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第6章
325.ゆく道は1人
城壁近くまで来ると徐々に下降していった。
地面が近づくにつれさらに速度が落ちていった。
キリエの足が先に地面に降り立ち、体が一度ふわりと宙に浮くとゆっくりと地に足が着いた。
「僕は城から出られない。だからこの先は主様1人だけ」
悲しそうに顔を歪めながら、彼は押し出すように私を出口へと向かわせた。
恐らく城の裏口なのだろう。
いつも通る荘厳な表口とは違い、小さな出入口が扉を開き私を待っていた。
その先には城を取り囲むように広がる森が暗闇と共に出迎えている。
出口に近づくにつれ、徐々にキリエの歩みが緩くなっていく。
それでも繋いだ手はまだしっかりと握られていた。
私が城壁を超えたときには彼の足は止まっていた。
体を半分横に向けながら、キリエの姿を捉える。
すでに腕は伸ばされ、私たちを繋ぐ手ももう指しか繋がれていなかった。
そして、指が離れ、空を切った。
後ろ髪を引かれたが、それを振り切るように前を向く。
目の前は真っ暗闇の森だった。
私の足は更に速度を上げ、その闇へと足を踏み入れる。
しかし森に入っていく事に躊躇いは無かった。
この先を向かうより振り向く方がずっと恐ろしかった。
いつの間にか走っていた。
自分の荒い息遣いを聞きながら、速度を落とさぬよう走り続けた。
出来るだけ早くこの森を抜けなければ。
いつヴァリタスが起きるかわからない。
彼が起きたら、私がいなくなったことはすぐに城中に知れ渡るだろう。
そうしたら、あっという間に見つかってしまう。
早く、早く遠くへ。
きっと次に捕まってしまえば、キリエが一番望まない形で私は終わりを迎えてしまう。
前世と同じように。
一体どれほど走ったのかわからない。
足が縺れ、足を止めながらも先を急いだ。
そしてやっと森から抜けることができた。
抜けた先はレンガの道と高い建物が立ち並ぶ城下町。
絢爛な光を放ち、見目を楽しませてくれているそれらを見ても何も感じなかった。
煌々と光る街並みを見るに、おそらくまだ夜は始まったばかりなのだろう。
一つの建物に手を付き、息を整える。
俯くと、自分の足が見えた。
裸足であったため地面に落ちていた枝や鋭い石が無防備なそれを傷つけていたようだ。
いくつもの擦り傷や切り傷、そしてそこから血が流れている。
しかし、それを見ても痛みは感じなかった。
腰を降ろししばし休む。
気力と体力を多少回復させると夜の街へと足を踏み入れた。
光が灯っている場所を避けながら、路地の方へと急ぎ足で進んでいく。
いくら寝間着と言っても、一目で貴族だと分かる恰好では狙われるのは必然。
今の私にはベルフェリト家の後ろ盾もなければ助けてくれる宛てすらないような、
全く価値の無い人間に成り下がっているけれど襲う側はそんな事などわかるはずもない。
こんなところで見ず知らずの人間に何かを奪われるなんて嫌だ。
ならばできるだけ誰にも見つからず、今夜の内に進める先まで行かなければならない。
城下町は城を取り囲むように広がっている。
直線距離でいけば馬車で2時間程度で草原の広がる田舎へと抜け出せるが、人の足であれば何倍もかかるだろう。
加えて繁華街を避けながら進むとなるとどれほどかかるかなんて想像もできない。
ただでさえ病み上がりの体である私が果たしてこの町を抜け出せることが可能かどうか。
けれどどこかで野垂れ死にしようとも、彼の傍でないなら構わない。
私が死んだことすら知らないまま、彼が生きて行ってくれるならばなんでも良いのだ。
私の死を見た瞬間、彼の中の何かが壊れてしまうような気がする。
なぜかそんな予感がした。
先ほど見た彼の涙には少なからず私への思いがまだ残っていたように見えたのだ。
