Ωの僕がお偉いさん

斜め上の意見

　偉そうにしてる人1人、困ってる人1人……2人だけで僕達の前に立ちはだかって、威張っていたのはサムスプリングの領主だった。

　此方は王様本人がいるため王家の…王の旗を揚げているんですけど。王の旗の前に立ちはだかるって…聞いた事もないよ。
　いや、これが両手を地面につけての懇願なら前例はあるから問題は少ないけど……。
　目の前の1人は両手を腰に足を肩幅に開いて、頭をグッとそらして、いばりん坊のポーズ。もう1人は地面見つめたっきり俯いてごめんなさいのポーズ。

「何用で進行を妨げる！」

　此方側の護衛の1人が初めに口を開いた。

「スサエナ領主のノエルだな？！貴様の企みを法廷に訴える！！その事を通告しに待っていた！
訴えを取り消して欲しければそれなりの誠意を見せろ！！3日以内に返事が無い場合、訴えに出る！」

　……何を？？
はい？僕の聞き間違いかなぁ？
困惑のあまり後ろのアーノルドの顔を見る。あ、真後ろだから見れない、どうしよう。こうしよう。

　仰け反ってアーノルドを見る。上下逆さまに見えてるけどまぁいいや。アーノルドも僕を見てるから目が合っちゃった。ニパッと笑うと顎で前を見ろとさす。

　そうでした。つい忘れちゃった。あぁ……睨んでる。やだなぁと考えているとローランドが馬を進めて僕達への視線を遮った。

「穏やかではないな。この一行の旗が見えてないのか？」

　ローランドが諭す。これで引いてくれるなら良いが、これで引くならこんな物言いはしないのでは？
案の定、フンッと鼻を鳴らすと品定めするかの様に頭の先からジロジロと見てくる。

「お付きのやつに用は無い！下がれ！私が用があるのはそこのスサエナ領主とグリフウッドの領主だけだ！」

………………はい？だ、だ、だれ、誰がお付き？！
いやいやいや……え？　　僕はスサエナ領主でアーノルドはグリフウッド領主。あの人の視線がお前だ！といっているので間違いはなさそう。ならばお付きは……父様とローランド？
　馬鹿なんじゃないか？あの人は…。　

　此方側の護衛も全員が旗をもう一度見て……ふんぞり返ってる人も見て……王様を確認。そうだよね、皆
おかしいと思うよね？だって王様の肖像画は貴族の家なら必ずあるし王家主催のパーティーでなら遠目でも王様を見る事だってあるはずだ。
　なのにお付きの人にしてしまうなんて、ちゃんと見てなかったのかな？

「ノエルと私を侮辱するのは何故だ！そもそも企みとは何を指して言っている。サムスプリング殿、この様な事をして法廷に訴えられるのは其方だとは思わぬのか！！」

　冷静に対応したアーノルドに少しキュンとしちゃったよ。だって、声には明らかに怒気があってα独特の威圧感があるのに僕に届いたのは何があっても守ってくれると思える暖かい感じしかなかったから。