転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ

文字の大きさ
154 / 203
2章 幼少期編 II

36.建設現場見学ツアー10

しおりを挟む
 
三段お重がほぼ空になって、締めのうさリンゴをシャクシャクしていたら、休憩中の作業員たちの姿が目に入った。
足場の日陰で仲間内の話をしたり、昼寝をしたり、そんな様子が前世の作業現場と同じだなぁと眺めていると、なんだか楽しくなってきた。食後の缶コーヒーがあったら完璧だ。

そういえば、ズボンの下が膨らんだニッカポッカにはどんな利点があったのだろう。あれは鳶職の人が穿くものだったはず。そうだ、鳶職と言えば地下足袋があった。靴の裏にガモ素材を使った時に思い出せなかったな。あ~、でも、石を運んでいるから、ここの現場は安全靴の方が必要かも……う~む。

「記録が必要か?」

アルベール兄さまが私の表情を読んだ。
別に今じゃなくてもいいけど……もうお腹いっぱいだし、侍従さんがスタンバってるから記録してもらいましょうか。

「この現場では必要ない物ですが、忘れちゃいそうなので紙の端っこに『じかたび』と書いておいてください。えと、それて、ここの作業員に必要な装備がいくつかあります。頭を落下物から守るための『保護帽ヘルメット』これは内側に平紐を張って浮かせて被るものですが……」

説明できないので、侍従の筆記具を貸してもらった。
ちょっと時間がかかりますよ。


カリ、カリ、カリ、カリ…………


はい、終了。筆記具はお返しします。


ヘルメットの内装はグルッと頭を囲んで、頭頂部のパッドに平紐をバッテンに渡して、耳の邪魔にならないようにY字型のベルトを顎まで伸ばす。長さ調整のアジャスター、バックルは確かこんな形って程度……わからないからここは口で説明した。侍従がすかさず『固定させる金具』と記入する。
ヘルメット本体は合成樹脂がないから金属になっちゃうのかな『軽くて硬い素材』と書いてもらった。

「兵士用ではないから拳大の石に耐える程度でいいだろう。こちらは、命綱だな?」

「はい、足場にこの金具を簡単に引っ掛けられるようにするのです。簡単でないと本人が面倒がってやらなくなってしまいますから、一動作ワンタッチでないと意味のない道具になります。ここを握って口を開けて、握りを放すとバネの力で口が閉じるように作ってほしいです」

カリカリカリカリ……わぁ、この侍従さん書くの早い。全部書き留めてる。

「この手袋の細かい突起はなんだ? こっちのは鉄靴か?」

ベール兄さまが覗き込んできた。
鉄靴と聞いてルエ団長も身を乗り出す。
シブメンは興味なさげに最後のうさリンゴを食べている。

「編み手袋にガモの滑り止めを接着したものです。編み方はゴム編みといって、え~と、これは後でいいですね。で、こちらは石をうっかり足の上に落としてしまっても怪我をしない履物です。金属部分と一体型にした靴が理想なのですけど、貸し借りをしてしまいそうなので装着型がいいと思いました。面倒かもしれませんが、靴の貸し借りをしてはいけないのです」

水虫の感染を防ぐためです。食事中だから言いませんが。

「足痒病か?」

うっ、ルエ団長が食いついてしまった。
後ろで交代しながら食事している騎士も、なんか反応した。

「え~と、この話は帰ってからにしましょう」

「いいや、今聞きたい」

「食事中の方がいるのです」

「お前たち、構わないよな!」

上司に言われたら部下は否やと言えないではないですかっ。ムキーッ!

「わたくしっ、食事を不味くする方は嫌いです!!」






(………はっ!)






私の沸点がこんな所に……食? 食なの? 食で着火するの?

意外や意外、いや意外でもないけど、自分でビックリ。






(………あ、れ?)






天幕内がシ~ンとなっちゃってる!

うわわわわ、どうしよう。失敗しちゃった。



「ごめっ、ごめごめごめんなさいっ」

「あ~、いや、すまん。騎士団には、あ~、多いから、つい」

うぅぅ、子供が大人を困らせてるぅ。元大人としてやるせない。申し訳ございません。脳内スライディング土下座ー-ーっ!

「えっと、えと、仲直り、してください!」

両手をシュパッと出す。

『え?』って顔をされたけど、ルエ団長に握手を迫った。
しかし、何を勘違いしたのかひょいっと抱っこされてしまった。抱っこの催促と思われたみたいだ。いいけど。

「仲直り、ですね」
「仲直りだな」

ニッコリ。

喧嘩してたわけじゃないけど仲直りできた。ほ~っ……はっ、シブメンの馬鹿馬鹿しいという視線とぶつかった。

えぇ、そうですよ。子供だましに付き合ってもらっているんですよ。ルエ団長が懐の広い人で助かりましたよ。何か? くぅ、笑ってるのは誰ですか?



………続く
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜

咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。 元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。 そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。 ​「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」 ​軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続! 金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。 街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、 初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊! 気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、 ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。 ​本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走! ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!? ​これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ! 本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!

処理中です...