Ωの僕がお偉いさん

街中

　とりあえずもっと他でも話を聞きたいからとその場を後にしてまた先に進む。
　お？珍しい事に多分あの人はαだろう。身なりは明らかに低所得者なんだけど、体付きはαだ。

「爺、あの人…」

　目だけをチラリとやって爺を呼べば、「爺は心得ております」とその人の所へ行く。話を聞かせてくれるかな？

「領主様にご挨拶致します。」

　跪いて両手を膝におき頭を下げる。一般人が初めて会う貴族に対する礼だ。……ということはやっぱり街人？

「お察しの通り私はαですが、父も母もβです。隔世遺伝ではないかと言われました。」

　話を聞いていくとαなのはわかっていても家の暮らしが貧しいため学校も途中で辞めたそうだ。体が丈夫なため肉体労働で稼いでいるらしいが、家族が多く追いつかないらしい。
　……うーん、せっかくのαがもったいない。しかしこんなケースがあるとは……なんとかしなきゃね。

　とりあえず職業斡旋所の無料勉強会に来るように説得した。職業斡旋の仕事の種類もそろそろ見直して複雑な職業も出してみよう。

　こういう家族の為にっていう人は一生懸命働いてくれそうだね……。
　あ、……さっそく……爺が目をつけたらしい。何というか、お気の毒様？爺に鍛えられると一流になれるから僕達は助かっているけど鍛えられる本人達は大変だろうな。

　さて次！今日来た本来の目的がまだだよー。
あそこはなんだ？〈フラワーパーク〉……ああ、お花屋さんか。

「待って！！」
「ああああ！！」
「ダメです！」
「爺やさーん！！」

　何？！僕が手を伸ばしたドアをあける前に護衛達にドアから引き離された。
……そして大声五月蝿い。

　さっきのαの人と別れて追いついてきた爺が何事ですかと聞くと護衛達は僕が開けようとしたドアを黙って指差した。

「ああ、そういう事ですか。皆さん誤解しているようですがノエル様は既に成人してらっしゃいますよ。それにアーノルド様という番がいらっしゃるのですから。…………大丈夫ですよ。」

　ちょっと！“誤解”って僕が未成年だと皆思っているわけ？大々的にパーティーしたじゃない。発情期だって……まぁそれはいいや。
　それより、未成年お断りの店ってこと？名前だけでわかるの？有名なお店なの？

「ノエル様は店の名前で花屋だと思われたのでは？
花屋でしたら店先も花であふれているでしょう？」

　……けっこう花いっぱいですけど。ああ、でもそうかリースやブーケが無いな…鉢に植わった花ばかり。
それに窓の中はレースカーテンがあって見えない。でも僕の感覚だと未成年お断りのお店ってもっと
“いかにも妖しいです！”って店構えだと思っていた。

　ん？お店の中がなんか騒がしいけど？
護衛の1人に見に行ってもらう。ドアを開けた直後に明らかに喧嘩中の怒鳴り声に思わずビクッとしてしまう。僕自身は怒鳴りつけられた事が無いから…あ、1回だけあったか？びっくりしちゃうよ。