転売勇者 ピカル

一澄

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 「過去」

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ピカル「ほ…ホンマに国が買い取れるんか!?」

驚きのあまり口から涎(よだれ)が垂れ手が痙攣しはじめる

ピカル「ふ…震えが止まらん…西野◯ナか…?…西野◯ナにワイはなってもうたんか?…」

しかし、セシリアはこの高額査定に喜ぶどころか俯(うつむ)いている。

ピカル「どうした?どうした?買取はせんのか?」

ピカルは金が関わると早漏の如く興奮するのだ

セシリア「…実はさ…今、お金…あんまり無いんだ…父から受け継いだこの店の経営を立て直したくて…ピカルの持ってるレア物…欲しかったんだけど…さすがに国を買い取るレベルだと…」

ピカル「も…もっと安く買い取ればええやん…ビルくらいの価値で買取とか…いやそれは安くなりすぎか…」

場が静まる中、ピカルは冷静になり呟く

ピカル「…なんで金が無いんや?」
セシリアは困った顔を浮かべている
セシリア「……うち貧乏だから……その……最近まで借金してたの……父の残したお店を潰さない為に……でもそれも限界が来てね……今日中に借金返済しないと店を手放す事になっちゃうんだよ……それに…」
ピカル「それに?…」
セシリアは深く息を吸い…ゆっくりと口を開いた
セシリア「父は借金が理由で自殺して…もう…一人だから…」

ピカルはセシリアの話を聞き目を見開き驚愕している
セシリアは悲しげな表情を浮かべながら小さく微笑み力無く話す
セシリア「……ごめんね……こんな話……聞きたくないよね……」
ピカルは話を聞き脳裏にふとある光景を思い出す。
それは雨の日…学校から帰りランドセルを玄関に放り投げるリビングにあるテレビゲームへ向かう途中怒号が聞こえた。
低い中年男性の掠れた声
「なんや、お前、お前…銀行をなんやと思ってんねん!!」
そして、父の弱々しい声が聞こえた
「許して下さいお願いします。銀行への借金は必ず返します…妻と子供がいるんです!」
会話は家の庭から聞こえる
ピカルは二人の会話を盗み聞きしに玄関から様子を見た。
雨が激しくなる中、ピカルは、父親の悩んだ表情に胸が締め付けられる。
銀行員が借金の返済を迫る中、父親はどんどん情けなくなっていく。
しかし、男は
「知らんわ!お前の事情なんぞ!」
そう怒鳴ると何か重い物を床に叩きつける音が響き渡る その後、男の荒い鼻息だけが聞こえると足音と共に去って行く _ピカルは、いつの間にか涙が頬を伝わっていた
ピカルは思い出すと歯軋りする程に強く噛み締める
ピカル「な、気分変えよや…そや…外行こうや…!わい…まだここきて日が浅いしな!」


セシリア「えっ……あぁ……うん……いいけど……」

二人は質屋から出て歩き始めた
セシリア「どこいくの?」

ピカル「とりあえず、街を見て回ろうや!」

セシリア「わかった……あっそうだ……私の名前言ってなかったね……私はセシリアよろしくね」

ピカル「おう……よろしゅうな……せや、わいの名前はピカルって言うねん……」

ピカルとセシリアは街の大通りに出た。
そこには様々な露店が並んでいる。

ピカル「へぇ~色々あるんやなぁ~……」

ピカルは感心しながら周りを見る。

すると、セシリアはある店の前で立ち止まった。
そこはアクセサリーショップだった。

セシリア「ねぇ……ピカル見てこれ……」

ピカルは覗き込むように見ると綺麗に輝く宝石がついたネックレスがあった。 

ピカル「これは凄いな……」

セシリア「いつか、つけたいな」

ピカルはセシリアを少し見て目をそらした。

ピカル(……この子、やっぱり女の子やな……)

ピカルは思い浮かべる。

セシリア『ありがとう!大切にするね!』

ピカル(いかんいかん……ワイには心に決めた人が……)

ピカルは頭を振り煩悩を払う ピカル「さ、さぁ……いこか……!」

セシリア「……ピカル?」

ピカル「どないしたんや?」

セシリア「なんか元気ないよ?」

ピカル「そんなことあらへんよ……ほら、行こか!」

時間が経ち…
蒼い光が差し込む店内に、男女が立ち並ぶ様子があった。

ピカル「なんで着替えなあかんねん」

セシリア「なんでってその変な格好やめてほしいの!」

ピカル「ワイは金ないねんで!」

セシリア「それがあるじゃん」

セシリアはピカルの胸ポケットにあるカードを指す

ピカル「ホンマなぁ…」


ピカルの目は、色彩の饗宴となって広がる衣類達を閲覧していた。慎重に選び抜かれた生地、緻密に作り込まれた縫製、繊細に描かれたデザイン。ピカルは独特のセンスと洗練された感性を持ちながら、一着一着を手に取りながら自身を昇華させていく。

セシリアもまた、芸術家のような眼差しで周囲を見渡していた。
鮮やかな色彩のトップス、繊細なレースが飾られたスカート、豪華な装飾が施されたアクセサリー。
しかし、セシリアは名声や華やかさには興味を示さず、自身が響くものを心に刻もうとしていた。

時間が経つにつれ、ピカルとセシリアの手には選び抜かれた一着が握られていた。

ピカル&セシリア「これにしよ!」

ピカルは、心の一曲が響く様な鮮やかな一着に身を包みながら、共に店を後にした。彼らの背中からも、芸術としてのファッションが香り立つのだった。

いつの間にか景色は夜空に変わり星が二人を照らす_
二人は丘の上に座り込み夜景を眺めていた。

セシリア「綺麗だね……」

ピカル「せやな……」

ピカルは横目でセシリアを見るとその瞳は輝きに満ちている。
その姿はとても美しく見えた。

ピカル(……この子は今どんな気持ちなんやろ?)

ピカル「なぁ……聞いてもええか?」

セシリア「何?ピカル」

ピカル「さっきの話やねんけど……」

セシリア「さっきの……お父さんの事かな?」

ピカル「そうや…ワイもな…昔、貧乏で…それで親父おらんのや…」

セシリアは黙って話を聞いていた。

ピカル「ワイの親父も同じや借金作ってなんも言わずに出ていった」

セシリアは何も言えずただ俯いていた。
ピカルはセシリアの方へ向くと決心した顔で言い放つ

ピカル「な、ワイにもセシリアの金儲け手伝わさせてや」

セシリアはその言葉を聞き驚くと同時に目に涙を浮かべた セシリアの頬に一筋の光が伝わり落ちる セシリアは涙を流しながら嬉しそうな表情をしていた。
セシリアはピカルの手を強く握る セシリアの目から溢れ出る涙を止める事は出来ない。
セシリアは嗚咽混じりの声を出しながら話す。

セシリア「…でも明日なの…明日銀行からの借金を取り立てにアイツの部下がくるの…!」

ピカルはセシリアの手を握り返す

ピカル「アイツって誰や…!?」

風が吹き草木がざわめく セシリアの髪が揺れて輝く セシリアは静かに口を開く _
セシリアの声が小さく揺れながらも、彼女の口から出た言葉は明瞭であり、何度も抑えられた涙を呼ぶような重みがあった。

セシリア「トン…豚 正道(トン マサミチ)…タカノバンクの…常務取締役よ」

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