14 / 708
壁に耳あり
しおりを挟む
今日からポニ子は街の家でお留守番だ。ポニ太は寂しがり屋なので連れて帰ってきたが、ポニ子は気が強くて普通馬は1頭でいるのを不安に感じる筈なのに平気なのだ。
厩近くの小間使い用通路から秘密の通路を歩いていると謁見室の裏側で足が止まった。
「王様、もう王子の誕生日まで僅かです。今年の誕生日で12才になるというのは農民でも知っていることです。王室からなんの発表もされないというのは不信に思う者もいるでしょう。」
「…だから、王子をすぐに追い出せと言うのか!其方は12才の誕生日まで待つと言ったではないか!まだ第一王子は11才だ。追い出させはさせない!」
「しかし…国民は…」
「自分の子1人守れぬのに…国民の事まで…」
父様と誰かわからないけど臣下の内の1人だろう。秘密通路で自分の部屋へ戻り王子の姿になる。鏡でいつものように確認して覚悟を決めた。
でも、なんか癪だからなんかしてやろう。
部屋を見渡して欲しい物は…無い。庭には2羽ニワトリが…って違う。あーニワトリ?違うな。
とりあえず、一般人の服に王子の扮装。用意しておいた塗りの衣装箱に王子の服と指輪を入れて…お別れの手紙を書く。
この手紙、普通に見るだけなら普通のお別れの手紙だけど仕掛けがあるんだ。柑橘系の果汁で文字を書いて乾かし、火で炙ると文字が出てくる。
昔の遊びだけどこの世界では知られていない。けど小さい頃から僕は母にこの方法でよくお手紙を書いていた。これなら母はすぐにわかってくれる。
でもこれ、この世界の紙があまり質が良くなくて普通の紙でもよれたりゴワゴワしてるから誤魔化せるだけだよね。
今日は早くから行動していたから今日の内に出て行こうと思えるけど、日が暮れていたりしたら次の日まで待たないといけない。それは流石の僕でも色々考えてしまって凹むよ。
秘密通路を通って謁見室の近くに出る。いきなり現れると僕が秘密通路を知ってるとバレてそれこそ幽閉を免れないから。一度ソッと覗いて謁見室の前にしか兵士が居ないのを確かめた。この辺りの兵士は近衛兵で第一王子がΩで城から出て行く事を知っている。説明が省けて楽だろう。
塗りの衣装箱を持って兵士の前へ立つ。一瞬兵士は槍を向けかけたけどハッとして元の姿勢に戻る。
1人が驚愕の顔をしてくれてるので僕は嫌われていた訳ではないとわかり気分が軽くなった。
扉の前の兵士が開けてくれたので謁見室の前室へ入る。また兵士がいたのでそこまで進み、王への面会を伝える。そこにいた兵士も僕の姿で事態がわかり急いで知らせに入ってくれた。
「王子、目下の者から話しかける御無礼をお許しください。」
扉の前のもう1人の兵士が跪いていた。
「どうしたのですか?立ってください。僕はもうこの城を出てただの街の子供になります。立派な近衛の方がそんな事なさらないでください。」
「王子、貴方様がΩだとしても能力が低い訳が御座いません。城に通っている水道や壁を伝う暖房は貴方様の功績ではないですか…それを」
「ありがとう。知っている人が居てくれるのなら僕は大丈夫です。父様や母様から離れるのは心細いですがこれ以上、不和の種があるのは避けるべきでしょう?城から出た後は一切無関係と大臣に言われたので援助も無いようですがなんとかなるでしょう。父様は今まで精一杯僕を守ってくださいました。もう困らせたくは無いのです。」
お気づきでしょうか?チクチクと大臣への嫌がらせです。これくらい良いよね?
厩近くの小間使い用通路から秘密の通路を歩いていると謁見室の裏側で足が止まった。
「王様、もう王子の誕生日まで僅かです。今年の誕生日で12才になるというのは農民でも知っていることです。王室からなんの発表もされないというのは不信に思う者もいるでしょう。」
「…だから、王子をすぐに追い出せと言うのか!其方は12才の誕生日まで待つと言ったではないか!まだ第一王子は11才だ。追い出させはさせない!」
「しかし…国民は…」
「自分の子1人守れぬのに…国民の事まで…」
父様と誰かわからないけど臣下の内の1人だろう。秘密通路で自分の部屋へ戻り王子の姿になる。鏡でいつものように確認して覚悟を決めた。
でも、なんか癪だからなんかしてやろう。
部屋を見渡して欲しい物は…無い。庭には2羽ニワトリが…って違う。あーニワトリ?違うな。
とりあえず、一般人の服に王子の扮装。用意しておいた塗りの衣装箱に王子の服と指輪を入れて…お別れの手紙を書く。
この手紙、普通に見るだけなら普通のお別れの手紙だけど仕掛けがあるんだ。柑橘系の果汁で文字を書いて乾かし、火で炙ると文字が出てくる。
昔の遊びだけどこの世界では知られていない。けど小さい頃から僕は母にこの方法でよくお手紙を書いていた。これなら母はすぐにわかってくれる。
でもこれ、この世界の紙があまり質が良くなくて普通の紙でもよれたりゴワゴワしてるから誤魔化せるだけだよね。
今日は早くから行動していたから今日の内に出て行こうと思えるけど、日が暮れていたりしたら次の日まで待たないといけない。それは流石の僕でも色々考えてしまって凹むよ。
秘密通路を通って謁見室の近くに出る。いきなり現れると僕が秘密通路を知ってるとバレてそれこそ幽閉を免れないから。一度ソッと覗いて謁見室の前にしか兵士が居ないのを確かめた。この辺りの兵士は近衛兵で第一王子がΩで城から出て行く事を知っている。説明が省けて楽だろう。
塗りの衣装箱を持って兵士の前へ立つ。一瞬兵士は槍を向けかけたけどハッとして元の姿勢に戻る。
1人が驚愕の顔をしてくれてるので僕は嫌われていた訳ではないとわかり気分が軽くなった。
扉の前の兵士が開けてくれたので謁見室の前室へ入る。また兵士がいたのでそこまで進み、王への面会を伝える。そこにいた兵士も僕の姿で事態がわかり急いで知らせに入ってくれた。
「王子、目下の者から話しかける御無礼をお許しください。」
扉の前のもう1人の兵士が跪いていた。
「どうしたのですか?立ってください。僕はもうこの城を出てただの街の子供になります。立派な近衛の方がそんな事なさらないでください。」
「王子、貴方様がΩだとしても能力が低い訳が御座いません。城に通っている水道や壁を伝う暖房は貴方様の功績ではないですか…それを」
「ありがとう。知っている人が居てくれるのなら僕は大丈夫です。父様や母様から離れるのは心細いですがこれ以上、不和の種があるのは避けるべきでしょう?城から出た後は一切無関係と大臣に言われたので援助も無いようですがなんとかなるでしょう。父様は今まで精一杯僕を守ってくださいました。もう困らせたくは無いのです。」
お気づきでしょうか?チクチクと大臣への嫌がらせです。これくらい良いよね?
227
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる