Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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忙しく

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 ノエルは補給の島で船を降りることを許されず甲板でアンリの腕を握りながら島を見ていた。
 時々腕をはずそうとしてくるアンリに「ダメ」と一言だけ返し、海、浜辺、荷運びの人間と観察をする。

「母上、逃げませんから。本当に逃げませんから離して下さい。」

「……本当に?後方の船に移ったりしない?」

「ええしません。絶対に戻ってきますから。」
(船が出るまで誤魔化せればなんとでもなるから替え玉を部屋に居させよう。)

「……居なかったら海に飛び込むからね。」

 まさかの答えにアンリは目をむく。そしてノエルがとった過去の行動(爺から聞かされた)談を思い出した。自分の命を狙う輩の目を盗んでの逃亡は1度や2度ではなかった。その他、皇太子のしでかした事で自分の命をかけて賭けにでたこともあったとか。
 ……この人なら絶対やる。海に飛び込むくらいやる!
 一瞬で考えを改めた。自分の意思を押し通そうとするとき、この人は絶対に引かないだろう。考えを覆させる事ができる人は……結局父しか居ないのか?

 アンリは自分付きになってるザサにお祖父様に渡してくれと手紙を渡した。邪推されないようにノエルの横で書きあげ渡したのだ。内容は[今の母親を置いて船を移れ無いので仕事体験は無理]と書いた。それが良かったのかノエルは安心し、多少行動の自由が効くようになった。


 その頃、アーノルドは大急ぎで出航の準備をしていた。期間は10日間ほどの予定で行き先は補給の島からフールフーガまでの航海線上。途中で合流しフールフーガ迄同行、その後はノエルを引き取って戻る予定だ。しかしそうなると大変なのはシモンで、完全に(王のバックアップは完璧だが)1人で仕切る事になる。まぁ最近は色々とあり鍛えられた成果かアーノルドに相談なしでも問題なく進められているのであまり心配ないのだが。

 悪友でもあり心から信頼する3人に後を任せ、シモンに心から謝りの手紙を飛ばした。同時に王都に向けても隼を飛ばして後をお願いする。

「後一刻ほどで出港準備が整います!」

 侍従からの連絡で連れていく侍従、侍女と共に荷物をロビーに集める。普段ならば貴族らしく馬車を列ねて運ばせ、後からゆったりと行くのだが今回はそんなもの気にしていられず幌馬車に荷を詰め込み、人間は馬で駆けつける。
 急の出港で見送りも悪友の内の1人しか都合がつかなかった。

「本当に急で悪いな。」

「いや、こちらは心配するな。いつも真面目にやってるから滞ってる仕事もないから大丈夫だろう。予め居ない時を見越しての役割分担もされている……こちらの負担は毎日王様ご本人に宛てて隼を飛ばすという事だけだ。」

「……すまない。」

「まったくだ。俺は下級貴族だぞ。こんなチャンス滅多にないから精々出来る奴アピールさせてもらうさ。」

 王本人は下級も上級も、果ては貴族か平民かも関係ないという人柄だが、謁見もした事がない者に負担をかけると謝れば、謝られたほうは負担というわりにはチャンスだと苦笑いに留めた。
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