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第一巻 第一章 クラシックの世界からやって来た!
第五話 ヴァンパイアちゃん・アリア
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◆◆◆◆◆◆
「はぁ、はぁ」
「何よリュート。男の子だってのに体力は無いの? これくらいの距離を走っただけでゼーゼー言って、だらしないったら無いわ」
「う、久しぶりに走ったんだよ! て言うかカノン! 純銀ブレードっての振り回しながら走るな! 危ないだろうが!」
「仕方ないでしょ、アリアが『血線』をそこら中に張り巡らせたから、切りながらじゃ無いと逃げられないの!」
「は? けっせん?」
ここは大学の屋上、当然だが初めて来た。
見下ろすと、生徒や先生たちが騒いでいて、頻りに俺たちの名前を呼んでる。
……くそ、これじゃまるで俺たちはお尋ね者じゃねぇか。
「そっか、どうやらリュートにはアリアの血線は見えてなかったみたいね。血線ってのはね、自分の血液で作り出した謂わばワイヤーみたいなものよ。『対象物だけを切る鋭い刃』って考えて。生徒達は切れないけど、私だけは切れるワイヤーね。血線は、毛細血管ほど細い糸だから、リュートみたいな一般人には見えないのよ」
「そんなものがあったのか。ちなみに、アリアの必殺技って感じか?」
「そゆこと。血線はね、あの子の種族特有の魔力なのよ。ほら、リュートの左足に巻き付いてるのもアリアのやつよ」
そう言って、カノンは俺の左足を指差す。
俺はしゃがんで目を凝らして見るものの、それでも俺には見える事はなかった。
「見えんけど、そんなに細いもので俺は足を引っ張られてたって事か?」
「そうよ。アリアの種族であるヴァンパイア種は自分の血を固めて、こよって糸を作って発射できるのよ。他にも、血線で造形物やお城を作ったりもしてるらしいわ。まぁ、血線を作り出せるのは極一部の眷属だけらしいんだけどね」
「へぇ。じゃ、アリアって子は最強ヴァンパイアの眷属なんだな?」
「んー、そこまでは知らない。私もアリアが血線を作り出せる事は初めて知ったし」
「そ、そうなのか。まぁ、いいや。とりあえず足に絡みついた血線はどうやって取ればいい?」
「足、出して」
「おう」
俺はカノンに向けて左足を出すと、彼女は純銀ブレードをスッと振った。
「今、血線を切ったのか?」
「切ったわ。もう大丈夫」
「へえ。なんだかんだ血線って結構簡単に切れるもんなんだな」
「切ったと言うか、溶かしてるって感じ。血線はね、どんな金属よりも頑丈に出来てるの。鉄はもちろん、ダイヤモンドや合成金属でも切れない。だけど、純銀だけは刃を通すのよ。ヴァンパイア種は純銀が弱点だからね」
「そうか。とりま、ありがとう」
俺は立ち上がって軽く足踏みをしてみると、さっきまで何かに縛り付けられていたような感触は脹脛から無くなり、少しだけ解放感を得ることができた。
「……なんかすまない。俺が不甲斐ないばっかりに手、怪我してるだろ?」
俺はカノンの手を取る。
傷だらけだ。
走りながら血線を切ってたから、何回かそれが引っかかって手を切ったのだろう。
「気にしなくていいわ」
そう言って、カノンは右手に負った無数の切り傷を左手で覆った。
見るからに痛そうで、俺は我慢できず、
「待ってろ、ハンカチを取り出す! 確か、財布の中にも絆創膏があった気が」
俺はポケットに入れていたハンカチをカノンに手渡し、財布の中身を眺めるが、絆創膏がない。
絆創膏、そう言えば今日の朝に足の爪を深爪しちまって、そこに貼ったんだっけ……?
「だ、大丈夫だからリュート! こんくらいの傷なら私でも治せるわよ!」
カノンはそう言って俺の助けを拒むと、左手で右手を覆ってギュッと力を込めた!
すると左手は急に光り始め、眩い閃光が俺の目を眩ませた!!
