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1章 幼少期編 I
7.蜂蜜ロハ
しおりを挟むプリンアラモードの試食会は滞りなく終了し、商業ギルドの職員は特許申請書を受け取って帰っていった。
もの言いたげに子供たちをチラチラ見ていたが、アルベール兄さまが『はい、解散!』の空気を醸し出したので、とっとと帰ってもらったというのが正しいかもしれない。
そして、ちびっ子の我らはルベール兄さまから今後の指導を受けている。
「これからは、相談や欲しいものがあったら僕に言ってね。”アルベール兄さま”は忙しいから、僕からまとめて報告するからね。いいね?」
「「はいっ」」
いい返事をする私とベール兄さまは良い子です。
「じゃぁ、さっそく欲しいものな。蜂蜜はもう言ったから……藁の紙を作る道具と、動物の毛の……シュシュ、刷毛は城にもあるけど、どうする?」
「それ、すごく、ほそく、かける?」
「画家が使ってるやつか。それは買ってもらおう。あとは煤の色液だろ……あ、針の長いやつもな。乳を早く分離させる道具と、生クリームをかき回す道具と、生クリームをきれいに絞る道具と、たくさんの量を早く混ぜる道具もだ……だから欲しいものを書く羊皮紙が一番最初だな」
なんで私のつぶやき全部覚えているのでしょう。
「蜂蜜の件で残っていましたが、他にも話し合う必要がありそうですな」
シブメンいたんだ。
「いましたよ」
顔に出てましたか。失礼しました。
「蜂蜜は卿の出身領で取れるのだったな。そこはまかせていいか?」
経費節減案件にアルベール兄さまの目がキラッと光る。
「ええ、商品化するまでは無償で提供いたしましょう」
なんと太っ腹な! 欲をかいていいでしょうか!
「シプードのこおりがしのほかにも、つかっていいですか?」
「かまいません。しかし試食には必ず呼んでください」
「よろこんでっ」
蜂蜜ゲーット!
「なぁ、シャーベットってなんだ? さっきちょこっと言ってたよな」
私のつぶやき。ベール兄さま……
「え~と、はんぶんこおっているおかしの~、え~とぉ~」
「じゃぁ『シプード・シャーベット』でいいな」
はやっ!
「シュシュ~、今度は僕のために何か作ってよ」
ルベール兄さまのおねだり、頂きました。
「お前は『ル』が2個ついているから、いらんだろ」
次兄をからかう長兄、それを見て笑うちい兄。
「それを言うなら兄上には『ア』までついているじゃないですか」
あははは、平和ですなぁ~。
「……長くなりそうですね。会長の執務室に移動しませんか?」
ひとり会話に加われなかったミネバ副会長は、会議室の扉を静かに開けた。
自分は通らずに、まず私たちを先に通してくれる。
アルベール王子を先頭にぞろぞろと、私は最後尾に着き、通りすがりにミネバ副会長をチラリと見た。
今まで見た誰よりも白い肌。灰色の髪。メガネに隠れている瞳は、灰色に近いアイスブルー……むちゃくちゃ色素が薄い。北欧の人みたい(ただの固定概念です)
──…なんか、細くて繊細っぽい?
目が合った。
愛想笑いを浮かべてみた。
同じく愛想笑いを返された。表情が硬い。
──…あれ? もしかしてヨチヨチしてくれない大人?
それはいけません。
ほらほら、可愛いお姫さまですよ……と、キュートさをアピールしようとその場でクルクル回ったら、メガネを直すふりして目をそらされた。
──…なぬっ? この愛らしさがわからないと? あっ! 鼻で笑いましたね? ちゃんと聞こえましたよ!
後には引けません。よござんす。戦いますか? この可愛いのと戦えますか?
「シュシュ、ほら、行くよ」
ルベール兄さまに抱っこされてさっさと運ばれてしまった。
戦いの火蓋は切れる前に鎮火した。
消えてしまったので戦いもどうでもよくなった……というか、忘れた。
だって、ルベール兄さまの抱っこが、気持ちいいんだも~ん♪
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