Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

文字の大きさ
308 / 708

報告

しおりを挟む
 目の前には決して敵にしたくない2人がいた。よく持ち込んだと思うほど大きなソファーに体を埋めて肩を抱かれて満足そうに笑みを浮かべる参謀は非常に愉快そうに机上の地図を見ている。肩を抱いている正に鬼というべきアドバイザーもご機嫌だ。

「バカな奴らだ。何日も前から到着している私たちがなにもしてない筈ないのにな?」

 ……ええ、貴方の指示で敵陣の前方に落とし穴を掘ってありますよね。しかもなにやら兄上が牧場を守るために掘った豪を真似たといって落とし穴の中に水を入れてドロドロにしてますよね。幅もえげつないですよね?これは落とし穴ではなくて堀ですよね?これ、落ちたら自力であがれませんよね。前方の兵をここに落として後方は飛行船部隊が上から叩くと……。それから、そのポンプ部隊……それ……王都の各消防団から1つづつ出させたものですよね?

「こちらの損害は最小限に、敵側の損害は全滅に。と言うであろう?」

 至極ご機嫌にデジレ様が言うけど、そんなの初耳です。“全滅”ではなくて“最大限”なら納得しますけどね。

「ポンプ部隊は盾の外には出るなよ?さぁ、そろそろ彼方も準備が整ったようだ。」

 見ると真ん中から一騎が馬で走り出てくる。これも予測済みなので中央部分には馬一騎分の重みは堪えられるように作られているが、そこまでは来ないらしい。

『我こそはポーリシア帝国一の将軍、スワロー伯爵である!』
 ……知らない初耳だ。
『皇帝陛下の命により、卑劣なる者共を撃ちに参った!こちらの軍勢は2万を越える!』
 ……いいや、脱走兵が多いぞ?数えてみろ2万切ってる。
『直ぐ様降伏すれば皇帝陛下の慈悲の下、丁重に扱ってやろう!』
 ここで少し前進して此方を眺め……もう一度見てる。空を仰いでもう一度……。明らかに2つの旗を凝視してる。自軍の方を向いて……また此方を見て……おいおい、露骨に狼狽えるな。

「使者を出してやれ」
という提督の声にこちらから使者を出してやると、なにやら話し出した。そして……兜を外して剣を外して馬にのせ自軍に走らせると、将軍は単身でこちらに来た。

「……降伏する。」

 変わり身速っ!
馬に自分は降伏すると書いた紙を持たせたらしい。すごすごと去っていく後ろ姿に哀愁を感じる。なんだろう……この哀れみ。
 まぁそうだろうな。降伏した先の男は首筋にキスマークをつけ腰を抱かれ、いとおしげに髪を触られている。もう片方は使者に目もくれず片割れの恋人のみ見ていてどちらも自分に意識が向いていないのは明らかだったもの。
 おかげで使者は全ての訴えをローランドになげた。
 大丈夫ですよ。命の保証はありますし、捕虜の扱いも悪くはない筈です。故郷の地に帰るのは身代金の支払い後ですけどね?……こちらの扱いがよくて帰らないなんて事無いよね?ちょっと不安になる。

 そうこうしているうちにポンプ部隊の準備は整ったようだ。あれは飛行船部隊に矢を放とうとした兵に向けて放水されるものだ。え?水はどこから?私達の陣の後ろに流れる川の水をひいていますよ。
……ええ元は兄上の牧場がポンプの出所です。
しおりを挟む
感想 199

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

処理中です...