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第4章
153.すこし気まずい朝食
朝起きて、昨日の事を思い出して愕然としてしまった。
掛けてある布団を強く握りしめたまま、起き上がる事もせず、青い顔になる。
思い返せば、何てことを話してしまったのだろうか。
そもそも彼の前世の名前を呼んだ時点でまずい状況だったのに。
あんなに胸を内を吐露してしまえば、彼に前世の事を勘づかれるのも時間の問題ではないか。
いや、もうすでに気づかれているかもしれない。
はぁ~と深いため息が零れる。
こうしていても、仕方がない。
とりあえず起き上がるか。
鏡台の前に座り、髪を梳かす。
さて、何に着替えようかと思案していたところで扉がノックされ、この家の使用人が入ってきた。
そういえば、この屋敷に来てもう6日は経っているのよねぇ。
お父様にミリアを連れていくのを拒否されてしまったばっかりに、彼女とはここ1週間ほど離れ離れになってしまっている。
とはいえ、あと2日もすればベルフェリトの屋敷に戻るのだからあまり寂しくはないけれど。
それにしたって、彼女がいないのにいつの間にか慣れてしまっていることに少し驚いた。
しかしながら、やはり数年私のお世話係として働いてくれていた彼女の穴を埋めるのに、ここの使用人では十分ではなかった訳で。
決して劣っているということではないのだが、意志の疎通がいまいちできないのだ。
まぁ、それは私が公爵家の令嬢とは言えないような思考回路と言動をしているのが原因なのだけど。
始めは自分で支度をしてしまう私に戸惑いを覚えていた使用人ではあったが、一週間も世話をしていたら少しは慣れたらしく、私のすることに合わせてくれるようになっていた。
着替えを済ませ、朝食を取ろうと、食堂に向かおうとしていたときだった。
コンコンと部屋のドアがノックされた。
返事をして、相手が入ってくるのを待つ。
そこに現れたのは、ヴァリタス様だった。
「おはようございます、エスティ。もう皆さんは朝食を済ませたようですよ」
「お、おはようございます、ヴェリタス様」
ぎこちないながらもなんとか挨拶を返すことができた。
相当動揺はしていたけどね。
しかし、昨夜あんな話をしていてよく自分から顔を合わせに来たわね。
でも彼の様子からして、どうやらリヴェリオの事には気づいていないみたい。
おっかしいなぁ。
そんなに鈍い人じゃ無いはずなのに。
とはいえ、自分から確かめるわけにもいかず、彼に促されるまま、食堂へと向かった。
食堂に着き、扉を開けて中を確認するが彼の言った通り、確かにもう誰もそこにはいなかった。
「ヴァリタス様も、もうお取りになりましたの?」
「いいえ、エスティを待っていたので。皆さんにはお声がけして先に食べていただきました」
にっこりとした笑顔で返されてしまった。
しかし、気を遣わせないように根回しをしているあたり、やはり計算高い。
やはり気づいていないのおかしいわよねぇ。
用意された席に着き、運ばれてきた朝食を口にする。
とはいっても、病み上がりに加え、もともと食の細い私が食べられるものも量もたかが知れているわけで。
小さなパンを1つと、林檎一切れを時間を掛けてゆっくりと食していた。
一方ヴァリタス様と言えば、パン3つにオムレツ、小さなサラダにウィンナーを3本と、一般的な朝食を召し上がっていた。
私から見れば相当量の多い朝食だけど、おそらく一般男性からしたら彼もあまり食べない部類に入るのだろうな。
現にお兄様はその2倍以上は食べていたような気がするし。
食べ始めて数分経ったものの、2人して口を動かすのは物を咀嚼するときだけ。
昨夜のこともあってか、話掛ける勇気が持てず静寂だけがそこに存在していた。
2人とも国を代表するような令息令嬢。
食事中に音を立てることなんてないし。
とはいえこの静けさは、今の私にはきつすぎる。
「あの、私の前世のことはもう良いのですか?」
「え?」
この沈黙に耐えきれず思わず口に出した言葉は、自分が今一番避けたい話題だった。
わ、私のバカッ!
なんでそんな事聞くのよ!
慌てても後の祭り。
言ったことを無かったことにはできない。
「聞いてほしいのですか?」
「い、いえ! そんな事は全く!」
「そうですよね」
しかし、私の心の動揺に気づいたのか、彼は私にそう告げてまたしても食事の方へと集中した。
だが、これではっきりした。
やはり彼は私の前世にてんで気付いていない。
一体どういうことなのだろう。
私から起こした失態とはいえ、あんなにリヴェリオだってわかるようなことを話してしまった。
あれがクイズなら間違いなく正解に導けるほどの情報量だったはずなのに。
だって、彼と同じ時代に生きていて、彼を呼び捨てで呼んだのよ。
それほど親しい仲の人物ってだけでも特定しやすいのに、さらに私が「知られたら嫌わるような人物」だと自分から暴露しているのよ。
そんな人物など、一人しかいないじゃない。
それとも他にも該当する人物がいるの?
