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ユーラーティの綻び(ほころび)
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頭が朦朧もうろうとする。
うっすらぼんやりとしたモヤのようなものが晴れてくると見知らぬ天井が姿を現した。
いつの間にか横たえられていた私は、身体がだる重い感覚に襲われてなかなか身体を起こすことができない。
耳をすませると、静か過ぎてキーンと一本線の入ったような音が響く。
目を瞬またたかせると、やはりここは私の知らない場所のようだ。
ええっと。あの時の状況を思い出す……。
クラーヴィオが馬車の中から飛び出して、襲いかかってくる敵に応戦していた。
剣戟の音は凄まじく響いていたが馬車の中に何かが投げ込まれ、白い煙が馬車の中に拡がった。その臭いを嗅いでしまい、誰かに抱きかかえられ、意識が遠くなって……
ここにいる。
ああ。私は手はず通り、敵の手に落ちたのか。
でも別に縛られている訳でもないし、ただ、あのわけのわからない臭いのせいで意識を失ってしまっていて、ここがどこかわからない。
天井は、張り巡らされて組み合わされた板のようだから人工的なものだ。
今寝かされているのは、クッション良いところを見るとベッドらしい。
見える範囲で見てみても、木目の柱があるし、普通の部屋のように見えるが、王都で使っている
クラーヴィオの屋敷の部屋じゃない。
ゆっくりと身体を起こしてみる。
カーテンの向こうの窓は板が打ち付けられていて外に出ることができないようにされている。
見渡すと、ドアがある。ベッドの横に置かれたテーブルには水差しが置かれていて椅子が一脚。
家具らしい家具はそれだけの、殺風景な部屋だ。
身体を起こして自分の衣類を確認する。特に取り上げられたものは無いようで、
腰に下がった、サントル園長からもらった巾着もそのまま。
武器になるように見えるものを持ってなかったせいかもしれない。
なんにも取り上げられなかったのは奇跡に近いことなのかも。助かった!
立ち上がってみるが、モヤが晴れたせいか特に違和感はないように感じる。
そっと、ドアに耳を当てて外の音が聞こえないか試してみるが、今のところ
何の音も聞こえない。ドアに近づく。慎重に、慎重に……。
ドアノブを音を立てないように回してみるが、やはり鍵はかかっていた。
ここはどこなんだろう?
私ひとり閉じ込められてるのかなぁ?なんとか外に出る方法を考えてみよう。
ふと、サントル園長に貰った巾着を思いだし、中に入っている書き付けを取り出した。
巾着自体、気にされていなかったのか、小娘ひとりで何ができるかと油断されているせいか。
なんにしても手付かずなのはありがたい。
なになに……。
「この巾着に入っているものは、あんたの使い方次第で用途はいくつもあるはずだ」
そして、使用方法や取り扱いが簡単に説明してあった。
巾着の中から、水に濡らすと光る苔の球を取り出した。
丁度テーブルに水差しもあることだし、天井に潜り込めないか試すことにした。
テーブルに椅子を乗せて天井の板をどこか外せないか試してみる。
しっかりとはめ込まれていてなかなか外せそうにない。
困っているとかすかに複数の足音がする。
慌ててテーブルと椅子を元に戻し巾着を腰につけてベッドに横たわる。
息を潜め、耳をそばだてて様子を伺う。
すると、足音はドアの前で止まり、がちゃりと音を立ててドアノブが回る。
ドアが開くのと同時に目をつぶり寝たふりをする。
心臓がうるさいほどに早鐘を打つ。この鼓動に気付かれませんように!!祈りつつ、寝たふりをする私にお構いなしに入ってきた3人組は私を見つめる(ような気がする)
「ここに、連れてきた薬草師がいるんですかぁ?あのタヌキ婆がぁ太鼓判っていう?」
苛立たしげに舌打ちをしたその女。肩までに切り揃えた黒髪、投げやりな態度で
ドゥーラを見つめる。
「ふん。こんな田舎丸出しの小娘を~彼がわざわざ指示して攫わせたって?間違いじゃないの?」
不愉快を隠そうともせず音がするほどため息をつく。
「アダラ様、そろそろ行きませんと……あの方に知れますと少しまずいのでは?」
「そうねぇ。どんな人間か見に来たけどぉ、この私がぁ足を運んでるのにぃ起きないなんて……なんて図々しい女なのかしらぁ。っていうかぁ、生きてるんですかぁ?」
この口調、多分王都にひとりしか居ないだろう。薬草園の前で部下を罵倒していたユーラーティの副司祭長のアダラっていう人だろう。
「生きているでしょう。オルディネ様が人殺しまではもみ消せないと言われていましたし」
「オルディネちゃんはぁ、ちょっと頭が固いわねぇ。ちょっと手が滑りましたぁで済む話も面倒くさい方に話を進めるのよねぇ。ちょっと甘やかしすぎたかしらぁ?」
獰猛な猛禽類のような瞳で思案している様子に、部下の男どもは自分たちの意見を飲み込む。
