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2-5 不可思議な結末
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シャドウストーカーに乗っ取られたリンが、その身体能力をいかんなく発揮してその槍を避ける。
と同時にゲイルが素早く僕とその間に割って入った。
そして振り向かないまま僕に突っかかってくる。
「てめえまた隠し事してやがていたな!」
「今回は君達を守るためだよ」
というか、本体と接触して第二のシャドウストーカーになられても困る。
そうでなければ今回だけは助けてもらおうと思っていたくらいだ。
「まあいい。で、嬢ちゃんはどうした?」
「乗っ取られてる。三十分経つか、影を撃てば追い出せると思う」
「そうかい。じゃあ早速やるかミミル!」
「はい!」
反対の茂みから今度はミミルまで出て来る。
その姿を見た途端、冷や汗が流れた。あの子は僕同様シャドウストーカーに囚われやすい年齢なのだ。
彼女には撤退してもらおうとそちらを見るけど、ミミルはいつものなよなよとした表情は打って変わって引き締まっていて、頭の髪飾りである宝箱を両手で触る。
「コル! ハティス!」
僕が止める前に叫んで、宝箱がガパッと開いた。
そして僕がずっと気になっていたその中身が、遂に姿を現す。
出て来たのは、手のひらに乗りそうなぬいぐるみだった。兎と熊のそれはぬいぐるみとしか言いようがなかった。
けど、もこもこと動くのはただのぬいぐるみではないのは明白だった。
「動きを止めてください!」
と彼女が指示すると、やっぱりただのぬいぐるみではない。背中の縫い目に手を突っ込んでまさぐり出す。
そしてどこに仕舞っていたのか金属製のフォークを取り出して、一気に空を飛んだ。
鋭い切っ先をリンに避けられるもUターンし、また攻撃を仕掛ける。
と、今度は大剣で切り飛ばされ、もう一体は素手で捕まえられた。
でも、ぬいぐるみはそれだけでは止まらない。その手にある人形が不意に大きくなって彼女の手を振り切る。
そしてその背後には同じく巨大化した兎とフォーク。
視覚の外から、一気にフォークを振り下ろされる
「……」
見えて居ないはずのその一撃をリンは回避した。そして正面の熊のぬいぐるみの腹を蹴りつける。
余程軽かったのだろう。ポーンと宙に浮いて枝に引っかかる。
「何あの人形」
強化されたリンの攻撃を受けて平然としていて、その上しっかりと攻撃も加えられるなんて。
「ミミックだ。ミミルは魔物を操るスキルを持ってるからな。髪飾りには常にミミックを待機させてるんだよ。で、あのお嬢さんこそなんだ? 化け物か?」
「そうだね。ある意味化け物だよ」
多分、リンの身体能力と僕の魔石の力、更にシャドウストーカーの能力も加わっている。
そう考えると、化け物とよりは生物兵器と言った方が良いのかも知れない。
時間が経てば経つほど僕達のシャドウストーカー化の可能性が高くなるもの
「……今なら魔法弾で影を狙えるかな?」
「そう慌てるなよ。手早く仕留めるからよ」
今まで観察していたゲイルがまた槍を構えて、ぬいぐるみとリンが戦う戦場へと乱入した。
ぬいぐるみに斬りかかっていた大剣と槍がかち合い、火花が散る。けど弾かれたのは突進の勢いも重量もあったはずの槍だった。
「ちっ。馬鹿力だなっ」
「ごめんそれ僕のせいだ」
「後で色々要求してやるから覚悟しろ!」
切り返し、槍を突き出すゲイルが毒づく。ああ、だったらこれを言ったなら益々怒るだろうな。
「後、体力が増えて、移動速度も速いから」
「てめ! マジか!?」
それを証明する様にリンが森の木を使って三角跳びをしてぬいぐるみの攻撃を避けて、ゲイルに斬りかかった。
槍で防御するゲイルだが、余りにも重かったのだろう。片膝をついて耐えている。
「ぐおおおおりゃあ!」
それを何とか振り払うと、二体のぬいぐるみが突き刺す。
リンは冷静にフォークの間を縫うように避けて、ゲイルに追い打ちの蹴りを仕掛けた。
「なめるなよ!」
忘れていたけど、ゲイルは魔法で風を使う。