瞬間、私はどうにも自分を殺したくて仕方なくなった。
あの断罪裁判の時に感じたものよりも何倍も強く。
地面が近づくにつれさらに速度が落ちていった。
キリエの足が先に地面に降り立ち、体が一度ふわりと宙に浮くとゆっくりと地に足が着いた。
「僕は城から出られない。だからこの先は主様1人だけ」
悲しそうに顔を歪めながら、彼は押し出すように私を出口へと向かわせた。
恐らく城の裏口なのだろう。
いつも通る荘厳な表口とは違い、小さな出入口が扉を開き私を待っていた。
その先には城を取り囲むように広がる森が暗闇と共に出迎えている。
出口に近づくにつれ、徐々にキリエの歩みが緩くなっていく。
それでも繋いだ手はまだしっかりと握られていた。
私が城壁を超えたときには彼の足は止まっていた。
体を半分横に向けながら、キリエの姿を捉える。
すでに腕は伸ばされ、私たちを繋ぐ手ももう指しか繋がれていなかった。
そして、指が離れ、空を切った。
後ろ髪を引かれたが、それを振り切るように前を向く。
目の前は真っ暗闇の森だった。
私の足は更に速度を上げ、その闇へと足を踏み入れる。
しかし森に入っていく事に躊躇いは無かった。
この先を向かうより振り向く方がずっと恐ろしかった。
いつの間にか走っていた。
自分の荒い息遣いを聞きながら、速度を落とさぬよう走り続けた。
出来るだけ早くこの森を抜けなければ。
いつヴァリタスが起きるかわからない。
彼が起きたら、私がいなくなったことはすぐに城中に知れ渡るだろう。
そうしたら、あっという間に見つかってしまう。
早く、早く遠くへ。
きっと次に捕まってしまえば、キリエが一番望まない形で私は終わりを迎えてしまう。
前世と同じように。
一体どれほど走ったのかわからない。
足が縺れ、足を止めながらも先を急いだ。
そしてやっと森から抜けることができた。
抜けた先はレンガの道と高い建物が立ち並ぶ城下町。
絢爛な光を放ち、見目を楽しませてくれているそれらを見ても何も感じなかった。
煌々と光る街並みを見るに、おそらくまだ夜は始まったばかりなのだろう。
一つの建物に手を付き、息を整える。
俯くと、自分の足が見えた。
裸足であったため地面に落ちていた枝や鋭い石が無防備なそれを傷つけていたようだ。
いくつもの擦り傷や切り傷、そしてそこから血が流れている。
しかし、それを見ても痛みは感じなかった。
腰を降ろししばし休む。
気力と体力を多少回復させると夜の街へと足を踏み入れた。
光が灯っている場所を避けながら、路地の方へと急ぎ足で進んでいく。
いくら寝間着と言っても、一目で貴族だと分かる恰好では狙われるのは必然。
今の私にはベルフェリト家の後ろ盾もなければ助けてくれる宛てすらないような、
全く価値の無い人間に成り下がっているけれど襲う側はそんな事などわかるはずもない。
こんなところで見ず知らずの人間に何かを奪われるなんて嫌だ。
ならばできるだけ誰にも見つからず、今夜の内に進める先まで行かなければならない。
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ただでさえ病み上がりの体である私が果たしてこの町を抜け出せることが可能かどうか。
けれどどこかで野垂れ死にしようとも、彼の傍でないなら構わない。
私が死んだことすら知らないまま、彼が生きて行ってくれるならばなんでも良いのだ。
私の死を見た瞬間、彼の中の何かが壊れてしまうような気がする。
なぜかそんな予感がした。
先ほど見た彼の涙には少なからず私への思いがまだ残っていたように見えたのだ。
瞬間、私はどうにも自分を殺したくて仕方なくなった。
あの断罪裁判の時に感じたものよりも何倍も強く。
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