「っ!」
そして数秒間瞬きを繰り返して彼女を視界に入れると、そこにはもう傷だらけだった手を持つ少女は居なかった。
「魔法使えないんじゃなかったのか?」
「普通は使えないんだけど、なんか使える様になってた」
「なんじゃそりゃ。魔力が回復したってか?」
「そうよ。普通は魔力を含む食べ物を食べると回復するんだけど……なんでだろ」
しかしながら、一体何が起こっているのだろうか?
俺と子供を作るために、何人かの王女が異世界から来て、俺は攫われそうになりーー。
よくよく考えれば、ハーレムじゃねぇか!
夢にまでみた、異世界転生のハーレムものの展開だ!
うひょー! なんかテンション上がってきた!
「ハンカチありがとう。血塗れになっちゃった」
「うえ、ばっちぃ」
「な、なによ! そもそもこのハンカチ自体が汚かったのよ! うわ、なんか臭い!」
「冗談だって。ほら、返して」
「冗談じゃないわよまったく。レディに対しての口答えに気をつけなさい!」
俺はカチンときた。
「あ、カノン。そういえば、このハンカチでさっき鼻をかんだから」
「は?! 嘘でしょ!?」
「本当だよー、あと2週間洗ってない」
俺はくだらない冗談を言って仕返しをしてやった。
ざまあみろ、一瞬で顔色が青くなりやがって。
なんだよ、結構反応はいいんだな。
「そそ、それってメチャクチャ汚くない……?」
「まぁ、雑菌だらけだわな」
「……!」
カノンは俺のハンカチを人差し指と親指で摘んで出来るだけ遠くになるように構えた。
ふふっ、馬鹿な奴め、それは俺が一番のお気に入りのブランド物のハンカチだ!
バイトの初給料で買った物なんだ、汚く扱うわけないだろう!
と、彼女が持っているのはブランド物のハンカチだと気付く頃かと腕を組んで待っていると、カノンは人差し指と親指のはさみをやめ、ヒラリヒラリと高級ハンカチを空へと舞わせた。
「えいっ!!」
そして、ハンカチは音を立てて桜の花びらのように細かくなって空へと消えていった。
宛ら花火、細かく燃えて、空を踊るようにして消えていった……。
え?
「どぅぉぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「え、なによリュート」
俺は散っていく白いハンカチを手で掻き集めてギュッと握ったが、手のひらの上には真っ黒に焦げてパラパラと砂になっていく粒子しか無かった。
「お! カノン! ハンカチをぶっ飛ばす奴があるかよ!」
「何よ、汚いハンカチを渡してきたリュートがいけないんでしょ、汚物は消毒よ、ったく」
「汚物は消毒って! これじゃ『消毒』じゃなくて『焼却』だろ!」
「同じような物よ、ふん!」
あろうことか、俺の高級ハンケチーフを魔法と粉々にしやがった!
なんかうわ、その、うわぁ。
「弁償だからな! ばかやろう!」
「べーだ!」
こんにゃろう。
下手にでてりゃあ、調子に乗りやがって!
「リュートって結構優しいのね」
「んだよ急に」
「いや、叩かれるかなって」
「叩くわけねぇだろ! 女の子に手をあげたら男として終わりだからな」
「そう。紳士的なのねそんな顔して」
「そんな顔ってどんな顔だよ!」
カノンはつんとして、腕を組んでそっぽを向く。
カノンなりの感謝の表しなのだろうか。
ほんと、素直じゃないやつ。
「俺だって感謝はしてる」
「え?」
「あれ、あれだよ。確かに、カノンのせいで大学生活は完全にぶっ壊れたけど、大学デビューはできたわけだし。俺の名前が炎上商法で売れたと思えばどーにかなるし」
「あらそう」
カノンはつんとしながら、髪の毛をいじっている。
多分だけど、少なからず俺に引け目は感じているだろう。
俺はもう一般人扱いされない。
美女に告白されるわ、学校を破壊した張本人になるわで。
「私が来たせいで、人生終わったって顔してるけど?」
「そりゃそうだ。まぁ、これもまた楽しいと思いながらやっていくさ」
「リュート……。ふ、ふん! そんなキザに振る舞ったって、童貞感は抜けないわね!」
「何を!」
「あははは! リュートって本当にからかいがいがある!」
「んだよったく」
なんか、ガラにも無しに恥ずかしくなった。
ただ恥ずかしいって言うか、なんか初めて女の子と話して笑えた気がしたからだ。
カノンとは、実は気が合うんじゃないか?
