Ωの僕がお偉いさん

ローランドの報告

　兄上のお仕置きにトータを巻き込んで3日後、5000の兵を引き連れ国境に向かった。途中、飛行船部隊が上空を追い越していく。なぜか……当たり前か？皆手を降っている。
『おーい』
「おーい」
『上空はど～だ～？』
「快適だぞ～」

　出兵の隊列としておかしくないか？私の引き連れる兵も緊張感はあるが悲壮感？はない。そうだろうな……アドバイザーと参謀の人材からいって敵は知った途端に回れ右したくなると思う。
　自分達の後ろに掲げられている旗を見上げた。皇太子を現す旗を中心に紋様が似たような色ちがいのものが2枚並んでいる。いつもは海に靡くこの旗を陸で確認した敵はどう思うだろうか？
　オーバーキル……違った……いや、ある意味違わないか。頭に浮かんだこの言葉はいい得ていると感じた。


　国境までの道のりは快適……。感覚が間違ってるんじゃないのか？いや、合ってるよ。道は例のアスレチック施設のおかげでならされて通りやすい。兄上が施設建築のためにトロッコを一時的に轢いたらしいからその跡なのだろう。道々には小さいが商店や休憩所が数件固まってる場所も存在し、今回は通達によりそこで食事や寝泊まりができるようにされていた。おかげで鋭気は十分、兵士の不満もなく国境まで到着できた。

　到着後の現地報告は今までにないであろう詳細な報告が待っていた。なぜなら飛行船部隊の一部が絵文字を使ってフールフーガの鬼神がこちらにつき、最前線に出てきたとビラを撒いたからだ。それを見た敵側の者が保護を求めて情報と共に次々と来ていた。中には村丸ごと来たところもあり、目を剥いてしまった。
　
　到着後8日目に敵側の接近の知らせが届いた。素早く戦闘体勢を整え待っていると、山越えで疲労困憊の徒歩の兵士が現れた。
　……おかしいだろう。何故歩兵が先に現れた？
理由は簡単。脱走兵の一部だった。一応捕虜として身柄は拘束したが待遇に涙して喜ばれた。どんな行軍してきたのか非常に気になった。

　脱走兵の到着はそれから2回あった。全員で106名が逃げて来ていた。……多いな。この者達は例のアスレチック施設に送った。そこは娯楽施設としてもう一つの村の規模ができていたので寝泊まりができるからだ。報告では快適に過ごしているらしい。
　……やはり色々とおかしくないか？

　敵陣が現れたのは最後の脱走兵の到着から4刻ほど後の昼だった。さすがに2万の兵……迫力が違う。
こちらに気づき、陣を整えはじめていると報告が入る。どうやら魚鱗の陣形で来るようだ。デジレ様によれば森林や山で、2万の兵がいるのだから悪くはない陣形らしいが、それは普通の今までの戦の場合らしい。今回はこちらは飛行船部隊がいるのだから何にしろ陣形を整えた時点で悪手だそうだ。
　……そうだろうな。纏まった時点で標的にしやすいもの。

　楽勝……なのはわかっている。わかっているのだが……デジレ様、その……なんとかなりませんか？首もとのキスマーク！後ろから回る提督の腕！デジレ様の顔を撫でる指！提督の不敵な笑み！
……この戦……色々と突っ込みたい！！