310 / 708
戦勝報告
しおりを挟む
勝敗は1日で決した。油を撒いた直後の降伏勧告で敵側の一般兵はこぞって貴族兵をつきだしてきた。それはもう…「付きだせ」と言ったこちらが可哀想に思うほどぐるぐる巻きにされて付きだされた。
潜り込ませていたスパイの報告と一致するか調べていくと3人程少なかったが、すぐにどろどろの負傷兵の中から見つけ出せた。先に投降した将兵と合わせて貴族兵は全部で100名ちょっと。以外に少なく思える。しかも最前線に来た事から本当に重要な貴族は10名くらいなものだろう。捕虜として遇して身代金が届いた者は帰して行くのだが、今回はその交渉にデジレ様が出る。おそらくどの家もいろんな意味で真っ青になるだろう。
気の速い話だが既に王都を出るときに、この戦の賠償について話をされている。それによればデジレ様……フールフーガ側は大陸に港が欲しいというので海側の領土をゴッソリ貰い、半分ずつにしようという事になっている。それにより国土の大部分が砂漠になるポーリシア帝国は自国のみでは成り立たなくなるのは明白で、うちの属国になるだろう。まぁ、訳のわからない言いがかりで攻め入って来たのだから同情はしない。
「……失礼します!
帝国側の一般兵士から陳情があがっているのですが如何致しますか?」
「代表者を5名決めさせ意見をまとめさせろ。明日の朝に代表者と会うとする。」
向こうの兵士は今、泥だらけか酢の臭いか、油まみれか……どれかなので順番に川で汚れを落とさせている。この作戦、死人は少ないが負傷者は半端ない数だし後始末が大変だ。デジレ様は死者を出すより負傷者が多い方が敵にとって負担になると言っていたが、想定より短期間で勝敗が決まった今はこの臭いがこちら側にも地味にダメージを与える。
結局、引き上げるまで酢の臭いは取れなかった。そしてこの捕虜の人数が扱いに困った。落とし穴に落ちた者達は怪我が深く動かさない方が良いのでここに仮の病院を用意して収容。この者達と面倒を見るこちらの兵のために捕虜を使い、帝国側から食料を運び込む……山の補強と開拓等、人は必要なのだがそれでも余る。悩みどこだがそれも帝国側と話がつけば早々に解決できるだろう。
「準備が整ったようだ。飛行船部隊は夜のうちにお客様を連れて来るぞ。」
至極上機嫌の提督がいる。それもそのはず……提督はいつもの手下を連れて飛行船部隊で移動し夜襲を仕掛ける。
……考えただけでも恐ろしい。寝静まった真夜中、城を囲む炎と鬼……敵兵。それも敵にフールフーガの鬼提督がいるなんて嫌だ。
今日はデジレ様は留守番らしくお見送り体制だ。離れていて聞こえないが、イチャイチャしてるのはここからでもわかる。……早く行ってほしい。
そして、夜明け前……一つも傷つけることなく飛行船部隊は帝国側の人間を連れて戻ってきた。
……提督はご満足のようで、鬼の笑みがあった。
潜り込ませていたスパイの報告と一致するか調べていくと3人程少なかったが、すぐにどろどろの負傷兵の中から見つけ出せた。先に投降した将兵と合わせて貴族兵は全部で100名ちょっと。以外に少なく思える。しかも最前線に来た事から本当に重要な貴族は10名くらいなものだろう。捕虜として遇して身代金が届いた者は帰して行くのだが、今回はその交渉にデジレ様が出る。おそらくどの家もいろんな意味で真っ青になるだろう。
気の速い話だが既に王都を出るときに、この戦の賠償について話をされている。それによればデジレ様……フールフーガ側は大陸に港が欲しいというので海側の領土をゴッソリ貰い、半分ずつにしようという事になっている。それにより国土の大部分が砂漠になるポーリシア帝国は自国のみでは成り立たなくなるのは明白で、うちの属国になるだろう。まぁ、訳のわからない言いがかりで攻め入って来たのだから同情はしない。
「……失礼します!
帝国側の一般兵士から陳情があがっているのですが如何致しますか?」
「代表者を5名決めさせ意見をまとめさせろ。明日の朝に代表者と会うとする。」
向こうの兵士は今、泥だらけか酢の臭いか、油まみれか……どれかなので順番に川で汚れを落とさせている。この作戦、死人は少ないが負傷者は半端ない数だし後始末が大変だ。デジレ様は死者を出すより負傷者が多い方が敵にとって負担になると言っていたが、想定より短期間で勝敗が決まった今はこの臭いがこちら側にも地味にダメージを与える。
結局、引き上げるまで酢の臭いは取れなかった。そしてこの捕虜の人数が扱いに困った。落とし穴に落ちた者達は怪我が深く動かさない方が良いのでここに仮の病院を用意して収容。この者達と面倒を見るこちらの兵のために捕虜を使い、帝国側から食料を運び込む……山の補強と開拓等、人は必要なのだがそれでも余る。悩みどこだがそれも帝国側と話がつけば早々に解決できるだろう。
「準備が整ったようだ。飛行船部隊は夜のうちにお客様を連れて来るぞ。」
至極上機嫌の提督がいる。それもそのはず……提督はいつもの手下を連れて飛行船部隊で移動し夜襲を仕掛ける。
……考えただけでも恐ろしい。寝静まった真夜中、城を囲む炎と鬼……敵兵。それも敵にフールフーガの鬼提督がいるなんて嫌だ。
今日はデジレ様は留守番らしくお見送り体制だ。離れていて聞こえないが、イチャイチャしてるのはここからでもわかる。……早く行ってほしい。
そして、夜明け前……一つも傷つけることなく飛行船部隊は帝国側の人間を連れて戻ってきた。
……提督はご満足のようで、鬼の笑みがあった。
71
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる