97 / 203
1章 幼少期編 I
85.売れすぎちゃって困るの~ん♪
しおりを挟む解凍しておいたカカオニブの搾りかすを魔導ミルでガーッとやって、すり鉢で念入りに滑らかにする。
そしてお湯と一緒に鍋でネリネリと溶くわけだけど、チョコレートのように更なる滑らかさを追求するなら、石臼で挽く必要があるかもしれない。
さすがにココアパウダーを作ったことがないので実情がわかりません。
美味しく飲む調整はチギラ料理人に託します。色々試してくだされ。
今はすり鉢でネリネリの即席でいきます。
「わたくしはここに、乳と砂糖を入れて飲んでいました。お湯で溶いただけのものは飲んだことがありません」
「黄ヤギの乳を入れて、姫さまの馴染んだ飲み方にしましょう」
「結局、茶チョコの菓子は数が作れず仕舞いでしたからな。ココアでは色々食べたいものです」
そうだった。
チョコレート菓子を作る前にカカオバターに移行しちゃったんだっけ。
次の収穫はいつになるんだろう。
「いつも通り、最初は砂糖なしでよろしいですか?」
「はい」
鍋から少量ずつカップに注がれる。
とろみのある感じが懐かしい。
ふーふーふー……こくり。
「はい、ちゃんとココアの味がします」
飲み口が荒いような気もするけど、荒くないものと飲み比べないとわからない。
私の舌は所詮その程度。
とりあえず、甘液を入れて、塩味のお菓子と合わせていただきましょう。
今日は、おやつも全員集合です。
「旨ぁ~。俺、コーヒーよりこっちのが好きだ」
子供らしい感想をありがとうございます。
「僕は、この味はお菓子で食べたいな。何も入れない苦いコーヒーと一緒に」
『苦い+甘い』のセットですね。わかります。
「旨いな……はぁ」
なぜか残念そうにため息をつくアルベール兄さま。
「コーヒーもカカオも、足りる日が来るとは思えませんね」
ミネバ副会長も思案顔。
「何か問題でもありましたかな?」
シブメンが興味なさげに質問をする。
「茶会が異様に流行っている。貴族や富裕層だけではなく平民の(バキン)コーヒーが(ゴゴリッ)王妃の茶会に(ゴリッ)誤解が(ザクッザクッ)婚約にあやかりた(サクッサクッ)店頭に茶葉が並んでいないのが問題といえば、問題だ」
棒菓子のガリガリ音で良く聞こえなかった。
……けど、お茶が足りないというのは何となくわかりました。
お茶会に麦茶は出さないと聞いたし、玄米茶も駄目だろうなぁ。ハーブティーの知識はない。漢方のお茶は……美味しくない。薬だし。
薬と言えば、コーヒーとココアも(前世での)昔は薬だったね。
コーヒーは眠気覚ましと、知る人ぞ知るレモン汁との組み合わせで頭痛を直してしまう効能。カフェインとリモネンの組み合わせが効くらしい。
ココアは、ポリフェノールとか聞いただけで体に良さそうだなとか、抗酸化作用のなんとかで紫外線対策がどうとか、美肌が期待できる文言しか覚えてない。血行促進もあったような……寒い日に飲むと体が温まるから、あったとしておこう。
おっと、お茶だったね。
知識チートでお役に立つものはないものか……
……う~ん。
ん?……ん~?
……うわぁ……どう、しよう……
ちらりとアルベール兄さまの顔色をうかがう。
目が合う。
目をそらす。
「………」
もう一回見る。
ひゃっ!
「……何だ?」
ひぃぃ。
「あ、あん、ののの……」
「正直に言いなさい」
怖いぃぃ。
「シュ、シュシュシューアは、そそそ、損失を出しして、しししまいましたっ」
「率直に」
率直に? 正直に、うぅ……はい。
「……とっても、いい言いにくいのです、が……炒った後の、カカオの皮が……お茶になったような……うっ、もうひとつ、甜菜の葉も、ほのかに甘いお茶に………ひぇぇ、ごめんなさいぃ~」
─シュシューア終了のお知らせ─
「シュは2個じゃなかったのか~?」
だまらっしゃい!
207
あなたにおすすめの小説
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜
あいみ
ファンタジー
亡き祖母との約束を守るため、月影優里は誰にでも平等で優しかった。
困っている人がいればすぐに駆け付ける。
人が良すぎると周りからはよく怒られていた。
「人に優しくすれば自分も相手も、優しい気持ちになるでしょ?」
それは口癖。
最初こそ約束を守るためだったが、いつしか誰かのために何かをすることが大好きになっていく。
偽善でいい。他人にどう思われようと、ひ弱で非力な自分が手を差し出すことで一人でも多くの人が救われるのなら。
両親を亡くして邪魔者扱いされながらも親戚中をタライ回しに合っていた自分を、住みなれた田舎から出てきて引き取り育ててくれた祖父祖母のように。
優しく手を差し伸べられる存在になりたい。
変わらない生き方をして二十六歳を迎えた誕生日。
目の前で車に撥ねられそうな子供を庇い優はこの世を去った。
そのはずだった。
不思議なことに目が覚めると、埃まみれの床に倒れる幼女に転生していて……?
人や魔物。みんなに愛される幼女ライフが今、幕を開ける。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる