Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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32才ご令嬢

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 ため息が止まらない。
なんというか……自国にこんなご婦人が存在していたとは思わなかった。でもおそらく昨日の様子から同じくらいおかしい人……失礼、気の毒な人がまだまだいそうだ。

 鼻高々で「アーノルドの妻」発言をしたにも関わらず僕がため息一つでご信用の笛を吹いて衛兵を呼んだのが気に食わなかったのだろう。朝食後のお散歩コースにまたそのご婦人は現れた。

 「ごきげんよう。ノエル様、私思いましたの。ノエル様が私の存在をご存知無かったのは仕方のない事なのではないかと。ウフフ。」

 ……。え?どういうこと?

 「私ね、この通り控えめで我慢強い性格でございますので今までは黙認して参りましたの。でもやはりこういう正式な場では妻が横に並ぶべきでしょう?そしてこれを期に改めていただくべきだと思ったんですの。」

 えーと?……先ず、貴女は誰?

 なんとなく面倒臭そうなのでとっとと片付けちゃいたいと思う。うーんと悩んでいると爺がサッと小冊子を出してきた。その間も勘違い婦人はなにやら言ってる。
 ……フンフンそーか。そーいうお人でしたか。

 どうやらこのご婦人は王都在住の文官さんのご令嬢で父親は伯爵位を持ってるものの拝領されてはいないらしい。お年は32才……まさかのアーノルドより年上。アーノルドに長年思いを寄せ、それはちょっとしたストーカー並み。アーノルドは認識してるものの実害が無いのでただ認識に留められている。
 うん。肝心のアーノルドの意識にも止まった事がないのに拗らせたんだ。

 さてと…と僕はその32才ご令嬢に向かって……あ、爺が間に?直答させないと?そうですか。

 「爺。このご婦人に良い病院をご用意して。治る事はないと思うから侮辱罪等は本人には問わないでいい。婚約話どころか接点何も無いのに頭の中で関係を作り上げちゃった哀れな人だから。」
 
 と爺に伝えた。
 本人目の前にして“out of 眼中”ってやった訳だけど、やっぱり怒りで顔真っ赤で手に持ってる扇子が折れそうになってる。

 「現実を見なさい」とだけ本人に向かって言って衛兵を呼び込んだ。本日2回目の事だけに取り調べも厳しいことだろうけど知らん。

 帰りがけに気づいたんだけど植え込みの向こうで僕の中ではお喋り夫人と呼ばれてる侯爵夫人が興味津々で首伸ばして見てたから直ぐにこの話は広まるだろうね。お喋り好きで歩くスピーカーだけど、意地悪でも企みのある人でもないから放っておこう。
 爺も衛兵に指示だけして直ぐに戻ってきた。
 
 そしてサクッと例のご令嬢父親を召喚。

 「貴方のとこの娘さん、こーんな罪で連れてかれました。収容病院はココ。どうしますか?」

 と尋ねた。本当はもっと厳しくするはずだったんだけど、夫婦揃って青ざめた顔で現れたその姿は同情に絶えないものだったんだよ。夫婦は痩せて血色の悪いヨボヨボヨレヨレのご老人、生活も苦しいのか数年前の流行りの生地の衣装。膝まづいた時に見えた上着の裏地は擦りきれてるし……。
 とりあえず罪は謹慎ということにしておこう。でもこの様子じゃあ生活の事も気になるな?爺、資料よろしく!
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