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1章 幼少期編 I
85.売れすぎちゃって困るの~ん♪
しおりを挟む解凍しておいたカカオニブの搾りかすを魔導ミルでガーッとやって、すり鉢で念入りに滑らかにする。
そしてお湯と一緒に鍋でネリネリと溶くわけだけど、チョコレートのように更なる滑らかさを追求するなら、石臼で挽く必要があるかもしれない。
さすがにココアパウダーを作ったことがないので実情がわかりません。
美味しく飲む調整はチギラ料理人に託します。色々試してくだされ。
今はすり鉢でネリネリの即席でいきます。
「わたくしはここに、乳と砂糖を入れて飲んでいました。お湯で溶いただけのものは飲んだことがありません」
「黄ヤギの乳を入れて、姫さまの馴染んだ飲み方にしましょう」
「結局、茶チョコの菓子は数が作れず仕舞いでしたからな。ココアでは色々食べたいものです」
そうだった。
チョコレート菓子を作る前にカカオバターに移行しちゃったんだっけ。
次の収穫はいつになるんだろう。
「いつも通り、最初は砂糖なしでよろしいですか?」
「はい」
鍋から少量ずつカップに注がれる。
とろみのある感じが懐かしい。
ふーふーふー……こくり。
「はい、ちゃんとココアの味がします」
飲み口が荒いような気もするけど、荒くないものと飲み比べないとわからない。
私の舌は所詮その程度。
とりあえず、甘液を入れて、塩味のお菓子と合わせていただきましょう。
今日は、おやつも全員集合です。
「旨ぁ~。俺、コーヒーよりこっちのが好きだ」
子供らしい感想をありがとうございます。
「僕は、この味はお菓子で食べたいな。何も入れない苦いコーヒーと一緒に」
『苦い+甘い』のセットですね。わかります。
「旨いな……はぁ」
なぜか残念そうにため息をつくアルベール兄さま。
「コーヒーもカカオも、足りる日が来るとは思えませんね」
ミネバ副会長も思案顔。
「何か問題でもありましたかな?」
シブメンが興味なさげに質問をする。
「茶会が異様に流行っている。貴族や富裕層だけではなく平民の(バキン)コーヒーが(ゴゴリッ)王妃の茶会に(ゴリッ)誤解が(ザクッザクッ)婚約にあやかりた(サクッサクッ)店頭に茶葉が並んでいないのが問題といえば、問題だ」
棒菓子のガリガリ音で良く聞こえなかった。
……けど、お茶が足りないというのは何となくわかりました。
お茶会に麦茶は出さないと聞いたし、玄米茶も駄目だろうなぁ。ハーブティーの知識はない。漢方のお茶は……美味しくない。薬だし。
薬と言えば、コーヒーとココアも(前世での)昔は薬だったね。
コーヒーは眠気覚ましと、知る人ぞ知るレモン汁との組み合わせで頭痛を直してしまう効能。カフェインとリモネンの組み合わせが効くらしい。
ココアは、ポリフェノールとか聞いただけで体に良さそうだなとか、抗酸化作用のなんとかで紫外線対策がどうとか、美肌が期待できる文言しか覚えてない。血行促進もあったような……寒い日に飲むと体が温まるから、あったとしておこう。
おっと、お茶だったね。
知識チートでお役に立つものはないものか……
……う~ん。
ん?……ん~?
……うわぁ……どう、しよう……
ちらりとアルベール兄さまの顔色をうかがう。
目が合う。
目をそらす。
もう一回見る。
ひゃっ!
「……何だ? 正直に言いなさい」
ひぃぃ、怖いぃぃ。
「シュ、シュシュシューアは、そそそ、損失を出しして、しししまいましたっ」
「率直に」
率直に? 正直に、はい……
「……とっても、いい言いにくいのです、が……炒った後の、カカオの皮が……お茶になったような……うっ、もうひとつ、甜菜の葉も、ほのかに甘いお茶に………ひぇぇ、ごめんなさいぃ~」
─シュシューア終了のお知らせ─
「シュは2個じゃなかったのか~?」
だまらっしゃい!
応援ありがとうございます!
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