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2章 幼少期編 II
37.建設現場見学ツアー11
しおりを挟む「シュシューア、騎士たちの食事場所は移動させた。足痒病の話をしてもいいぞ」
アルベール兄さま……口の端がピクピクしてますよ。笑いたいの? 怒ってるの?
「……え~と、足痒病は、騎士団に多いのでしたか?」
「そうなんだ」
ルエ団長と目が合う。抱っこされているから目線が近い。ニコッ。
「可愛いなぁ、うちの子の嫁に来ないか?」
頬ずりされた。
「貴様!! 可愛がるのは自分の娘だけにしておけ! しかも息子はいないはずだ!」
アルベール兄さまがルエ団長から私を奪い取る。壊れ物なので大事に扱ってください。
「はっはっはっ、そのうち産まれるさ」
「ふんっ」
鼻を鳴らしてそっぽを向く王子さま。
大人げないアルベール兄さまなんてめったに見られないのです。得した気分♪
「兄上」
ベール兄さまは自分が座っているベンチの隣をポンポンと叩く。
私はそこにポフッと置かれ、ふたりの兄の間にキュッと挟まれた。
「シュシュ。ルエ団長だったからいいけどな、家族以外にあんな事させちゃ駄目だ。嫁に行けなくなるぞ」
え? 頬ずり程度で? 私まだ幼児ですよ。
「ベールの言う通りだ。身分が高い者ほど小さな瑕が命取りになる。今後は気を付けるように」
お嫁に行けなくなるのは困るな。形だけでも抵抗したほうがよさそうだ。
「はい、次はグーで殴ります」
ルエ団長にファイティングポーズを向けてみた。
「そのにぎりじゃぁ、指を折る。こうだ」
拳の作り方の指導が入った。
そうか、親指を中に入れちゃいけないんだ。こうかな?…親指の位置を直された。
「四本指は平らに、人差し指と中指の第二関節が出ないようにな」
「つまらんことを教えるな。本当に殴ったら正拳でも全部の指が折れるではないか」
アルベール兄さまは、指導中のルエ団長の手をベシッと振り払った。
「ペイアーノを習ってるんだから指は守らなきゃな。こうして腹に持ってきて、シュシュの好きなダンゴムシになれ。で、余裕があったら転がって逃げろ」
『ダンゴムシ』でアルベール兄さまに吹かれて、『転がって逃げろ』でシブメンが顔をそむけた。ルエ団長は想像して合点がいったのか、ワンテンポ遅れて爆笑した。
「ベール兄さま、それでは格好悪いので、短剣を習いたいと思います」
フジコちゃんみたいに太ももに装備して、シュパッとカッコよく!
「食器以外の刃物を持つのは禁止とする」
アルベール兄さまは憮然と言った。
「持ってる方の指を切り落としそうで怖いぞ」
やめてくれと、ベール兄さまは首を振る。
「どうせ奪われるから武器は持たないほうがいい」
ルエ団長のは専門家の意見ですか?
「ダンゴムシで転がるのが一番よろしいのでは?」
シ~ブ~メ~ン(怒)
………続く
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