転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ

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1章 幼少期編 I

64.境の森 8(Side ヨーン男爵)

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ティストームの国土は巨大な半島型だ。

南北に縦長で、横に割れる谷が多く、それに架かる橋も多い。


本土と北の三領地を分断する谷は『コースト大峡谷』

東コースト橋は、オマー領へと架かる橋。
西コースト橋は、ヨーン領へと架かる橋。

その二ヶ所以外は幅が広すぎて橋は架けられていない。


建国前から存在していると豪語している『橋守り』たちの集落は、通るたびに思うが、ただの宿場町にしか見えない。
古びた雰囲気はあるものの、歴史がありそうに感じるかと聞かれたら、無言を貫くしかなくなる。
建国前云々は生返事をして話半分に聞いておくことをお勧めする。下手に話題にすると『橋守り譚』をしつこく聞かされることになるぞ。


行きも帰りも同じ宿屋に泊まったら『男爵様御用達』の旗を立てると言い出したので、頼み込んでやめてもらった。
次に通った時も利用しないと旗を出すと、半ば脅されて帰路を見送られた。

そんなこんなで、そう悪くない気分で我が領地に戻ったというのに、新領主を待ち構えていた最初の仕事が、またノッツからのアレだった。

魔獣が出なくなった境の森は、豊富な森の幸や一般動物の狩場として程々の人気が出てきたのであるが『森の食料を独占している』ときたもんだ。

別に独占しとらんし、狩るも採るもご自由にどうぞ。
ノッツの使者殿には、妻がお帰りいただいていた。


───暫くして『壊れた柵から害獣が入り込んだ』と苦情。

柵の修理に人を向かわせると、ノッツの狩人が出入りしやすいように、あちこち柵を壊している姿を確認した。
壊された柵の部分を全て開閉できるように作り替えてやって、収束。


───暫くして『狩人が怪我をするのは森に道がないからだ』と苦情。

自分たちが仕掛けた罠に、自分たちが嵌まって怪我をしたのは、足場のいい道がないからだそうだ。阿呆か。
一番使われている開閉柵から1本道を切り開いてやって、収束。


ここまでの苦情処理にかかった金額は、背筋が寒くなる程の桁に達している。
記録は丁寧に残し国に提出しているが、その日が来るのが恐ろしい。


「調子に乗っておるのう」

温厚な相談役元代官の三爺も、さすがに腹の虫が動き出したようだ。
国王が賽を投げる日も近かろうとの意見も一致して、準備をこっそり始めることにした。


道を通したら狩人だけではなく、トルドン商人も利用するようになった。
これまでの輸出入は海路のみであったが、半日もあれば徒歩で森を通り抜けられるのだ。商売人であったら利用しない手はない。

簡単な関所を作って対応した。

申し訳ありませんが、身分証明できない方の入国はお断りいたします。
西大陸ギルドの発行証を持っていれば、ヨーン男爵領は通行の邪魔は致しません。どうぞお通りください。


トルドンから商人が入る様子を見て、ティストームの商人もトルドンに物を売りに行くようになった。
しかしあちら側の関所で、通行税を請求される事態が起こった。

通行税の徴収に問題はない。
商業ギルドの発行証を持った商人からは、普通は徴収しないがな。
商業ギルドと冒険者ギルドの登録料には、大陸共通の通行税免除費が含まれているのは知っているか? 知っていて徴収してるなら問題があるぞ。絶対知っていてやっているだろうがな。

困ったことではあったが、通行税は高額ではなかったし、荷は持ってきてしまったしで、商人たちは物は試しと律儀に支払ってノッツに入った。
何を持って行ったのかは知らないが、売れたらしい。通行税を取られても売りに行きたいほど、儲かったらしい。


──大きな被害が出ないのなら、とりあえずは様子見だ。


俺たちはその裏で、例の魔素溜りがあった周辺の木を伐採しまくっている。
魔獣討伐場を森と切り離し、完全にヨーン男爵領にしてしまうためだ。

木の伐採と並行して、今は地下になっている魔素溜りの上に坑道掘りで出た土石を盛っていく。
そこに毒にも薬にもならない草花を植え、何の変哲もない丘を先んじて完成させた。

地下から上がってくる魔素の影響も忘れてはいけない。

子供たちが遊びに行かないよう『丘の花の妖精はいたずら好き』と、適当な噂を流した。
それがいつの間にか『丘の上に連れて行くよ!』が叱り文句となり、丘の上は子供たちにとって恐ろしい場所と成り果てた。
昔からの言い伝えのように馴染んで、丘はもとからそこにあったような存在になったのは大変喜ばしい。


木の伐採はまだ続いている。


ノッツが通行税収入に気を取られているうちに。

ノッツが獣討伐場の存在を知る前に。





間に合った!!





『妖精の丘』は境の森中立地帯ではなく、どこから見てもヨーン男爵領だ。

ルエが長期休暇で里帰りした時には、これを見て爆笑していた。

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