蹴りをするリンをぬいぐるみごと吹き飛ばして、強烈な突撃を繰り出した。
風も纏ったその攻撃は、きっと回避行動を制限しつつの一撃だったのだろう。
全く避けることが出来ずにリンの腹に刺さる。
「って本体傷付けちゃ駄目だよ!」
「分かってるよ! しっかりと寸前で加減した!?」
その加減が悪手だったか、リンが槍を掴んで思い切り握ってきた。
徐々に押し返され、更に槍から妙な音が聞こえて来て、ヒビが入る。
「ちっ。ミミル! 早くしてくれ! お気に入りが砕けちまう!」
「はい!」
ミミルがぬいぐるみを使って、一気にリンの腕をフォークで地面に縫いとめる。
「よし!」
たとえ体重が軽かろうと力はあるのか、あのリンが動けない。
「凄い!」
「だろ! これで!?」
ここで僕達の誤算だったのがリンが動けないけど、シャドウストーカーは動けることだろう。
リンから黒いドロドロした影がはぐれて、ゲイルとぬいぐるみの足元を通過する。
「逃がすか!」
ゲイルが何処からかナイフを抜いて投げつける。けどそれも自由に変化する体で避けられてしまった。
そしてミミルに一気に迫る。
「っ」
一瞬の判断で彼女の腕を引いていた。
そして、シャドウストーカーの口が目の前にあった。
「……っ」
不味い。僕は奴を知り過ぎている。このまま触れられたなら、何が起きるか分からない。
誘導弾で撃とうとするけど、敵の方が速かった。
奴の腕が、僕の頭を掴む。
そして、僕の目の前でシャドウストーカーは消滅した。
「!?」
それは僕の中に入った訳でなく、本当にかき消されたみたいだった。
べったりとした感触が微かに残る頭を触る。やはりそこには何もない。
「こんなの文献にはなかったんだけど」
一先ず、全く訳の分からないままシャドウストーカーの危機は去った。
僕の中に妙なものを感じる結末だった。
「っと呆けてる場合じゃない! リン!」
乗っ取られて散々体を使われたリンの方に駆け寄る。
と、彼女は平然と目を開けていて、胡坐を掻いて、小さくなったぬいぐるみを触っている。
「大丈夫だった?」
「分からん。何があったのかさっぱりだからな。レイは大丈夫か?」
「分からない。全く理解できないことが起きたから」
「なんだそりゃ」
ゲイルに突っ込まれるほど、妙な会話なのは自覚していた。
でもそれが事実なのだから仕方がない。
「私が見る限り、レイは平気そうだぞ」
「僕が見る限り、リンも無事みたい」
よし、なら問題はないか。
リンが立ち上がってぬいぐるみを抱える。
「所で何でぬいぐるみがあるんだ?」
「これはミミルのなんだって」
「へえ」
グニグニと顔を変形して見せると、そこにワタワタとやってきたミミルが、リンに縋ってくる。
「あの、その子達は結構気分屋なので、そんなにされると怒るかも」
「そっか。悪かった」
というとぬいぐるみはミミルの元に帰ってくる、と思いきや直ぐに脱走して、森に逃げ出した。
「え!? あ!? 待って!」
またワタワタと追いかけるミミルだけど、二兎追うものは一兎も得ずというように、ぬいぐるみ二体を一人で追うのは無理な話だった。
小さなぬいぐるみに翻弄されて、木の周りを回ったり、頭の上に乗ったぬいぐるみを捕まえようと自分の頭を叩いたり散々な目に遭っている。
何となく、気分屋というよりは構って欲しい子供の様な印象で、笑ってしまう。
「さて、僕達の子供を助けるって役目は終わったね」
「ああ、迷子を助けるのは完了したな」
僕達は顔を見合わせ、頷く。
「「じゃあ逃げよう」」
「おい何でそうなる?」
ゲイルは疑問を呈するけど、何でと言われても当たり前でしょ、としか言いようがない。
だって見て欲しい。この惨劇を。
森は破壊されつくして、多分その時の爆音は村にも届いたはずだ。
であるなら僕達の追手の耳にも届いているかも、と思うべきで。
「逃げ一択だね」
「ああ、二者択一にもならねえな」
「と言う訳でゲイルは子供をよろしく」
「おい待て! こっちは話が」
ゲイルの言葉を聞かずに、僕はリンの背中に乗る。と、子供をずっと警護していた木衛門も魔石を回収して僕の肩に乗った。
「じゃあさよなら!」
