転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ

文字の大きさ
93 / 203
1章 幼少期編 I

81.なかよしお菓子

しおりを挟む
 
アルベール兄さまがユエン侯爵領から帰ってきた。

私たち家族は「家族の間」でお出迎えだ。

さぁさぁ、結果報告をお願いします!
お顔を見れば聞かなくてもわかりますけどーっ!

「色々あったようだが上手くまとまってよかった。婚約おめでとう」

お父さまから祝いの言葉をもらったアルベール兄さまは照れ照れだ。可愛いぞ!

の部分は気になるところではあるけれど、ルベール兄さまから前もって『水を差しちゃだめだよ』と質問を止められているのです。我慢です。3日ぐらいは我慢してみせます。

「シュシューア、頼みがあるのだが」

アルベール兄さまが、珍しく困った顔をして私を見た。

「見た目と味に強い印象が残る、新しい菓子はないだろうか」

「見た目はチギラ料理人の方が頼りになると思いますが、印象に残る味となると……ええと、チョコレート以上の衝撃が必要ということですよね……う~ん」

まだ作っていないお菓子は星の数ほどあるけれど……印象、印象……

「婚約発表までに、何とか話題の菓子にしたいのだ」

はえ? もう一ヶ月もないのに?

「兄上、何か問題があるのですか?」

ルベール兄さまが心配顔に。

アルベール兄さまはそれに首を振り、ポソリとつぶやく。

「…………プリンぉぅ…じ」


部屋の中が急に静かになった。


「ええと、プリンがどうかしたのですか?」


ルベール兄さまが無言で部屋を出ていった。


「ここ最近、私は『プリン王子』と呼ばれているらしい」
「まぁ、そうなのですか?」


ベール兄さまが走って部屋を出て行った。


「……格好悪い」
「そんなことないと思いますが」


お父さまが震えるお母さまを姫抱きして、部屋を出て行った。


「レイラに知られたくない……絶対、婚約発表前にプリンを払拭したいのだ」


プリン王子の何が悪いのか。人気者の証だと思うのですが。ハンカチ王子とか……日本人特有の感覚かな?


遠くから聞こえる笑い声は、誰のもの?




☆…☆…☆…☆…☆




今年の冬の目玉商品は、固形チョコレートの詰め合わせの予定だった。

しかし、アルベール王子が婚約を発表する冬だ。

本人が経営する商会が婚約菓子を出さねば、どうにも心意気が締まらない。

そこで──「プリン王子」が格好悪いと思う方が格好悪い──と思い直したアルベール兄さまは、やけくそで『プリン王子と白チョコ令嬢』という菓子名の企画案を打ち出した。日本人の感性を持つ異世界王子であった。

シブメンの『〈割れない〉は絶対条件ですな』
私の『プリン風味のフワフワで、白チョコを優しく包み込みましょう』
ルベール兄さまの『挟むか、巻くか』
チギラ料理人の『白チョコが見えるように』
ベール兄さまの『味も見た目も関係なくバカ売れするぞ。白チョコ、足りるのか?』

たまに出るベール兄さまの鋭い突っ込み。

企画書を書いていたミネバ副会長は、ガタンと勢いよく立ち上がった。

「ランド!」

庭にいるランド職人長に、茶チョコ製作ストップの指示が出された。
次いでお弟子さんのひとりが離宮の門を飛び出すように走って行く。

さて、外注先での茶チョコ作りの進み具合はいかに? あまり進んでいないといいですねぇ。


◇…◇…◇


突貫とは思えない素晴らしいお菓子が出来上がった。

ホワイトチョコレートをプリン風味のカステラで挟んだ、食べきりサイズのケーキだ。
型抜きした小花の黄色いドライフルーツ(マンゴーみたいなの)が1個1個にくっついていて、むちゃくちゃ可愛いのだ。
カステラとホワイトチョコの間のカラメルゼリーが接着の役目をしているのが、ニクイニクイ。ヒュ~ヒュ~。


チギラ料理人の自信作──

『プリン王子と白チョコ令嬢』

ぜひぜひ、ご賞味あれ!


5個入りだよ!

しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ
ファンタジー
亡き祖母との約束を守るため、月影優里は誰にでも平等で優しかった。 困っている人がいればすぐに駆け付ける。 人が良すぎると周りからはよく怒られていた。 「人に優しくすれば自分も相手も、優しい気持ちになるでしょ?」 それは口癖。 最初こそ約束を守るためだったが、いつしか誰かのために何かをすることが大好きになっていく。 偽善でいい。他人にどう思われようと、ひ弱で非力な自分が手を差し出すことで一人でも多くの人が救われるのなら。 両親を亡くして邪魔者扱いされながらも親戚中をタライ回しに合っていた自分を、住みなれた田舎から出てきて引き取り育ててくれた祖父祖母のように。 優しく手を差し伸べられる存在になりたい。 変わらない生き方をして二十六歳を迎えた誕生日。 目の前で車に撥ねられそうな子供を庇い優はこの世を去った。 そのはずだった。 不思議なことに目が覚めると、埃まみれの床に倒れる幼女に転生していて……? 人や魔物。みんなに愛される幼女ライフが今、幕を開ける。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...