普段はツンツンしてるけど、デレるとまた可愛いところを見せる。
俺はどこかしらで、そう言う女性を求めていたのだろうか?
「なぁカノン。その」
ーー俺の左足に強い力を感じたと思ったら、俺の視界がグルングルンと回る!
気づけば、俺は宙吊りになり、身動きがまったく取れない!
「カノン!」
「リュート!」
「あらあら、カノン。隙だらけすぎて、リュート様を簡単に捕まえられましたわ!」
俺の隣から、突然アリアが現れた!
まるで、糸が集まって毛玉になる様に!
「あ、アリア!? どうしてあんたがここに居んのよ! 生徒の記憶を消去してたんじゃないの!?」
「おほほほほ。記憶など、あとで消せばいいことですわ!」
「あんた、本当にバッカじゃないの!?」
「バカはあなたですの! どうするんですのあの大穴! 結界も張らずに破壊するとかアホですのよど畜生!」
アリアの悪態、それもうお嬢様感全くないから!
てか、すでに両足は全く動かない状態だ!
俺には見えないが、おそらく足に血線が絡まってる!
「おいカノン! 俺はどうしたら良いんだ!」
「ちょ、私だってなんの用意もしてないわよ! まさか屋上の入り口から来ないなんて思わないもの!」
「おっほっほっほ! 壁を蔦って登るなど容易いんですのよ! オツムが足りないのを恨むんですのね!」
そう言ってカノンはあたふたとベンチに置いていた純銀のサーベルを取りに行くが、それではもう間に合うはずもなく!
「それではカノン、サヨナラですわぁ~!」
「ちょ、アリア! ここから飛び降りる気かよちょっと、ぐわぁぁぁぁ!」
アリアは俺を屋上から突き落とす!
それに続き、彼女も飛び降りて来る!
「行きましょうリュート様! 愛の巣に!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「リュートぉぉぉ!!」
カノンの声は遠く、徐々に消えていった。
そして、地面へと向かうにつれ、俺は吐き出すような恐怖と脱力感に襲われ、スッと目を閉じた。
こんなの、初めて。
俺は、人生で初めて気絶をすることになった。
はぁ……なんなんだよ、もう。
つづく。
「はぁ、はぁ」
「何よリュート。男の子だってのに体力は無いの? これくらいの距離を走っただけでゼーゼー言って、だらしないったら無いわ」
「う、久しぶりに走ったんだよ! て言うかカノン! 純銀ブレードっての振り回しながら走るな! 危ないだろうが!」
「仕方ないでしょ、アリアが『血線』をそこら中に張り巡らせたから、切りながらじゃ無いと逃げられないの!」
「は? けっせん?」
ここは大学の屋上、当然だが初めて来た。
見下ろすと、生徒や先生たちが騒いでいて、頻りに俺たちの名前を呼んでる。
……くそ、これじゃまるで俺たちはお尋ね者じゃねぇか。
「そっか、どうやらリュートにはアリアの血線は見えてなかったみたいね。血線ってのはね、自分の血液で作り出した謂わばワイヤーみたいなものよ。『対象物だけを切る鋭い刃』って考えて。生徒達は切れないけど、私だけは切れるワイヤーね。血線は、毛細血管ほど細い糸だから、リュートみたいな一般人には見えないのよ」
「そんなものがあったのか。ちなみに、アリアの必殺技って感じか?」
「そゆこと。血線はね、あの子の種族特有の魔力なのよ。ほら、リュートの左足に巻き付いてるのもアリアのやつよ」
そう言って、カノンは俺の左足を指差す。
俺はしゃがんで目を凝らして見るものの、それでも俺には見える事はなかった。
「見えんけど、そんなに細いもので俺は足を引っ張られてたって事か?」
「そうよ。アリアの種族であるヴァンパイア種は自分の血を固めて、こよって糸を作って発射できるのよ。他にも、血線で造形物やお城を作ったりもしてるらしいわ。まぁ、血線を作り出せるのは極一部の眷属だけらしいんだけどね」
「へぇ。じゃ、アリアって子は最強ヴァンパイアの眷属なんだな?」
