Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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アンリ

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 目の前で自分の母親がノエルだと知った途端にへたりこむ船員達に驚愕した。それから暫く間をおいて頭を抱えて唸る者や右往左往し始めた船員を眺めながら、なぜこうも海の荒くれ者のような男達が怯えるのかが不思議に思った。
 自分の知る母親は何も恐れる所はない。

「……別に怖くないよ?」

 一応、声をかけみる。

「……ああ、そうだろうね。……ああ。」

 怖いとは思われていなさそうなので、ではなぜこうなってるのかが分からずアンリは困惑し始めていた。

「わかんない?」

 この中で1人だけケロっとしている様子のマオに助けを求めると、マオはどこか楽しそうだ。王都で会ったときから思っていたのだが、母親はこのマオととても仲がよさそうだ。

「アンリ、自分がどんな人間に大事にされてるか知ってる?ノエルはあの国を1人で引っ掻き回せるんだよ。ノエルが泣けば国中が大騒ぎだ。今頃は王様王妃様、総出でノエルを慰めて君の父親は駆けずり回ってる。お兄ちゃんは領主代理が長引いてヘロヘロだろうし、幼い兄弟は母親につられて泣いてるだろうね?」

 まぁ、もう君はここに来ちゃってるからどうやっても遅いんだけど~。とケラケラ笑う。

「大丈夫だよ。もう隼で連絡は取り合ってるだろうし。……あ、この船にちゃんと乗ってるっていう連絡はされてないか~。困ったね。……どうしよっか?」

 マオは言い聞かせているのか、安心させようとしているのか……独り言なのか、どれともとれるようなことを話す。でも結局は事態の解決には至らない。

「とりあえず、マオが面倒見てくれよ。突拍子でもない事に慣れてんだろ?」

「うーんムリ。ノエルの扱いは慣れてるけどノエルにはフォロー役が着いてるもん。何やらかすかわからない子はヤダ。それにオレこれからコウに呼ばれてんだよね~。」

 言葉にしないまでも“これからのフリー時間はコウに可愛がってもらうんだ~”と拒否をする。コウは階級的にいえばトップ。トップのご要望なのだからマオは行かなくてはならない。

「……どーすんだよ。」

 どん底の声で呟いた1人にその他の船員も同じ気持ちだった。

「あの……邪魔しないようにするから、お祖父様に会わせて下さい。部屋の隅っこでおとなしくお祖父様を見てるから。」

 …………ッングッ!!!!

 初めの生意気な様子から一転して、回りにかけた迷惑を反省しお願いしたアンリだったが、これを聞いた船員達は吹き出しそうになるのを堪えたり、首を激しく横に降ったりと様々な動作で拒否を示した。

「本当に!おとなしくしてます。あ、手伝える事が有るなら手伝うし!!お願いします。」

(いやいやいやいやいや!!無い!無いから!)
(この坊主……わかって無いんだよ。)
(おい、誰か教えてやれよ!)
(何を教えるんだよ!ナニか?)
(流石に小さすぎだろ!)
(こんなガキに艦長とデジレ様のラブラブ見せろって?!)
(ラブラブ言うな。)
(お前のお祖父様は艦長のデカブツを咥えて悦んでるからダメって言えっていうのかよ。)

 視線と小声の聞こえない相談にアンリは不安で顔を曇らせ、マオはお腹を抱えてヒーヒー笑っていた。
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