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2章 幼少期編 II
27.建設現場見学ツアー1
しおりを挟む本日は晴天なり……空中街道の建設現場見学日和なのであります。
アルベール兄さまの引率のもと、見学メンバーは私とベール兄さま、そして飛び入り参加のシブメンと、休暇中の近衛騎士団長のルエ・ヨーンド伯爵で……全5人。
街歩きと違って人ごみに入り込まないので、今日の護衛は近衛騎士だけとなっている。
だけと言っても10人以上いるけれど。それとアルベール兄さまの侍従2名と、侍女2名ね。
今は、王政区から馬車でなんやかんやと一時間かけて、やっとこさ東王都門から出たところだ。一番外側の門ね。
その王都門では、通行証を提示するだけのユルユル検問だったのは意外だった。
聞いてみたところ、雑多な人々が出入りする平民の層を厳しくしてしまうと、流通に支障が出るからなのだそうだ。だから貴族層との境である禁門が厳しくなっているのだと、アルベール兄さまが教えてくれた。
うん、ルベール兄さまとお出かけした時も、お姫さまにも容赦ない厳しさだったよ。
でもね、でもねぇ~、今日の禁門はアレだった。
兵たちのカリスマである『ルエ近衛騎士団長』が同行していたので、禁門兵たちから歓迎ムードでお出迎えされたのだ……って、なんだか釈然としませんよ。ルエ団長がそっくりさんだったらどうするのです?
モヤモヤをアルベール兄さまに訴えようと見たら、おっと、王子さまは腕を組んで目をつむっていらっしゃる。隣に座っているベール兄さまも半眼になっていた。シブメンは……いの一番に馬車を飛び降りたルエ団長を、非常に面倒くさそうな目で追っていた。あらぁ~。
『せいれー---つ!!』
ルエ団長の檄が飛んだ。
やっぱり駄目でしたか。
整列した兵士の前を鬼軍曹の如く行ったり来たりしているルエ団長は、兵士たちの憧れであり、ベール兄さまの剣の先生でもある。
ルエ団長の舞うような剣技が凄いのだと、ベール兄さまはしょっちゅう師匠自慢をしているのだけど、私にとってはチャーハン好きの人という印象しかなかった。
まぁでも、初めて会った時に人気の理由がわかったけどね。彼はとんでもない美人なのだ……じゃなくて美男子なのだ。
お父さまのような紳士的なハンサムさんとはまた違う魅力の、シブメンのような天才型なノーブルさとも違う魅力の、どう表現したらいいのだろう……シュッとした格好いいオジサマ! ……いや、オジサマはないなぁ。う~ん。
そんなつまらないことに頭を悩ませているうちに、仕切り直した通常の厳しい改めが終わって、馬車はカッポカッポと進んだ。
ふふん、この馬車はガタガタゴトゴト音は出ないのだよ。最新式乗用馬車《アルベII》六輪 紺 重型……もう車体がノスタルジックな高級バスなのだ。魔導蒸気自動車の原型が見えてきたのだ。うふふ~、スチームパンク~♪
◇…◇…◇
さぁさぁさぁ、サクサク進んでいよいよ空中街道ですよ。
馬車の窓から顔を出せば王都駅が見えるはず。あっ、アルベール兄さまにカーテンを引かれてしまった。馬車を降りるまで楽しみに待つようにと言明も受けた。もうチラ見もできない。
仕方ありません。ベール兄さまも我慢していますものね。私も良い子で待ちますよ……でも、ちょっとだけ。だめ?
………続く
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