「んー、そこまでは知らない。私もアリアが血線を作り出せる事は初めて知ったし」
「そ、そうなのか。まぁ、いいや。とりあえず足に絡みついた血線はどうやって取ればいい?」
「足、出して」
「おう」
俺はカノンに向けて左足を出すと、彼女は純銀ブレードをスッと振った。
「今、血線を切ったのか?」
「切ったわ。もう大丈夫」
「へえ。なんだかんだ血線って結構簡単に切れるもんなんだな」
「切ったと言うか、溶かしてるって感じ。血線はね、どんな金属よりも頑丈に出来てるの。鉄はもちろん、ダイヤモンドや合成金属でも切れない。だけど、純銀だけは刃を通すのよ。ヴァンパイア種は純銀が弱点だからね」
「そうか。とりま、ありがとう」
俺は立ち上がって軽く足踏みをしてみると、さっきまで何かに縛り付けられていたような感触は脹脛から無くなり、少しだけ解放感を得ることができた。
「……なんかすまない。俺が不甲斐ないばっかりに手、怪我してるだろ?」
俺はカノンの手を取る。
傷だらけだ。
走りながら血線を切ってたから、何回かそれが引っかかって手を切ったのだろう。
「気にしなくていいわ」
そう言って、カノンは右手に負った無数の切り傷を左手で覆った。
見るからに痛そうで、俺は我慢できず、
「待ってろ、ハンカチを取り出す! 確か、財布の中にも絆創膏があった気が」
俺はポケットに入れていたハンカチをカノンに手渡し、財布の中身を眺めるが、絆創膏がない。
絆創膏、そう言えば今日の朝に足の爪を深爪しちまって、そこに貼ったんだっけ……?
「だ、大丈夫だからリュート! こんくらいの傷なら私でも治せるわよ!」
カノンはそう言って俺の助けを拒むと、左手で右手を覆ってギュッと力を込めた!
すると左手は急に光り始め、眩い閃光が俺の目を眩ませた!!
「っ!」
そして数秒間瞬きを繰り返して彼女を視界に入れると、そこにはもう傷だらけだった手を持つ少女は居なかった。
「魔法使えないんじゃなかったのか?」
「普通は使えないんだけど、なんか使える様になってた」
「なんじゃそりゃ。魔力が回復したってか?」
「そうよ。普通は魔力を含む食べ物を食べると回復するんだけど……なんでだろ」
しかしながら、一体何が起こっているのだろうか?
俺と子供を作るために、何人かの王女が異世界から来て、俺は攫われそうになりーー。
よくよく考えれば、ハーレムじゃねぇか!
夢にまでみた、異世界転生のハーレムものの展開だ!
うひょー! なんかテンション上がってきた!
「ハンカチありがとう。血塗れになっちゃった」
「うえ、ばっちぃ」
「な、なによ! そもそもこのハンカチ自体が汚かったのよ! うわ、なんか臭い!」
「冗談だって。ほら、返して」
「冗談じゃないわよまったく。レディに対しての口答えに気をつけなさい!」
俺はカチンときた。
「あ、カノン。そういえば、このハンカチでさっき鼻をかんだから」
「は?! 嘘でしょ!?」
「本当だよー、あと2週間洗ってない」
俺はくだらない冗談を言って仕返しをしてやった。
ざまあみろ、一瞬で顔色が青くなりやがって。
なんだよ、結構反応はいいんだな。
「そそ、それってメチャクチャ汚くない……?」
「まぁ、雑菌だらけだわな」
「……!」
カノンは俺のハンカチを人差し指と親指で摘んで出来るだけ遠くになるように構えた。
ふふっ、馬鹿な奴め、それは俺が一番のお気に入りのブランド物のハンカチだ!
バイトの初給料で買った物なんだ、汚く扱うわけないだろう!
と、彼女が持っているのはブランド物のハンカチだと気付く頃かと腕を組んで待っていると、カノンは人差し指と親指のはさみをやめ、ヒラリヒラリと高級ハンカチを空へと舞わせた。
「えいっ!!」
そして、ハンカチは音を立てて桜の花びらのように細かくなって空へと消えていった。
宛ら花火、細かく燃えて、空を踊るようにして消えていった……。
え?
「どぅぉぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「え、なによリュート」
俺は散っていく白いハンカチを手で掻き集めてギュッと握ったが、手のひらの上には真っ黒に焦げてパラパラと砂になっていく粒子しか無かった。
「お! カノン! ハンカチをぶっ飛ばす奴があるかよ!」
「何よ、汚いハンカチを渡してきたリュートがいけないんでしょ、汚物は消毒よ、ったく」
「汚物は消毒って! これじゃ『消毒』じゃなくて『焼却』だろ!」
「同じような物よ、ふん!」
あろうことか、俺の高級ハンケチーフを魔法と粉々にしやがった!
なんかうわ、その、うわぁ。
「弁償だからな! ばかやろう!」
「べーだ!」
こんにゃろう。
下手にでてりゃあ、調子に乗りやがって!
「リュートって結構優しいのね」
「んだよ急に」
「いや、叩かれるかなって」
「叩くわけねぇだろ! 女の子に手をあげたら男として終わりだからな」
「そう。紳士的なのねそんな顔して」
「そんな顔ってどんな顔だよ!」
カノンはつんとして、腕を組んでそっぽを向く。
カノンなりの感謝の表しなのだろうか。
ほんと、素直じゃないやつ。
「俺だって感謝はしてる」
「え?」
「あれ、あれだよ。確かに、カノンのせいで大学生活は完全にぶっ壊れたけど、大学デビューはできたわけだし。俺の名前が炎上商法で売れたと思えばどーにかなるし」
「あらそう」
カノンはつんとしながら、髪の毛をいじっている。
多分だけど、少なからず俺に引け目は感じているだろう。
俺はもう一般人扱いされない。
美女に告白されるわ、学校を破壊した張本人になるわで。
「私が来たせいで、人生終わったって顔してるけど?」
「そりゃそうだ。まぁ、これもまた楽しいと思いながらやっていくさ」
「リュート……。ふ、ふん! そんなキザに振る舞ったって、童貞感は抜けないわね!」
「何を!」
「あははは! リュートって本当にからかいがいがある!」
「んだよったく」
なんか、ガラにも無しに恥ずかしくなった。
ただ恥ずかしいって言うか、なんか初めて女の子と話して笑えた気がしたからだ。
カノンとは、実は気が合うんじゃないか?
普段はツンツンしてるけど、デレるとまた可愛いところを見せる。
俺はどこかしらで、そう言う女性を求めていたのだろうか?
「なぁカノン。その」
ーー俺の左足に強い力を感じたと思ったら、俺の視界がグルングルンと回る!
気づけば、俺は宙吊りになり、身動きがまったく取れない!
「カノン!」
「リュート!」
「あらあら、カノン。隙だらけすぎて、リュート様を簡単に捕まえられましたわ!」
俺の隣から、突然アリアが現れた!
まるで、糸が集まって毛玉になる様に!
「あ、アリア!? どうしてあんたがここに居んのよ! 生徒の記憶を消去してたんじゃないの!?」
「おほほほほ。記憶など、あとで消せばいいことですわ!」
「あんた、本当にバッカじゃないの!?」
「バカはあなたですの! どうするんですのあの大穴! 結界も張らずに破壊するとかアホですのよど畜生!」
アリアの悪態、それもうお嬢様感全くないから!
てか、すでに両足は全く動かない状態だ!
俺には見えないが、おそらく足に血線が絡まってる!
「おいカノン! 俺はどうしたら良いんだ!」
「ちょ、私だってなんの用意もしてないわよ! まさか屋上の入り口から来ないなんて思わないもの!」
「おっほっほっほ! 壁を蔦って登るなど容易いんですのよ! オツムが足りないのを恨むんですのね!」
そう言ってカノンはあたふたとベンチに置いていた純銀のサーベルを取りに行くが、それではもう間に合うはずもなく!
「それではカノン、サヨナラですわぁ~!」
「ちょ、アリア! ここから飛び降りる気かよちょっと、ぐわぁぁぁぁ!」
アリアは俺を屋上から突き落とす!
それに続き、彼女も飛び降りて来る!
「行きましょうリュート様! 愛の巣に!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「リュートぉぉぉ!!」
カノンの声は遠く、徐々に消えていった。
そして、地面へと向かうにつれ、俺は吐き出すような恐怖と脱力感に襲われ、スッと目を閉じた。
こんなの、初めて。
俺は、人生で初めて気絶をすることになった。
はぁ……なんなんだよ、もう。
つづく。
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