Ωの僕がお偉いさん

ただいま～

　アーノルドの腕にゴロゴロとなついて『あ～、安心する～』って幸せの一時を過ごしているとすっごい勢いで引き離された。犯人は双子。

　「ちょっと､ノエル様！そんなとこでお1人で呑気にしてないであの惨状なんとかしてくださいよ！」

　ん？あの惨状とは？　なんだろうと思いながら指差された方を向くと……デジレ様が提督と一緒にいる。陛下はサミュエルと母様に挨拶中。普通なんじゃない？何かある？とアーノルドを見るとぎこちない笑みで僕を見た。

　「うん……たぶんアレの事じゃない？」

　振り返った先には船の舳先に吊るされてるマオ……ぐるぐる巻きにされてプラーンってなってる。ちょっとした発言がジレ様のお怒りに繋がってコウに「吊るしておけ」って引き渡されていた。
　いつもの光景ですが？

　「えっと……アレもですけど、他も……。」

　何が？デジレ様が提督に支えられてちょとぎこちなく歩いている事？陛下が母様に会ったとたんに抱擁しようとして母様がアクロバットに身を交わして陛下の後ろとって腕をキメてる事？それを見ていたサミュエルが慌てて止めてるところ？

　「それを見て何も感じてないノエル様を含めて船の乗組員が素知らぬ顔で素通りしている様子を見たグリフウッドの街の人が退いてる。全部を含めたこの空気ですよ！」

　アーノルドの館の人は最近は僕の扱い解って来たよね？うん、それと同じ。ほら僕って性格？母様に似てるって言われてるじゃない？母様はまんまフールフーガの性質な訳よ。それに似てる僕を解ってきたんだから大丈夫大丈夫。
　さぁそんな事よりあの一行を案内しなきゃ。あ、デジレ様と提督は勝手に来るから急かさないで良いよ。陛下を持ってきて。僕はサミュエルを連れて行くから。

　それでも「えっ？」とか「はっ？」て言ってるものだからさっさと移動するべく母様に向かって「母様～、陛下をお連れして下さい。アーノルドがキンキンに冷えたソルベを用意してくれてるようなので。」と声をかけた。それにニッコリ笑って淑女らしい歩みで陛下の手を引いて馬車へ行ってくれたので僕らも馬車へ乗り込んだ。


　馬車の中ではアーノルドに甘えて（サミュエルもカドラさんにベッタリ。）館につくと流石に母様と陛下をお迎えする列に加わる。
　あの港での行動が嘘だったかの様に馬車から降りて来る陛下は威厳たっぷりでエスコートされて降りる母様も淑やかだ。ここで僕が母様がエスコートされて馬車から降りるのを本当に久しぶりに見たと思ったのは内緒だ。

　あ、デジレ様と提督も次の馬車から降りて来た。……デジレ様は平然と提督の後ろを歩いている。意地なんだろうな。そしてシグルーン女公爵も次の馬車から……涼しい顔でコウがエスコート。って、なんでマオまで平然といるのよ？いつの間にほどいてもらったの？ちゃんとデジレ様に許して貰った？
　いや、無理だろうな。だってラブラブ中のお2人に「もう下船だからいい加減抜いてもらっていいですか～？」って大声で言ったんだもん。