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「あれから聖女様の様子はどうだ?」
大神官はノアから報告を受けていた。
ノルディも同席している。
ノルディは呼び出された日からずっと神殿に泊まり込んでいた。
毎日状況は変わらないが、もしかしたらという期待する気持ちがあった。
ノアが横に首を振る。
「お食事もお取りになりません。治癒師により何とか命を繋いでいる状態です。」
目を覚ましてからもう何日も立つ。
それなのにレピアは反応は全くなく食事も水分も一切取らなかった。
「アールはなんて愚かなことをしたのだ…」
今後魔の扉が開いた時、どれほどの犠牲がでるかわかっているのか…
「アールはレピア様の加護を受け入れていたのだろうか。」
今回、レピア様が死ぬのも構わないと思ったのだろうか。
それとも自分が死ぬのを前提にしていたのか。
前者ならと考えるとノルディの怒りはおさまらなかった。
「もちろんです。その受け入れがなければ護衛にはなれません。ただ、アールは聖騎士です。治癒師ではありません。血の力を知りません。」
「…血の力を知らなかった?」
「そうです。それは最期の力を振り絞す捨て身の聖術です。いわば禁忌的なもので治癒師以外には伝えられません。悪用されれる恐れがありますから。」
治癒師にも救えない命がある。
それを命をかけて救えと強制する者が出るのを避けるために。
「アールはレピア様を犠牲にしても良いと考えていたのだろうか?」
「何と言って聖女様を動かしたのかわかりませんが、そうなる事も考えていたでしょうね。神殿に来て一番最初に教えられる事ですから。それで加護が働き自分が死ぬと思ったのかはわかりません。」
加護は事故や暗殺に向けての守りだった。
魔の扉に手を出す危険が自分に降りかかると考えただろうか。
大神官である自分ですら加護がそんな風に作動した事に驚いた。
アールにどういう意図があったのか本人にしかわからない。
今となってはもう永遠にわからないだろう。
だが、魔の扉に手を出す恐ろしさはしっかりと教えられていたはずだ。
レピアがいくら稀代の聖女であっても魔の扉の力には勝てない。
レピアといえど人間なのだから。
過去に聖女と聖力を使える神官で魔の扉を開く前に破壊するという試みがあった。
理論的にはできるはずだったが、その当時の聖女、神官は全て死んだ。
聖力を持つ聖女、神官の不在は魔の扉の力が消失するまで魔物が流入する結果となり、民の被害も大きなものとなった。
それからは魔の扉が開ききるまでは手出ししないというのが絶対的な決まりとなっていた。
レピアは聖女の限界を超え体が内側から壊れてはしまったが、レピアの聖力とアールの血の力だけで魔の扉が閉められたのは神殿内に大きな衝撃を与えた。
「調べによると今回魔の扉が開くはずだった街はアールの故郷でした。」
「自分の故郷を守るために禁忌を侵してレピア様に魔の扉の場所を教えたのか?」
ノルディは呆然としていた。
レピア様と結婚するはずだった。
アールもレピア様を愛しているように見えた。
「レピア様が死ぬかもしれないとわかっていて故郷の街を優先したのか?」
ノルディの問いに大神官もノアも黙った。
そうだとは信じたくなかった。
だが…
「…他の聖騎士より聖女様の護衛にも関わらず討伐に出ると言って聞かなかったと報告を受けています。」
大神官はノルディの問いに返答をした。
「どうして聖女を最優先にできない奴がそばにいたのだ?レピア様はあんなに奴のことを慕っていたのに…」
ノルディは何もかもが許せなかった。
目の前の大神官やノアによりレピア様から引き離された事。
アールがレピア様よりも故郷を優先した事。
何よりそんな奴と知らずにレピア様を任せた自分に。
全てが間違いだった。
「私がレピア様の側にいる!もう口出しはさせない。」
ノルディは部屋を飛び出し皇城に手紙を出した。