そして、部屋に入ってきた時と同様にけたたましく去っていった。
……慌てていたのか鍵をかけるのを忘れて。
うっすらぼんやりとしたモヤのようなものが晴れてくると見知らぬ天井が姿を現した。
いつの間にか横たえられていた私は、身体がだる重い感覚に襲われてなかなか身体を起こすことができない。
耳をすませると、静か過ぎてキーンと一本線の入ったような音が響く。
目を瞬またたかせると、やはりここは私の知らない場所のようだ。
ええっと。あの時の状況を思い出す……。
クラーヴィオが馬車の中から飛び出して、襲いかかってくる敵に応戦していた。
剣戟の音は凄まじく響いていたが馬車の中に何かが投げ込まれ、白い煙が馬車の中に拡がった。その臭いを嗅いでしまい、誰かに抱きかかえられ、意識が遠くなって……
ここにいる。
ああ。私は手はず通り、敵の手に落ちたのか。
でも別に縛られている訳でもないし、ただ、あのわけのわからない臭いのせいで意識を失ってしまっていて、ここがどこかわからない。
天井は、張り巡らされて組み合わされた板のようだから人工的なものだ。
今寝かされているのは、クッション良いところを見るとベッドらしい。
見える範囲で見てみても、木目の柱があるし、普通の部屋のように見えるが、王都で使っている
クラーヴィオの屋敷の部屋じゃない。
ゆっくりと身体を起こしてみる。
カーテンの向こうの窓は板が打ち付けられていて外に出ることができないようにされている。
見渡すと、ドアがある。ベッドの横に置かれたテーブルには水差しが置かれていて椅子が一脚。
家具らしい家具はそれだけの、殺風景な部屋だ。
身体を起こして自分の衣類を確認する。特に取り上げられたものは無いようで、
腰に下がった、サントル園長からもらった巾着もそのまま。
武器になるように見えるものを持ってなかったせいかもしれない。
なんにも取り上げられなかったのは奇跡に近いことなのかも。助かった!
立ち上がってみるが、モヤが晴れたせいか特に違和感はないように感じる。
そっと、ドアに耳を当てて外の音が聞こえないか試してみるが、今のところ
何の音も聞こえない。ドアに近づく。慎重に、慎重に……。
ドアノブを音を立てないように回してみるが、やはり鍵はかかっていた。
ここはどこなんだろう?
私ひとり閉じ込められてるのかなぁ?なんとか外に出る方法を考えてみよう。
ふと、サントル園長に貰った巾着を思いだし、中に入っている書き付けを取り出した。
巾着自体、気にされていなかったのか、小娘ひとりで何ができるかと油断されているせいか。
なんにしても手付かずなのはありがたい。
なになに……。
「この巾着に入っているものは、あんたの使い方次第で用途はいくつもあるはずだ」
そして、使用方法や取り扱いが簡単に説明してあった。
巾着の中から、水に濡らすと光る苔の球を取り出した。
丁度テーブルに水差しもあることだし、天井に潜り込めないか試すことにした。
テーブルに椅子を乗せて天井の板をどこか外せないか試してみる。
しっかりとはめ込まれていてなかなか外せそうにない。
困っているとかすかに複数の足音がする。
慌ててテーブルと椅子を元に戻し巾着を腰につけてベッドに横たわる。
息を潜め、耳をそばだてて様子を伺う。
すると、足音はドアの前で止まり、がちゃりと音を立ててドアノブが回る。
ドアが開くのと同時に目をつぶり寝たふりをする。
心臓がうるさいほどに早鐘を打つ。この鼓動に気付かれませんように!!祈りつつ、寝たふりをする私にお構いなしに入ってきた3人組は私を見つめる(ような気がする)
「ここに、連れてきた薬草師がいるんですかぁ?あのタヌキ婆がぁ太鼓判っていう?」
苛立たしげに舌打ちをしたその女。肩までに切り揃えた黒髪、投げやりな態度で
ドゥーラを見つめる。
「ふん。こんな田舎丸出しの小娘を~彼がわざわざ指示して攫わせたって?間違いじゃないの?」
不愉快を隠そうともせず音がするほどため息をつく。
「アダラ様、そろそろ行きませんと……あの方に知れますと少しまずいのでは?」
「そうねぇ。どんな人間か見に来たけどぉ、この私がぁ足を運んでるのにぃ起きないなんて……なんて図々しい女なのかしらぁ。っていうかぁ、生きてるんですかぁ?」
この口調、多分王都にひとりしか居ないだろう。薬草園の前で部下を罵倒していたユーラーティの副司祭長のアダラっていう人だろう。
「生きているでしょう。オルディネ様が人殺しまではもみ消せないと言われていましたし」
「オルディネちゃんはぁ、ちょっと頭が固いわねぇ。ちょっと手が滑りましたぁで済む話も面倒くさい方に話を進めるのよねぇ。ちょっと甘やかしすぎたかしらぁ?」
獰猛な猛禽類のような瞳で思案している様子に、部下の男どもは自分たちの意見を飲み込む。
そして、部屋に入ってきた時と同様にけたたましく去っていった。
……慌てていたのか鍵をかけるのを忘れて。
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