Ωの僕がお偉いさん

類は友を呼ぶ

　部屋中が沈黙している……覚悟していた様な怒涛の質問責めや怒りの嵐はおきていない。
　しかし王を始め全員が難しい表情になっている。

「…では、今回の件は完全な逆恨みでは？」

「ローランド、それだけじゃ済まないよ。もう、こうなると反逆罪になるよ。だって前サムスプリング領主の罪状は最終的に父様…王が決めた。
それに不満を抱いての犯行となれば反逆行為となるからねえ。」

　ローランドが口火をきったところでノエルが客観的な答えを言う。2人でなければ……今は静かな部屋で言葉を発するのさえ怖ろしい。

「爺、前サムスプリング領主の今の動向を直ぐに調べて報告して。近衛兵には1刻半の休息後帰還の用意をさせて。王と王妃様の王都へご帰還だと。誘拐犯は王都へご帰還の際に引き連れて行かれるからその準備も。反逆行為が疑われてるから貴族であっても徒歩で、荷車の後ろに繋いで。貴族だからという配慮は上着、靴の着用と1刻毎の休息で水を与える事。これぐらいで十分だよ。」

　さっさと指示を出してこの後の事を決めてしまおう。じゃないと……大変だよ。

「いや、待て。せっかく来たのにもう帰るのは…」

　前サムスプリング領主への怒りで聞こえていないかと思ったけど、しっかり聞いていたらしい父様が命令を撤回しようとする。

「父様、心配して来て下さってありがとう。でも僕はこうして無事だったし、父様母様が2人揃って来てしまうと…ローランドも来てしまっていることだし。王都がカラになってるでしょう？駄目だよ。
　……僕が言われてしまうよ？」

　ちょっと卑怯な言い方だけど、僕が何と言われてしまうのかもわざと言わないけど…僕が貴族から悪く言われるのはわかるだろう。
　それに王都がカラなのは本当にいけない。今日中に戻れば“遠乗り”と誤魔化せるから…もう今日中はムリかな？でも狩猟といえば1泊分くらいは誤魔化せるから。

　この裁きは大事になりそうだし、この事を聞いた前サムスプリング領主がまた言いがかりをつけてくるかもしれない。なるべく今は穏やかに過ごしたい。
　
　……ああ、さっきからもう落ち着かない。理由は何かわからないけど、疲れているからかな。どうすれば良いのかはわかる。
『巣に戻りたい。』巣を思うともう戻りたくて仕方無くなった。

「母様、本当に申し訳無いのですが……ちょっと……巣に戻りたいのです。」

　さり気なくお腹に手を当てて、落ち着く場所にいたいとお願いする。……僕以外はαだから気づかないかもしれないけど、なんか…すごく居心地悪い。皆に囲まれても今まではこんな事なかったのにね？
　妊娠中のΩはけっこう巣に居ることが多い。理由はリラックスして過ごせるからだ。特に巣に何の力もないのはわかってるけど、なぜか全幅の信頼をよせてると言っても良い。

　うん…なるべくアーノルドの近くで落ち着こうとしてたけどムリだったよ。とにかく巣に行きたい！