Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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いい加減に!

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「よさないか……セオ。もう始まる。」

「結果は知れている。こちらの方が大事だ。」

「我らは皇太子の保護者だ。」

「もう保護者が必要な年ではないだろう。」

「ここは戦場だぞ。」

「いかにも。血に飢える私を静めるのはそなただ。」


 ……目の毒。口から砂吐きそう。
この2人……さっきから目の前でイチャイチャと!!大きなソファーに押し倒されてシャツの前を開けられてキスをあちこちにおとされてようやくストップかけるんですか?!押し倒された時点でストップかけてくださいよ!それから人目を気にしてください!そこの提督のところの2人、陣幕を張ったら良いとかの問題じゃないから陣幕はしまって!!

 ……なんで“私が悪い”みたいな雰囲気になっている?違うだろう。私は絶対に間違っていない!提督、『横を共に走ってもらえぬからといって狭量だぞ』ではないです!私のどこが狭量なのですか!こんな最前線の作戦本部の中でイチャコラするのを止めるのが狭量なのですか?!

「うるさい。皇太子。ほら始めるようだ。こちらの合図を!!」

 デジレ様……何を“何も関係ありません”という体で指揮とってるんですか。本当に始まるようですから控えますけど、後でちゃんと抗議しますからね?!


 デジレ様の合図で狼煙が上がり飛行船部隊が動き出す。と同時に彼方の前進が始まり……騎馬隊のスピードが上がったところで地面に吸い込まれていった。
 ……おおお~。落ちる落ちる。結構止まれずに落ちるものだ。何頭かは落とし穴の端で踏みとどまるも後続の馬が止まれずに体当たりをくらい一緒に落ちていく。『引き返せ!』と声が上がる頃、頭上から“酢”が撒かれた。濃度の濃い酢は敵兵の目を潰し鼻を焼いて呼吸を困難にしてパニックに陥れていく。これで殆んどの敵兵は戦闘能力をなくした。後はこれでも立ち向かってくる貴族兵の相手をするだけで良い。
 ……来ない。……来ない。……何故?

「報告します!敵将は“酢”の直撃を受けて失神。彼方の衛生兵はこちらが潜り込ませていた者の活躍で機能しておらず、壊滅的です。」

「……では、次。視力を失った兵の中で貴族兵を中心に捕らえていけ。捕らえた者は川に浸けて臭いを取れ。」

 ……敵が哀れに思えてきた。なんとも情けない負けかただ。刃の一つも交わさずに、泥沼に落とされて負傷とか頭上から濃い酢をかけられて捕らえられるとか……国に知られたくないし、ましてや家族や恋人に知れたら情けなくて顔を会わせられない。βならまだしもαだったら……自分なら絶対嫌だ!
 でも、デジレ様の事だからこれで終わらないんだろうな。追い討ちかけるよこの人。あぁ可哀想に。

「そこで何をボサッとしている総大将。敵は2万だぞ。これくらいで全滅する筈無かろう。次を指示せよ。畳み掛けて立ち直れぬくらい叩け。それとも私が指示しようか?」

 いえいえいえ……私が指示します。せめて顔向けできる負けかたをさせてやりたい。

「飛行船部隊は半々に分かれて左右から矢を放て。一ヶ所に追い込み油を撒いた上で降伏勧告を。将校クラスをつき出せば火矢を仕掛けぬと言え。」

「大砲でもいいぞ。」

「そう、大砲を仕掛け……。
嫌、嫌々!提督、変な助言しないでくださいよ。せっかく穏便にしようとしてるんですから。」

「ハァ……面倒だ。全て吹っ飛ばせ。」

「ですから、デジレ様。もうちょっとまともな負けかたを……。」
 説得は大変そうだ。
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