転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ

文字の大きさ
174 / 203
2章 幼少期編 II

55.研究院 4

しおりを挟む
 
「なんだこれは……」

頭の上にアルベール兄さまの顎が乗せられた。

「……さぁ」

自動書記もどきで書いた筆記具情報の中に、解明できない絵図があった。
完成図もあるというのに、私にもまったくわからない。
おかしいな、筆記具の情報のはずなんだけどな。

「王女殿下は、こちらを『イティマイバディ、デューブン』と仰っておりました」

書記の人のサポートが入った。

今回は書記の人と分担することが出来たのだ。
私は絵図だけ描いて、口で説明したことを彼が文字越ししたのである。質問されて何度か答えたりもした。

でも答えたのは私ではない。

お花畑が他と繋がっていて、そこは多分日本で、日本人で、生きている人がこちらを視ている。
そしてこれも多分だけど繋がる先はひとつではない。

「お前の行動が媒体先に筒抜けという事か……」

そうアルベール兄さまは唸ったけれど、そんなことはない。

便宜上『媒体の人』と呼んでいるその人たちが〈たまたまこちらを覗いた時〉に〈たまたま私がお花畑にいる〉と、私の状況が〈なんとなく〉わかるようなのです。
それで情報を流してくれるわけなのだけど、たまに何故わからないのかと怒っているのです。わからないものはわからないのです。カタカナの情報はやめてくれと伝えているのに、私の考えは届かないみたい。昨日の失礼な媒体の人も一方的だったしね。ほら、シブメンに乗り換えようとしたあの人……無事にルベール兄さまの媒体に往けたのだろうか。



さて、イティマイバディ……です。

なんでしょうね。



イティマイバディ……

イティマイバデ……

イティマイバ……

イチマイバ……いちまいば……一枚刃……



はうっ!



『一枚刃で充分』!!



日本語か!!



「これは『電動ヒゲ剃り機』です!」

無駄!! 
無駄じゃないけど、便利だろうけど、今はいらないよね。どうしてこんな情報が?……はっ、刀剣繋がり? いや、違う。なんかこう、娯楽じゃなくて、役立ててほしいような、応援の気持ちがこもっているような……

まぁいいか。それより、肝心の筆記具は……

書き散らかした藁紙を漁ってみる。

あったーーーっ!


フエルトペン!


「これ、これ、これの説明は何て言ってましたか?」

「インクの成分はこちら……顔料、樹脂、酒精、剥離剤。剥離剤の製法がニホンゴと西大陸語の混合で解読が必要です。このように記録しました」

記録紙をくるりと私に向けて見せてくれた。

私の知らない西大陸語まで口にしていたのね……「媒体の人」に西大陸人らしき存在も出てきました。日本だけじゃなかった。謎が謎を呼ぶ! お花畑の真実とは?!…………解き明かすつもりはありません。

「………」

剥離剤の後に日本語で言うところのカタカナがズラズラ~ッと……ペンに剥離剤を使う理由がわからないんだけど……シリコンが出てきた。ケイ素だよね。シブメンが言っていた屑水晶。アレに何かすると……作り方? ユセイ…油性シリコンポリマー……

「そして、こちらとセットだと仰っていました。金属に釉薬を塗って焼いたものです」

私の描いた絵図を指す。
ただの横型の長方形だ。棒が下に2本ついてるけど。なんだろこれ。

「……釉薬とは何ですか?」

顎乗せが気に入った様子のアルベール兄さまに聞いてみる。

「ガラスのことだ。食器の艶やかな表面がそうだ」

お皿のつるつるの部分。横長の長方形に2本の棒。そこにペンとくれば……



『ホワイトボード』か!!



筆記具と言えば筆記具だけども……あぁ、だからインクに剥離剤か。文字が消せるように。

他のペンもあるかな? ペン、ペン、あった。

「『ブゥルペン』『シャウペン』の構造説明は完璧に記録しました」

文字が一杯並んだファイルを立ててドヤ顔をされた。

ボールペンと、シャープペンね……あら、万年筆がないではないの。

「そのふたつは後回しだ。『イロエンピィツ色鉛筆』と『フエルトペン』を先行させる。水性と油性の両方だ。色はとりあえず黒と赤でいいだろう……フエルトのニードリング知識が役に立つな、シュシューア」

「はいっ! でも色鉛筆は12色お願いします」

後だ後……と、途中で止められてしまった。




どうでもいい設定………………
西大陸語には日本語の様に
”漢字”と”ひらがな(カタカナ)”のようなものがあります。
……………………………………
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ
ファンタジー
亡き祖母との約束を守るため、月影優里は誰にでも平等で優しかった。 困っている人がいればすぐに駆け付ける。 人が良すぎると周りからはよく怒られていた。 「人に優しくすれば自分も相手も、優しい気持ちになるでしょ?」 それは口癖。 最初こそ約束を守るためだったが、いつしか誰かのために何かをすることが大好きになっていく。 偽善でいい。他人にどう思われようと、ひ弱で非力な自分が手を差し出すことで一人でも多くの人が救われるのなら。 両親を亡くして邪魔者扱いされながらも親戚中をタライ回しに合っていた自分を、住みなれた田舎から出てきて引き取り育ててくれた祖父祖母のように。 優しく手を差し伸べられる存在になりたい。 変わらない生き方をして二十六歳を迎えた誕生日。 目の前で車に撥ねられそうな子供を庇い優はこの世を去った。 そのはずだった。 不思議なことに目が覚めると、埃まみれの床に倒れる幼女に転生していて……? 人や魔物。みんなに愛される幼女ライフが今、幕を開ける。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...