それだけ言って、僕達はスタコラとその場を後にしたのだった。
シャドウストーカーの一件で色々と考えなきゃいけないことも増えたけど、取り合えず今は『三十六計逃げるに如かず』なのだ。
と同時にゲイルが素早く僕とその間に割って入った。
そして振り向かないまま僕に突っかかってくる。
「てめえまた隠し事してやがていたな!」
「今回は君達を守るためだよ」
というか、本体と接触して第二のシャドウストーカーになられても困る。
そうでなければ今回だけは助けてもらおうと思っていたくらいだ。
「まあいい。で、嬢ちゃんはどうした?」
「乗っ取られてる。三十分経つか、影を撃てば追い出せると思う」
「そうかい。じゃあ早速やるかミミル!」
「はい!」
反対の茂みから今度はミミルまで出て来る。
その姿を見た途端、冷や汗が流れた。あの子は僕同様シャドウストーカーに囚われやすい年齢なのだ。
彼女には撤退してもらおうとそちらを見るけど、ミミルはいつものなよなよとした表情は打って変わって引き締まっていて、頭の髪飾りである宝箱を両手で触る。
「コル! ハティス!」
僕が止める前に叫んで、宝箱がガパッと開いた。
そして僕がずっと気になっていたその中身が、遂に姿を現す。
出て来たのは、手のひらに乗りそうなぬいぐるみだった。兎と熊のそれはぬいぐるみとしか言いようがなかった。
けど、もこもこと動くのはただのぬいぐるみではないのは明白だった。
「動きを止めてください!」
と彼女が指示すると、やっぱりただのぬいぐるみではない。背中の縫い目に手を突っ込んでまさぐり出す。
そしてどこに仕舞っていたのか金属製のフォークを取り出して、一気に空を飛んだ。
鋭い切っ先をリンに避けられるもUターンし、また攻撃を仕掛ける。
と、今度は大剣で切り飛ばされ、もう一体は素手で捕まえられた。
でも、ぬいぐるみはそれだけでは止まらない。その手にある人形が不意に大きくなって彼女の手を振り切る。
そしてその背後には同じく巨大化した兎とフォーク。
視覚の外から、一気にフォークを振り下ろされる
「……」
見えて居ないはずのその一撃をリンは回避した。そして正面の熊のぬいぐるみの腹を蹴りつける。
余程軽かったのだろう。ポーンと宙に浮いて枝に引っかかる。
「何あの人形」
強化されたリンの攻撃を受けて平然としていて、その上しっかりと攻撃も加えられるなんて。
「ミミックだ。ミミルは魔物を操るスキルを持ってるからな。髪飾りには常にミミックを待機させてるんだよ。で、あのお嬢さんこそなんだ? 化け物か?」
「そうだね。ある意味化け物だよ」
多分、リンの身体能力と僕の魔石の力、更にシャドウストーカーの能力も加わっている。
そう考えると、化け物とよりは生物兵器と言った方が良いのかも知れない。
時間が経てば経つほど僕達のシャドウストーカー化の可能性が高くなるもの
「……今なら魔法弾で影を狙えるかな?」
「そう慌てるなよ。手早く仕留めるからよ」
今まで観察していたゲイルがまた槍を構えて、ぬいぐるみとリンが戦う戦場へと乱入した。
ぬいぐるみに斬りかかっていた大剣と槍がかち合い、火花が散る。けど弾かれたのは突進の勢いも重量もあったはずの槍だった。
「ちっ。馬鹿力だなっ」
「ごめんそれ僕のせいだ」
「後で色々要求してやるから覚悟しろ!」
切り返し、槍を突き出すゲイルが毒づく。ああ、だったらこれを言ったなら益々怒るだろうな。
「後、体力が増えて、移動速度も速いから」
「てめ! マジか!?」
それを証明する様にリンが森の木を使って三角跳びをしてぬいぐるみの攻撃を避けて、ゲイルに斬りかかった。
槍で防御するゲイルだが、余りにも重かったのだろう。片膝をついて耐えている。
「ぐおおおおりゃあ!」
それを何とか振り払うと、二体のぬいぐるみが突き刺す。
リンは冷静にフォークの間を縫うように避けて、ゲイルに追い打ちの蹴りを仕掛けた。
「なめるなよ!」
忘れていたけど、ゲイルは魔法で風を使う。
蹴りをするリンをぬいぐるみごと吹き飛ばして、強烈な突撃を繰り出した。
風も纏ったその攻撃は、きっと回避行動を制限しつつの一撃だったのだろう。
