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父様、母様
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中に入るとこの間の大臣を含め5人の大臣達が揃っていた。僕がなぜ来たのかは一目瞭然だろう。
「王様、長い間お世話になりました。」
こんなぎりぎりの時期まで頑張って守ってくれたのだ、恩を返すことはΩの僕には無理だからせめて迷惑にならないように去ろうと跪いた。
「王子として与えられていた品々をお返し致します。」
確かめてくださいと大臣に渡す。
受け取らず、いやいや此方の大臣へというやりとりが面倒になったので一番先頭にいた大臣に押しつけるように渡して一歩下がった。
「どうぞ、ご覧ください。正装、略装、第一王子の指輪、紋章、揃っているか本物か大臣達全員でご確認ください。王様、確認後大臣達に間違いがないかをお確かめください。」
「どうしても行ってしまうのか…」
「はい。父様や母様が今日まで私を庇ってくださったお陰でここまでこれたのです。第一王子の身分を失った後はお会いする事は叶わないでしょう。城から出た後は関係は一切無いと言われています。……母様には元気でいるとお伝え下さい。」
「どうやって暮らすのだ。宛はあるのか?」
「……父様、今生のお別れです。私を憐れんでくださるならどこでどう生きたか、死んだか捜索させないでください。おそらく……私がここで幸せに生きたとだけ覚えていてください。」
父と子の涙の別れを抱きつき、泣きながらしている様に見えてるかな?父様、演技上手いねとチラッと見れば父も、お前もやるな…と見返してくる。
流石に大臣達の中には涙を拭う人もいる。…急にバタンッ!と大きな音がしたので振り返るといつもの
淑女らしさを捨てて向かってくる母が見えた。
「母様、どうしてここへ…?」
「どうして?私の子供が連れ去られるのにじっとしている母がおりますか?やはり私も共に参ります!王様、私を離縁してくださいませ!この子は私が…この子が自分の番を見つけて落ち着くまで守りますから!!どうか私をこの子と一緒に!!」
演技でもなく、必死に言い募ってくれる母に心が打たれ本当に涙が出る。
「母様、駄目です。これより後は弟が第一王子となります。あの子はしっかりしているけどまだ幼い。母親の愛情が無く育つ子は哀れです。それに、兄らしいこともしてやれず、厳しい周りからも庇ってやれないのです。せめて母親を取り上げる兄にしないでください。」
「では…では…お前は?お前はどうなるのですか!」
泣き崩れてしまった母にそっと囁いた。
「母様、秘密の手紙覚えてるよね?」
ピクッと肩を揺らした母に堂々と手紙を渡した。
「母様、泣かせてしまうとわかってたから、会わずに行くつもりでした。ここに手紙を書きました。後で見てください。」
顔を伏せて立つこともできない母を父に任せて大臣達へ向き治った。
「お返しする物に足りない物、違っている物はございませんか?後から窃盗や偽造の疑いで追われる事は避けたいのですが。」
「はい。揃っております。…王子、最後にこれだけはおわかりいただきたい。……国の為です。貴方様を嫌っていた訳ではございません。」
「ええ。でも…今後一切関わりを持たないのでしょう?成人に満たない子供の行く末は解りきっているのに。」
「……はい。」
「わかりました。この城を出た時より私は王子では無くなります。私は私の為だけに生きます。この国の事を考えて我慢する事も止めます。……それを止めませんね?」
「はい。」
「では…これで」失礼と言いかけた所で母から「まだよ!」と止められた。
母の合図で母の侍従が入ってきて大きなバッグを僕に差し出した。
「母のドレスが数点と趣味で集めたレースやリボン紐、母が嫁入りの時に持って来た真珠です。私個人の財産ですから国は関係ありません。お前に渡しても何ら問題無い物です。売ればそれなりになるはずです。お前は賢いからわかるでしょうが、売る時は小さくして少しづつ売りなさい。生活が苦しかったら海を渡ってお婆様を訪ねなさい。お前は私の子供の頃と瓜二つ、直ぐにわかってくださるわ。」