大神官はノアから報告を受けていた。
ノルディも同席している。
ノルディは呼び出された日からずっと神殿に泊まり込んでいた。
毎日状況は変わらないが、もしかしたらという期待する気持ちがあった。
ノアが横に首を振る。
「お食事もお取りになりません。治癒師により何とか命を繋いでいる状態です。」
目を覚ましてからもう何日も立つ。
それなのにレピアは反応は全くなく食事も水分も一切取らなかった。
「アールはなんて愚かなことをしたのだ…」
今後魔の扉が開いた時、どれほどの犠牲がでるかわかっているのか…
「アールはレピア様の加護を受け入れていたのだろうか。」
今回、レピア様が死ぬのも構わないと思ったのだろうか。
それとも自分が死ぬのを前提にしていたのか。
前者ならと考えるとノルディの怒りはおさまらなかった。
「もちろんです。その受け入れがなければ護衛にはなれません。ただ、アールは聖騎士です。治癒師ではありません。血の力を知りません。」
「…血の力を知らなかった?」
「そうです。それは最期の力を振り絞す捨て身の聖術です。いわば禁忌的なもので治癒師以外には伝えられません。悪用されれる恐れがありますから。」
治癒師にも救えない命がある。
それを命をかけて救えと強制する者が出るのを避けるために。
「アールはレピア様を犠牲にしても良いと考えていたのだろうか?」
「何と言って聖女様を動かしたのかわかりませんが、そうなる事も考えていたでしょうね。神殿に来て一番最初に教えられる事ですから。それで加護が働き自分が死ぬと思ったのかはわかりません。」
加護は事故や暗殺に向けての守りだった。
魔の扉に手を出す危険が自分に降りかかると考えただろうか。
大神官である自分ですら加護がそんな風に作動した事に驚いた。
アールにどういう意図があったのか本人にしかわからない。
今となってはもう永遠にわからないだろう。
だが、魔の扉に手を出す恐ろしさはしっかりと教えられていたはずだ。
レピアがいくら稀代の聖女であっても魔の扉の力には勝てない。
レピアといえど人間なのだから。
過去に聖女と聖力を使える神官で魔の扉を開く前に破壊するという試みがあった。
理論的にはできるはずだったが、その当時の聖女、神官は全て死んだ。
聖力を持つ聖女、神官の不在は魔の扉の力が消失するまで魔物が流入する結果となり、民の被害も大きなものとなった。
それからは魔の扉が開ききるまでは手出ししないというのが絶対的な決まりとなっていた。
レピアは聖女の限界を超え体が内側から壊れてはしまったが、レピアの聖力とアールの血の力だけで魔の扉が閉められたのは神殿内に大きな衝撃を与えた。
「調べによると今回魔の扉が開くはずだった街はアールの故郷でした。」
「自分の故郷を守るために禁忌を侵してレピア様に魔の扉の場所を教えたのか?」
ノルディは呆然としていた。
レピア様と結婚するはずだった。
アールもレピア様を愛しているように見えた。
「レピア様が死ぬかもしれないとわかっていて故郷の街を優先したのか?」
ノルディの問いに大神官もノアも黙った。
そうだとは信じたくなかった。
だが…
「…他の聖騎士より聖女様の護衛にも関わらず討伐に出ると言って聞かなかったと報告を受けています。」
大神官はノルディの問いに返答をした。
「どうして聖女を最優先にできない奴がそばにいたのだ?レピア様はあんなに奴のことを慕っていたのに…」
ノルディは何もかもが許せなかった。
目の前の大神官やノアによりレピア様から引き離された事。
アールがレピア様よりも故郷を優先した事。
何よりそんな奴と知らずにレピア様を任せた自分に。
全てが間違いだった。
「私がレピア様の側にいる!もう口出しはさせない。」
ノルディは部屋を飛び出し皇城に手紙を出した。
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