向くことはできなかった。
もしかしたら、それも私の評価を落としていた要因の一つだったのかもしれない。

それでも、その埋め合わせを何とかしてできないかと、宰相や政治に関わる貴族議員たちに色々と進言しては面倒臭がられていた。
それもそのはず、平民の待遇をよくするようなものばかりだったもの。
自分で自分の首を絞めるような行為をあの傲慢な貴族たちが受け入れるはずがない。

そんなこともわからないで、必死になっていたリヴェリオを思い出し、切ないながらも笑いそうになった。
それで、苦しんでいる平民を思うと食事も喉を通らなくなるなんて、本当に間抜けなんだから。

思わずクスクスと1人で笑ってしまう。
ふと、そこで私はあることに気づいた。

どうしてだろう。
今日は前世の事をよく思い出すのに、全然気分が悪くならない。
それどころか、晴れ晴れとしていてどこか楽し気な感じさえする。

あんなに暗い気持ちになっていたのに。
風邪でもっと気分が落ち込んでもおかしくないのに、それが少し不思議だった。

熱も少しあるみたいだったし、もしかして風邪の所為で頭がおかしくなっちゃったのかしら?

まぁでも、こっちの方がすごく楽だ。
最近の私は暗すぎてうんざりするほどのネガティブ人間だったから。
昨日までの私よりこっちの方がものすごくましだ。
いつまでも暗い考えのままの自分と向き合うのなんて拷問以外の何物でもない。

それに今の私は、以前の、私が好きな私だった。
これならずっと風邪を引いていたいくらい。

どうして私はあんなに暗かったのかしら。
今ならその理由を考えても、嫌いな私にならないと踏んだ私は自分と向き直ってみることにした。

たしか……、そう、自分がどうしてヴァリタスに嫌われたくないのか。
セイラを嫌いになりそうになっているのか。
それが不安だった。

うん、ここは一先ずあの事を認めてしまうのが良いのかもしれない。

私がヴァリタスを好きなことを。

きっとその所為で、セイラの事も嫌いになりそうになっているのだと思う。
そして何より、その感情を受け入れてしまえば、私は破滅の道を歩かなければならなくなるのだ。

だから不安だったのだと思う。
でも、彼のことが好きだからなんだというのだ。

私が何よりも優先すべきなのは、自分の幸せだ。
それ以外は何もかも投げ捨てたって構わない。

そう、家族に見限られたとき決めたじゃないか。
ならば今回だって同じこと。

いくら恋しい人でも、いくら愛した人でも。
いずれ私の事を嫌いになるのだと分かっている人にこれ以上情を移しても仕方がない。
傷つくだけの感情を持ち続けるほど、私の心には余裕なんてない。

だからこの感情は今まで通り、心の奥底に、気づかないようにしまって置けば良い。

なんなら失恋したと決めつけて、終わったものにすれば都合がよいかもしれない。

よし!
これで不安要素が一つ減ったわ!

これが強引で、何一つ解決していない、中途半端な決着の付け方だったとしても。
今の私にはこれで精一杯だった。
こうして蓋をして仕舞っておくぐらいしか、この気持ちと向き合うことなど私にはできなかったのだった。
感想 7

あなたにおすすめの小説

亡き姉の身代わりとして嫁いだ私ですが、離縁状を置いた翌朝、夫が私の「真実」に気づいたようです』

まさき
恋愛
「サインはもう、いただきました。あとは私がこの屋敷を出るだけです」 ​五年間の結婚生活。侯爵令嬢エルゼが演じ続けたのは、亡き姉・ロザリーの「身代わり」という配役だった。 夫であるカイル公爵が愛していたのは、かつて雪の中で自分を救ってくれた初恋の少女・ロザリー。 生き写しの妹であるエルゼを娶りながらも、彼は一度も彼女を「エルゼ」と呼ぶことはなかった。 ​冷淡な視線、姉と比較される日々。 「君はどこまでいっても、ロザリーの代わりにはなれない」 その言葉を最後に、エルゼは静かに離縁状を置き、屋敷を去る決意をする。 ​しかし、彼女が消えた翌朝。 カイルは、エルゼが大切に遺していった古い小箱を見つける。 そこにあったのは、十五年前のあの日、彼が「命の恩人」に預けたはずの片方のカフスボタン。 そして、幼いエルゼが綴った、あまりにも切ない真実の日記だった。 ​――「あの日、雪の中で貴方を抱きしめていたのは、お姉様ではなく、私だったのです」 ​真実を知り、絶望の中でエルゼを追うカイル。 だが、すべてを捨てて「自分」を取り戻したエルゼは、もう二度と、彼の隣で微笑む仮面の妻には戻らない。 ​これは、名前を奪われた女が自由を掴み、愚かな夫が真実の愛を失うまでの、静かで鮮やかな再生の物語。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた

nionea
恋愛
 ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、   死んだ  と、思ったら目が覚めて、  悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。   ぽっちゃり(控えめな表現です)   うっかり (婉曲的な表現です)   マイペース(モノはいいようです)    略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、  「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」  と、落ち込んでばかりもいられない。  今後の人生がかかっている。  果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。  ※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。 ’20.3.17 追記  更新ミスがありました。  3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。  本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。  大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。  ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

『処刑された悪女は、今度こそ誰も愛さない』

なつめ
恋愛
断頭台の上で、自分の終わりを見た。 公爵令嬢セラフィーナ・エーデルベルク。傲慢で冷酷、嫉妬深い悪女として断罪され、婚約者である王太子に見放され、社交界の嘲笑の中で処刑された女。 けれど次に目を開けた時、彼女はまだ十七歳の春に戻っていた。 処刑まで残された時間は、三年。 もう誰も愛さない。 誰にも期待しない。 誰も傷つけず、誰にも傷つけられず、静かに生きる。 そう決めて、彼女は人との距離を置きはじめる。 婚約者にも、原作の“主人公”にも、騎士にも、侍女にも、未来で自分を断罪するはずの人々すべてに。 けれど、少しだけ優しくした。 少しだけ、相手の話を聞いた。 少しだけ、誤解を解く努力をした。 たったそれだけのことで、なぜか彼らのほうが先に彼女へ心を寄せ始める。 「……あなたは、こんな人だったのですか」 「もう少し、私を頼ってください」 「君が誰も愛さないつもりでも、俺は君を放っておけない」 「ずっと、怖かっただけなんでしょう」 悪女として死んだはずの令嬢が、二度目の人生で手に入れるのは名誉か、友情か、それとも恋か。 これは、誤解に殺された少女が、静かに息を吹き返していく物語。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

あなたがすき、だったから……。

友坂 悠
恋愛
 あなたが好きだったから、わたしは身を引いた。  もともと、3年だけの契約婚だった。  恋愛感情なしに、偽装夫婦を演じよう。  そういうあなたに同意をして一緒に暮らし出した日々。  それなのに。  約束の期限の三日前、まさか酔ったあなたとそういう関係になるなんて、思わなかった。  だから。 わたしはそのまま翌朝家を出た。  わたしだけが、どんどんあなたを好きになってしまったことを隠したくて。  こんな気持ちを悟られ、あなたに迷惑がかかるのに、耐えられなくて。    ############# なろうさんで開催されていた、氷雨そら先生、キムラましゅろう先生主催、 シークレットベビー企画参加作品だった、「あなたが好きだったから」という短編に、少し加筆修正して連載化しました。 初めてのシクべ、ちょっと変わったタイプのシクべ作品となりました。 お楽しみいただけると幸いです。