「王様、長い間お世話になりました。」
こんなぎりぎりの時期まで頑張って守ってくれたのだ、恩を返すことはΩの僕には無理だからせめて迷惑にならないように去ろうと跪いた。
「王子として与えられていた品々をお返し致します。」
確かめてくださいと大臣に渡す。
受け取らず、いやいや此方の大臣へというやりとりが面倒になったので一番先頭にいた大臣に押しつけるように渡して一歩下がった。
「どうぞ、ご覧ください。正装、略装、第一王子の指輪、紋章、揃っているか本物か大臣達全員でご確認ください。王様、確認後大臣達に間違いがないかをお確かめください。」
「どうしても行ってしまうのか…」
「はい。父様や母様が今日まで私を庇ってくださったお陰でここまでこれたのです。第一王子の身分を失った後はお会いする事は叶わないでしょう。城から出た後は関係は一切無いと言われています。……母様には元気でいるとお伝え下さい。」
「どうやって暮らすのだ。宛はあるのか?」
「……父様、今生のお別れです。私を憐れんでくださるならどこでどう生きたか、死んだか捜索させないでください。おそらく……私がここで幸せに生きたとだけ覚えていてください。」
父と子の涙の別れを抱きつき、泣きながらしている様に見えてるかな?父様、演技上手いねとチラッと見れば父も、お前もやるな…と見返してくる。
流石に大臣達の中には涙を拭う人もいる。…急にバタンッ!と大きな音がしたので振り返るといつもの
淑女らしさを捨てて向かってくる母が見えた。
「母様、どうしてここへ…?」
「どうして?私の子供が連れ去られるのにじっとしている母がおりますか?やはり私も共に参ります!王様、私を離縁してくださいませ!この子は私が…この子が自分の番を見つけて落ち着くまで守りますから!!どうか私をこの子と一緒に!!」
演技でもなく、必死に言い募ってくれる母に心が打たれ本当に涙が出る。
「母様、駄目です。これより後は弟が第一王子となります。あの子はしっかりしているけどまだ幼い。母親の愛情が無く育つ子は哀れです。それに、兄らしいこともしてやれず、厳しい周りからも庇ってやれないのです。せめて母親を取り上げる兄にしないでください。」
「では…では…お前は?お前はどうなるのですか!」
泣き崩れてしまった母にそっと囁いた。
「母様、秘密の手紙覚えてるよね?」
ピクッと肩を揺らした母に堂々と手紙を渡した。
「母様、泣かせてしまうとわかってたから、会わずに行くつもりでした。ここに手紙を書きました。後で見てください。」
顔を伏せて立つこともできない母を父に任せて大臣達へ向き治った。
「お返しする物に足りない物、違っている物はございませんか?後から窃盗や偽造の疑いで追われる事は避けたいのですが。」
「はい。揃っております。…王子、最後にこれだけはおわかりいただきたい。……国の為です。貴方様を嫌っていた訳ではございません。」
「ええ。でも…今後一切関わりを持たないのでしょう?成人に満たない子供の行く末は解りきっているのに。」
「……はい。」
「わかりました。この城を出た時より私は王子では無くなります。私は私の為だけに生きます。この国の事を考えて我慢する事も止めます。……それを止めませんね?」
「はい。」
「では…これで」失礼と言いかけた所で母から「まだよ!」と止められた。
母の合図で母の侍従が入ってきて大きなバッグを僕に差し出した。
「母のドレスが数点と趣味で集めたレースやリボン紐、母が嫁入りの時に持って来た真珠です。私個人の財産ですから国は関係ありません。お前に渡しても何ら問題無い物です。売ればそれなりになるはずです。お前は賢いからわかるでしょうが、売る時は小さくして少しづつ売りなさい。生活が苦しかったら海を渡ってお婆様を訪ねなさい。お前は私の子供の頃と瓜二つ、直ぐにわかってくださるわ。」
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