わからないわ。
彼が全く理解できない。
納得できず、うんうんと唸っている私に気付いたのか、彼はナイフを置くと私に話掛けた。
掛けてある布団を強く握りしめたまま、起き上がる事もせず、青い顔になる。
思い返せば、何てことを話してしまったのだろうか。
そもそも彼の前世の名前を呼んだ時点でまずい状況だったのに。
あんなに胸を内を吐露してしまえば、彼に前世の事を勘づかれるのも時間の問題ではないか。
いや、もうすでに気づかれているかもしれない。
はぁ~と深いため息が零れる。
こうしていても、仕方がない。
とりあえず起き上がるか。
鏡台の前に座り、髪を梳かす。
さて、何に着替えようかと思案していたところで扉がノックされ、この家の使用人が入ってきた。
そういえば、この屋敷に来てもう6日は経っているのよねぇ。
お父様にミリアを連れていくのを拒否されてしまったばっかりに、彼女とはここ1週間ほど離れ離れになってしまっている。
とはいえ、あと2日もすればベルフェリトの屋敷に戻るのだからあまり寂しくはないけれど。
それにしたって、彼女がいないのにいつの間にか慣れてしまっていることに少し驚いた。
しかしながら、やはり数年私のお世話係として働いてくれていた彼女の穴を埋めるのに、ここの使用人では十分ではなかった訳で。
決して劣っているということではないのだが、意志の疎通がいまいちできないのだ。
まぁ、それは私が公爵家の令嬢とは言えないような思考回路と言動をしているのが原因なのだけど。
始めは自分で支度をしてしまう私に戸惑いを覚えていた使用人ではあったが、一週間も世話をしていたら少しは慣れたらしく、私のすることに合わせてくれるようになっていた。
着替えを済ませ、朝食を取ろうと、食堂に向かおうとしていたときだった。
コンコンと部屋のドアがノックされた。
返事をして、相手が入ってくるのを待つ。
そこに現れたのは、ヴァリタス様だった。
「おはようございます、エスティ。もう皆さんは朝食を済ませたようですよ」
「お、おはようございます、ヴェリタス様」
ぎこちないながらもなんとか挨拶を返すことができた。
相当動揺はしていたけどね。
しかし、昨夜あんな話をしていてよく自分から顔を合わせに来たわね。
でも彼の様子からして、どうやらリヴェリオの事には気づいていないみたい。
おっかしいなぁ。
そんなに鈍い人じゃ無いはずなのに。
とはいえ、自分から確かめるわけにもいかず、彼に促されるまま、食堂へと向かった。
食堂に着き、扉を開けて中を確認するが彼の言った通り、確かにもう誰もそこにはいなかった。
「ヴァリタス様も、もうお取りになりましたの?」
「いいえ、エスティを待っていたので。皆さんにはお声がけして先に食べていただきました」
にっこりとした笑顔で返されてしまった。
しかし、気を遣わせないように根回しをしているあたり、やはり計算高い。
やはり気づいていないのおかしいわよねぇ。
用意された席に着き、運ばれてきた朝食を口にする。
とはいっても、病み上がりに加え、もともと食の細い私が食べられるものも量もたかが知れているわけで。
小さなパンを1つと、林檎一切れを時間を掛けてゆっくりと食していた。
一方ヴァリタス様と言えば、パン3つにオムレツ、小さなサラダにウィンナーを3本と、一般的な朝食を召し上がっていた。
私から見れば相当量の多い朝食だけど、おそらく一般男性からしたら彼もあまり食べない部類に入るのだろうな。
現にお兄様はその2倍以上は食べていたような気がするし。
食べ始めて数分経ったものの、2人して口を動かすのは物を咀嚼するときだけ。
昨夜のこともあってか、話掛ける勇気が持てず静寂だけがそこに存在していた。
2人とも国を代表するような令息令嬢。
食事中に音を立てることなんてないし。
とはいえこの静けさは、今の私にはきつすぎる。
「あの、私の前世のことはもう良いのですか?」
「え?」
この沈黙に耐えきれず思わず口に出した言葉は、自分が今一番避けたい話題だった。
わ、私のバカッ!
なんでそんな事聞くのよ!
慌てても後の祭り。
言ったことを無かったことにはできない。
「聞いてほしいのですか?」
「い、いえ! そんな事は全く!」
「そうですよね」
しかし、私の心の動揺に気づいたのか、彼は私にそう告げてまたしても食事の方へと集中した。
だが、これではっきりした。
やはり彼は私の前世にてんで気付いていない。
一体どういうことなのだろう。
私から起こした失態とはいえ、あんなにリヴェリオだってわかるようなことを話してしまった。
あれがクイズなら間違いなく正解に導けるほどの情報量だったはずなのに。
だって、彼と同じ時代に生きていて、彼を呼び捨てで呼んだのよ。
それほど親しい仲の人物ってだけでも特定しやすいのに、さらに私が「知られたら嫌わるような人物」だと自分から暴露しているのよ。
そんな人物など、一人しかいないじゃない。
それとも他にも該当する人物がいるの?
わからないわ。
彼が全く理解できない。
納得できず、うんうんと唸っている私に気付いたのか、彼はナイフを置くと私に話掛けた。
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