Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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隼君は早いです

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 汽車の中での話し合いは続く。一刻の猶予も無いので優雅に車窓を楽しむなんてできない。本来なら海へ向かうこの汽車の窓からは近づいてくる海の景色が楽しめるのだが残念な事だ。それでも初めてグリフウッド行きの汽車に乗ったローランドは外を見たくてチラチラと目をやる。それでもこの事態を自分の母親が引き起こしている事とわかっているため外を楽しみたいとは言い出さずに我慢していた。

「そろそろ、昼食にいたしましょう。食事はこの中で食べておいた方が良いでしょうから。」

 もっともらしい言い訳でアーノルドはローランドに一番景色の良い場所は見せてあげようと食堂車の方へと移動した。

「兄上から乗り込む直前に送られてきた手紙がありました。食事中ですが読みますね。」

 本人では発車に間に合わないと思ったのだろう。なんとも勇ましく信頼されている侍女の1人が馬で駆けつけてきたのだ。しっかりとノエル自身からの手紙とわかるようにノエルの香りがする。これは番である自分にしかわからないが、わかるようにするためノエルがこの手紙にスリスリと体を擦り付けて匂いをつけたのかと思うと思わずニヤついてしまう。

「汽車での移動は如何ですか?この季節ニーデラの花が美しい事でしょう。2人が汽車に向かってから思いついたのですが、王都からの賓客達は警護の事から纏まっていただきたいので、王都からスサエナまで汽車。その先は川を利用してのクルーズにして宿泊先を迎賓館のみにしましょう。貴族向けに用意している観光用クルーズをそのまま利用し、初クルーズに王妃が乗船したという箔付けをいただいちゃいましょう。」

 読み終えると同時に2人とも同時にため息が出る。なんだかんだと言った所でノエルはやはり王妃の子だ。それに一瞬見過ごしそうになったが、“王妃”がお披露目に来るという情報も仕入れたらしい。実に優秀な情報ルートがあるものだ……爺だろうな。
 食事中に外を楽しむと影がさした。隼だ。一直線にグリフウッドに飛んでいる。到着と同時に手紙が待っていると知って無言の食事となった。

【アーノルド、ローランド汽車は如何でしたか?この手紙は隼と汽車の緊急連絡がどの程度違うかを知りたくて2人が出発した直後に館から飛ばしました。どちらがどの程度早かったですかね?】

 汽車の駅で渡されなかった手紙はグリフウッドの領主館で渡された。執事に聞くと自分達の到着の半刻前に到着しているという。やはり隼は優秀だ。自分達はもう出発準備ができていた汽車に飛び乗ったのだから本当ならもっと時間がかかる。緊急連絡は隼に任せるのが一番早い。確実性を持たせる意味で予備手段として汽車を使うのは有りだろうと返事を返した。

 まだグリフウッドについたばかり……先ずはこれから友人を呼び出しこの嵐に巻き込まなくては。それを聞いた執事はそっと友人等にエールを送った。
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