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デート⑪

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店を出て、歩き出す。
日は傾きかけ、もうすぐ夕暮れだ。

カイもリクも適度に距離を取ってくれている。

「殿下、今日は楽しかったです。ありがとうございます。」

「・・・・・名前、呼んでよ。昔みたいに。」

「そんな、何も知らなかった幼少期ならいざ知らず、今名前を呼ぶなんて恐れ多いです。」

「いやだ。フィア、リクのことは名前で呼ぶだろう?2人の時くらい、俺だっていいじゃないか!」

「殿下・・・・」

「ダメ!名前!いや、愛称でよんで!」

どうしましょう・・・殿下が幼子に見えます・・・

「ねえ、どうしてもダメなの?俺は、いいって言っているのに・・・」

「・・・・・・」

「じゃあ、命令だよ。2人のときは、愛称で呼んで。俺の愛称、知ってるでしょ?」

そう言う殿下は、命令と言いつつ、優しいお顔で、はかなげなお顔をしていた。
寂しそうな、苦しそうな顔を見て、この方はいったいどれだけ我慢をしているのだろう。
臣下としては、落第かもしれない。
けれど、数少ない個人としての望みを叶えてあげたいと思ってしまった。
惚れた弱みなのかしら・・・

「・・・・・ヴェン様。」
それだけで、殿下はとても嬉しそうに笑った。

「うん。呼び捨てがいいけど、今日はそれで我慢するよ。」
そう言い、手を差出し、また恥ずかしいつなぎ方をしてくる殿下。
笑顔が見れたなら、いいかと思ってしまった私は、ちょろいな・・・
フフフっと笑った。


途中、街の入口で待っていた来たときに乗ってきた馬車に乗って、どこかへ向かう。
手はつないだまま。向かい合わず、隣合わせで乗っている。

「殿下、そろそろ手を離していただけますか?もう迷子のご心配はいりませんわ?」
ムッとした表情の殿下。

「殿下、は嫌だって。愛称と言ったよね?」
と有無を言わさぬ圧・・・

「ヴェン様、手を・・・」

「嫌だ!」
え・・・?

「では、どちらへ向かっていらっしゃるのですか?」

「秘密の場所。」

「その方角ということは、王宮ですかね?」
なにもお返事がない・・・しかも、窓の外を見ていて、表情も分からない・・・

ああ、婚約者としての体裁は保ったので、そっけなくなってしまったのですね・・・






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~前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力でとても幸せです~
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