全く避けることが出来ずにリンの腹に刺さる。
「って本体傷付けちゃ駄目だよ!」
「分かってるよ! しっかりと寸前で加減した!?」
その加減が悪手だったか、リンが槍を掴んで思い切り握ってきた。
徐々に押し返され、更に槍から妙な音が聞こえて来て、ヒビが入る。
「ちっ。ミミル! 早くしてくれ! お気に入りが砕けちまう!」
「はい!」
ミミルがぬいぐるみを使って、一気にリンの腕をフォークで地面に縫いとめる。
「よし!」
たとえ体重が軽かろうと力はあるのか、あのリンが動けない。
「凄い!」
「だろ! これで!?」
ここで僕達の誤算だったのがリンが動けないけど、シャドウストーカーは動けることだろう。
リンから黒いドロドロした影がはぐれて、ゲイルとぬいぐるみの足元を通過する。
「逃がすか!」
ゲイルが何処からかナイフを抜いて投げつける。けどそれも自由に変化する体で避けられてしまった。
そしてミミルに一気に迫る。
「っ」
一瞬の判断で彼女の腕を引いていた。
そして、シャドウストーカーの口が目の前にあった。
「……っ」
不味い。僕は奴を知り過ぎている。このまま触れられたなら、何が起きるか分からない。
誘導弾で撃とうとするけど、敵の方が速かった。
奴の腕が、僕の頭を掴む。
そして、僕の目の前でシャドウストーカーは消滅した。
「!?」
それは僕の中に入った訳でなく、本当にかき消されたみたいだった。
べったりとした感触が微かに残る頭を触る。やはりそこには何もない。
「こんなの文献にはなかったんだけど」
一先ず、全く訳の分からないままシャドウストーカーの危機は去った。
僕の中に妙なものを感じる結末だった。
「っと呆けてる場合じゃない! リン!」
乗っ取られて散々体を使われたリンの方に駆け寄る。
と、彼女は平然と目を開けていて、胡坐を掻いて、小さくなったぬいぐるみを触っている。
「大丈夫だった?」
「分からん。何があったのかさっぱりだからな。レイは大丈夫か?」
「分からない。全く理解できないことが起きたから」
「なんだそりゃ」
ゲイルに突っ込まれるほど、妙な会話なのは自覚していた。
でもそれが事実なのだから仕方がない。
「私が見る限り、レイは平気そうだぞ」
「僕が見る限り、リンも無事みたい」
よし、なら問題はないか。
リンが立ち上がってぬいぐるみを抱える。
「所で何でぬいぐるみがあるんだ?」
「これはミミルのなんだって」
「へえ」
グニグニと顔を変形して見せると、そこにワタワタとやってきたミミルが、リンに縋ってくる。
「あの、その子達は結構気分屋なので、そんなにされると怒るかも」
「そっか。悪かった」
というとぬいぐるみはミミルの元に帰ってくる、と思いきや直ぐに脱走して、森に逃げ出した。
「え!? あ!? 待って!」
またワタワタと追いかけるミミルだけど、二兎追うものは一兎も得ずというように、ぬいぐるみ二体を一人で追うのは無理な話だった。
小さなぬいぐるみに翻弄されて、木の周りを回ったり、頭の上に乗ったぬいぐるみを捕まえようと自分の頭を叩いたり散々な目に遭っている。
何となく、気分屋というよりは構って欲しい子供の様な印象で、笑ってしまう。
「さて、僕達の子供を助けるって役目は終わったね」
「ああ、迷子を助けるのは完了したな」
僕達は顔を見合わせ、頷く。
「「じゃあ逃げよう」」
「おい何でそうなる?」
ゲイルは疑問を呈するけど、何でと言われても当たり前でしょ、としか言いようがない。
だって見て欲しい。この惨劇を。
森は破壊されつくして、多分その時の爆音は村にも届いたはずだ。
であるなら僕達の追手の耳にも届いているかも、と思うべきで。
「逃げ一択だね」
「ああ、二者択一にもならねえな」
「と言う訳でゲイルは子供をよろしく」
「おい待て! こっちは話が」
ゲイルの言葉を聞かずに、僕はリンの背中に乗る。と、子供をずっと警護していた木衛門も魔石を回収して僕の肩に乗った。
「じゃあさよなら!」
それだけ言って、僕達はスタコラとその場を後にしたのだった。
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