悪逆皇帝は来世で幸せになります!

CazuSa

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第4章

135.ベルヘルス家の負の遺産

リヴェリオの血が私に流れている。
まさかそんな事があるなんて。
偶然なのか、それとも必然なのか。

まるで運命のように繋がった縁なような気がした。

しかし、ベルヘルス家の人間は当時から確かクロネテス家と強く結びついていたはず。
よくその時の当主が皇帝の子供を生むのを許したものである。

「しかし、どうして自分と血の繋がりのない子供を当主にしたのですか? 彼女が初めから身籠っていたことを知っていたならば、その子供が皇帝の子だと気づいていた、という事ですよね。
当時のベルヘルスの当主は何を考えていたのでしょうか?」

おばあ様はため息でも出しそうに落ち込む。
しかしそれでも、私にその理由を話してくれた。

「当時のベルヘルス家の当主はまだ若く、婚約者が見つかっていませんでした。おそらく隣国との戦争や、そのあとすぐに起きた飢饉でそんな余裕が無かったのでしょう。
そんな中現れた美しいその方に一目で恋に落ちてしまったのは、必然だったのかもしれません。
しかし、彼女は例えどんな悪人であったにしても、一度許した相手以外と関係を結ぶことを頑なに拒否していました。
けれども、彼はその彼女の主張を受け入れて、自分の妻にしたのです」

信じられない。
いくら綺麗な人が目の前に現れたからといって、仮にも貴族の当主が子供を見込めない女性と結婚するなんて。

ハッ!
ま、まさか。

「それから一生、彼女と関係を結ぶことはなかったと聞いています。
しかし、それではベルヘルス家は途絶えてしまう。
そこで考えたのが、彼女が身籠っていた子供をベルヘルスの子供として当主にする、ということでした」

「なっ――――」

やっぱり。
そうではないかと思ったのだ。

しかし、予想できていたとはいえ、まさか本当にそんなことをするなんて。
いくら好きな女性を手に入れるためであったとしても、貴族は血筋を大事にする傾向にある。
それに当時の人の考えならば、愛人を作ってその人に生ませるなんて選択肢だってあったはずなのに。
どうして彼はそんな手段を取ったのだろうか。

まさかそれが愛とでもいうのだろうか。
確かに本当に愛する人がいたならば、その人以外と関係を持つこと自体嫌悪するのかもしれない。

でも、自分の大事な爵位を知らない相手の子供に譲るなんて。
どう考えても正気の沙汰とは思えなかった。

「そうしてベルヘルス家は連綿とその血を受け継いできました。それが彼の悪逆皇帝の血だと知らずに。
前世と血筋が関係しないことはわかっています。しかし、その疑いを晴らすことは私にはどうしてもできないのです」

おばあ様は言いながら苦しそうな表情になっていた。
おばあ様の伸ばされた両手が私の両手を包む。
それはとても優しく、大事なものを握るような感覚だった。
おばあ様は私を見つめると、悲しそうな声色で言葉を紡いだ。

「ごめんなさい、エスティ。私たちの所為で。私たちがこの血を紡いできたせいで、貴方にそんな辛いものを背負わせてしまって」

泣きそうなおばあ様の表情から、心の底から私を想っていることは明白だった。
そうか、おばあ様はこのことを言うためにわざわざ2人きりになれる場所に連れてきたんだ。

ただ、私に謝るために。

おばあ様が言ったように、前世と今世に血の繋がりは関係ない。
それはこの世界共通の事実だ。
私とリヴェリオとの間に血縁関係があったのも、おそらくたまたまそうなっただけだろう。

しかし、どうしてもおばあ様はそうは思えなかったのかもしれない。

自分たちが子孫を残したがゆえに起きた悲劇。
それが、私だったということなのだろう。

しかし、おばあ様にとってそれは自分たちに起きたものだというよりも、私に降りかかってしまったものだと考えているのだと思う。
だからおばあ様は苦しんでいるのだ。

自分たちの過ち故に、孫を苦しめているのだと感じているから。

そして、それは今までのリヴェリオに対しての言い方にも表れていた。
きっと彼の事を悪く言わなければ、私に対しての罪の意識が薄れてしまうのではと思ったのかもしれない。

私を見つめるおばあ様の瞳から、その優しさは十分すぎるほど伝わった。
だから私はその優しさに応えたいと強く、そう思った。

「大丈夫ですよ、おばあ様。先ほどの私の話からわかっているかもしれませんが、リヴェリオの事、そんなに嫌いじゃないんです。
確かに彼が前世ということで辛い目に何度か遭ってきましたが、そんなの些細な事です。
そんなことより、この先ずっと私の前世の事でおばあ様やおじい様が苦しんでしまう方が、私にとっては辛いですわ」

おばあ様を励ますための言葉ではあったが、それは真実だった。
私は自分の事が好き。
それはリヴェリオの記憶があって初めて私になれるもの。
リヴェリオがいなければ私は私ではないのだ。

つまり私にはリヴェリオの記憶を受け入れてこそ私であり、それを否定しようとなんて思っていない。
それがなければよかったなんて思ってもいないのだ。

だから大丈夫だと、心の底からそう思っているのだと伝えたかった。

私の言葉を聞いたときのおばあ様は、少し驚いた。
しかし、すぐに優しく微笑んでくれた。

「ありがとう。エスティ」

そういったおばあ様の瞳には、先ほどの寂しさや苦しみが少しばかり薄らいでいた。
それを見て、私は少しだけ救われた気がした。
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