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誰の試練か

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 「なぁ、お前いくつだっけ?」

 自分の部屋で呆けていたアンリに聞く。

「…9才。ふーん、αっていうのはやっぱり発育良いんだな。10才は越えてるって思ってた。じゃあちょっと早いけど俺が大事な事、教えてやるからちゃんと覚えろよ?」

 頷くだけのアンリにちょっと不安になったがあのメッセージを考えると確かに誰か必要なんだろうなと思えてきた。

「あのなぁアンリ、今お前は見ちゃったものが理解できないで頭の中グチャグチャだろう?知らなかったのかも知れないし、知っていたとしても理解までいってなかったはずだ。でも、お前は家出するくらい度胸あるヤツなんだから、これくらいでボケッとすんな。
 お前が分かりやすいようにぜーんぶおしえてやるからさ。」

 ちょっとくらいの優しさも必要かと思って、いつもより優しく話すと、頷くアンリが年相応の奴に思えた。まぁオレの説明は下手だろうけどそこはαの理解力ってやつに期待している。
 それからオレは本当に最初から説明した。説明ベタは時系列を追って言えば相手がなんとかわかってくれるからな。
 
 オレの知ってるのはノエル側からの話だから、変装して第一王子を名乗ってる時代の話からだ。その辺りからデジレ様の話が出てくるからな。そして、ノエル追放から再び王族に復帰する流れ。ここでデジレ様は生き方が360度変わる。……え?間違い?ああ、戻っちゃってるのか。180度な。
 ……なんだ、突っ込み入れるくらいは余裕あるんじゃん。

「オレ達だってびっくりしたよ。提督のデジレ様贔屓は皆知ってたから、結婚して連れ帰るって聞いたときにはとうとう拉致誘拐しちゃったって思ったんだ。でも、艦から小舟おろして川遡上してお城?から堂々と連れてくるんで余計びっくりした。」

 艦長の長年の思いとデジレ様の処罰辺りではアンリも意識が戻ってきたようでちゃんと聞いている。アンリはもしかしたら“兄弟の扱いに差が~”なんて理由は後付けで、ちゃんと自分だけと向き合って欲しかっただけなのかも知れない。次男……αのものわかりの良い2番目なんてそういうのになりやすそうだ。オレはこの艦で拾われて育てられた全員の赤ん坊で子供だからそういう寂しさとは無縁だったけど、そういう不満を持つ奴は艦の奴にもいるからな。

「デジレ様がここに来た理由はわかったか?」

「はい。これまでは“事情があって”と聞いていたので国家間の婚姻と同じようなものかと思っていました。」

 ああ、政略結婚ってやつな。王族同士で釣り合いがとれない場合、国の重要人物がそれの役目をするって聞いてるからな。元大臣なんてちょうど当てはまりやすい。

「わかったか?ちゃんと艦長とデジレ様には“絆”ってもんがあるんだ。相手同士を大事に考えてる。」

「……うん。びっくりはしてるけど……。さっきより落ち着いたよ。」
 
 そうか、良かった~。じゃあ、続きな?
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