ヘタレ女の料理帖

津崎鈴子

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星に願いを7

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結婚式まであと2日。ウエディングシューズ以外の準備は出来ていた。

必死に電話帳片手に靴屋さんに電話を掛けるけどそもそもウエディングシューズの取り扱いがない。
大半が取り寄せしましょうか、一週間かかりますがという返事。ほぼ全滅した。

いい方法がないかなぁと頭を悩ませていると、マサキさんからメールが届いた。

なんだろう、とメールを読むと新婦さんの靴のサイズを教えてってことだった。
マサキさんも探してくれるのかなぁ。

思い切って電話をかけることにした。

【マサキさん、メール見ました。どうしました?】
【ああ、ユキちゃん、実はね、新婦さんに試してほしい靴があるんだけど】

どうも、マサキさんのところに、靴屋ゲンさんの奥さんがやってきて新婦さんの靴のサイズを聞かれたらしい。でも今から取り掛かっても間に合わないよねぇ?

【とにかく、明日朝一番で新婦さんに靴屋さんに来てくれるように連絡しといて】

少し慌てていたみたいだけど、さっそく新婦さんに連絡して、朝一番に商店街のゲンさんの靴屋さんに来てくれるように頼んだら、すぐに来てくれることになった。

☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・

翌日、ミキちゃんを学校に送り出してすぐに新婦さんは来てくれた。

ゲンさんの靴屋さんに案内するけど、新婦さんちょっと不安げな顔をしていた。

靴屋の奥さんがすぐに出てきてくれて、椅子を出して新婦さんを座らせると、靴を脱いで待っててね、といい奥から白い箱を出してきた。

箱を開けると、そこには輝くような細かなスワロフスキーを張りめぐらせたヒールの靴、ウエディングシューズが入っていた。

正直すごく驚いた。まるでおとぎ話のガラスの靴がそこにあったから。朝日を受けて光り輝く様子は、女の子の夢を形にしたかのような素敵な光景だった。

私が思うのと同じように新婦さんも思ったのだろう。ふたりともしばらく靴に目を奪われて何も言えずにいた。ゲンさんの奥さんが履いてみてくださいなって声をかけてくれるまで何もできずにいた。

新婦さんは、その靴に恐る恐る足を入れる。

サイズは文句なくぴったり。まるで新婦さんの為に誂えたかのような靴だった。

そして、履いたシルエットも新婦さんの足を引き立てるような職人ならではの仕上がりだった。


「これは?」

あまりにも素敵な靴に言葉を失う新婦さんの横で目に涙をためながらその靴を見ている奥さんに声をかける。すると、奥さん、胸いっぱいになったのかポツリポツリと話を始めた。

実は、この靴は娘さんの結婚式の為に作ったんだそうで、昔からおとぎ話のお姫様のような素敵な靴を履いてお嫁に行きたいと言っていたそうだ。

ゲンさんは、紳士物専門だからなぁといいつつ、世界で一人だけ、娘の為だけに特別な靴を一足だけ作ったんだそうだ。しかし、6年前、結婚式目前にして娘さんとその婚約者は交通事故でこの世を去ってしまったという。本来であればこの靴は娘さんと共に棺に納める予定になっていたのだけどどうしても娘を手放したくないと、ゲンさんが手元に大切においていたそうだ。

 奥さんは、娘が亡くなってもうすぐ7回忌がやってくるから、困っている人のために使った方が供養になるんじゃないかってゲンさんに相談してマサキさんに連絡してくれたそうだ。

「結婚前に亡くなった娘の為のものだけど、縁起が悪いっていうのなら、別のを探してくれていいよ」
そう、奥さんは言うけど、新婦さん、その話を聞いてますます泣きじゃくり、私が娘さんの分も歩いていいですか?と奥さんの手を取った。奥さんはその言葉に有難う、と泣いていた。

すべての準備が整って、明日は本番の結婚式。

上手くいくように頑張ろう。
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