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ノルディは治癒師として神殿に留まることになった。
その話は皇城でも大騒ぎになっていた。
聖女であるレピアを妃に迎えるためにノルディはかなり優秀な皇帝候補だった。
ノルディは早くレピアの元に行きたくて皇位継承権も捨てようとしたが、父親である皇帝に止められ結論としては皇位継承権第ニ位のままだ。
聖女不在の今、勢力図が変わることによる争いを避けたいと言われれば、ノルディも拒否もできなかった。
レピアは誰よりも平和を望んでいた。
自分が争いの理由にはなりたくなかったのだ。
だが、神殿内で起こった事件は皇城内でもかなり問題視されていた。
第三者として神殿に出向し調査するという形でレピアの側にいることが許された。
「レピア様、花がとても綺麗に咲いているから一緒に見にいこう。」
ノルディは意識のないレピアに話しかけ、抱き抱えて歩き出した。
レピアの好きな話をし、好きな景色を見せたらきっとレピアには伝わっているとノルディは信じている。
いつか辛い気持ちから抜け出せた時、戻ってきてほしい。
飲食ができないので治癒の力を使うのと同時に体のリハビリも行なった。
目覚めた時に全く歩けないのは辛いはずだと思うから。
お風呂や着替えなどはできなかったが、それ以外の日常生活の世話についてはノルディが中心に全て行った。
ノルディはレピアの状態を苦しく思う一方で側にいられる喜びを感じる自分に嫌悪感も抱いていた。
庭にノルディとレピアが出てくると優しい風が吹いていてレピアの綺麗な髪がなびいている。
「風が気持ちいいな。レピア様の好きな花も咲いてる。こんな中でお茶を飲めたら気持ちいいだろうな。」
ノルディはレピアに話しかける。
「レピア様の好きなお茶を用意しますね。」
レピアを抱き抱えたノルディの後ろを歩いていたノアはその場を離れた。
まだレピアは飲めないが、好きなお茶の香りは楽しめるかもしれないと思ったからだ。
「いつもここで一緒に色々と話したな。私はレピア様と過ごすそんな時間が本当に好きだったんだ。また一緒にお茶を飲もう。レピア様の好きなお菓子もたくさん持ってくるから。」
レピア様が戻ってきてくれるなら何でもするのに。
ここにいるのがアールだったら…レピア様は感情を取り戻してくれていたのだろうか。
レピア様がずっとこのままでも自分は一緒に生きていく。
そう決めていたが、レピア様がそう望んでいない可能性はある。
「レピア様、私は側にいていいのか?」
ノルディの独り言のような問いにレピアの反応はない。
考えても仕方がない。
感情を取り戻してレピア様が嫌がるまでは側にいよう。
どんな形でもレピア様がいてくれるだけで私は幸せだから。
「ノルディ様、お茶の準備ができました。」
ノアが迎えにきた。
庭を見渡せる場所にテーブルがセッティングされていた。
椅子ではなく大きめのソファが出されているのを見るとレピアを抱き抱えたまま、座れという事なのだろう。
ノルディは膝の上にレピアを抱き体が倒れないように固定した。
ティーカップを取り香りが楽しめるようにレピアの口のところまで持っていった。
「レピア様の好きなお茶だ。いい香りだな。」
ノルディはレピアに優しく話しかける。
その時ノルディはレピアの喉がコクリと小さく動くのを見た。
「レピア様?飲みたいのか?」
無表情のレピアは何の反応もしなかった。
「ノア、スプーンを持ってきてくれ。少しだけレピア様に飲ませようと思う。」
ノルディはノアに早口で依頼した。
もしかしたら…飲めるかもしれない。
ノルディはノアに小さなスプーンを持ってきてもらうとお茶を少し冷まし火傷しないことを確かめた上でレピアの口に少し含ませた。
コクッ
レピアの喉が動いた。
「レピア様…」
スプーンでお茶を飲めたのは2、3口だけだった。
だが、それだけでノルディとノアはとても喜んだ。
いつか元に戻ってくれる。
そう希望が持てたからだ。
その話は皇城でも大騒ぎになっていた。
聖女であるレピアを妃に迎えるためにノルディはかなり優秀な皇帝候補だった。
ノルディは早くレピアの元に行きたくて皇位継承権も捨てようとしたが、父親である皇帝に止められ結論としては皇位継承権第ニ位のままだ。
聖女不在の今、勢力図が変わることによる争いを避けたいと言われれば、ノルディも拒否もできなかった。
レピアは誰よりも平和を望んでいた。
自分が争いの理由にはなりたくなかったのだ。
だが、神殿内で起こった事件は皇城内でもかなり問題視されていた。
第三者として神殿に出向し調査するという形でレピアの側にいることが許された。
「レピア様、花がとても綺麗に咲いているから一緒に見にいこう。」
ノルディは意識のないレピアに話しかけ、抱き抱えて歩き出した。
レピアの好きな話をし、好きな景色を見せたらきっとレピアには伝わっているとノルディは信じている。
いつか辛い気持ちから抜け出せた時、戻ってきてほしい。
飲食ができないので治癒の力を使うのと同時に体のリハビリも行なった。
目覚めた時に全く歩けないのは辛いはずだと思うから。
お風呂や着替えなどはできなかったが、それ以外の日常生活の世話についてはノルディが中心に全て行った。
ノルディはレピアの状態を苦しく思う一方で側にいられる喜びを感じる自分に嫌悪感も抱いていた。
庭にノルディとレピアが出てくると優しい風が吹いていてレピアの綺麗な髪がなびいている。
「風が気持ちいいな。レピア様の好きな花も咲いてる。こんな中でお茶を飲めたら気持ちいいだろうな。」
ノルディはレピアに話しかける。
「レピア様の好きなお茶を用意しますね。」
レピアを抱き抱えたノルディの後ろを歩いていたノアはその場を離れた。
まだレピアは飲めないが、好きなお茶の香りは楽しめるかもしれないと思ったからだ。
「いつもここで一緒に色々と話したな。私はレピア様と過ごすそんな時間が本当に好きだったんだ。また一緒にお茶を飲もう。レピア様の好きなお菓子もたくさん持ってくるから。」
レピア様が戻ってきてくれるなら何でもするのに。
ここにいるのがアールだったら…レピア様は感情を取り戻してくれていたのだろうか。
レピア様がずっとこのままでも自分は一緒に生きていく。
そう決めていたが、レピア様がそう望んでいない可能性はある。
「レピア様、私は側にいていいのか?」
ノルディの独り言のような問いにレピアの反応はない。
考えても仕方がない。
感情を取り戻してレピア様が嫌がるまでは側にいよう。
どんな形でもレピア様がいてくれるだけで私は幸せだから。
「ノルディ様、お茶の準備ができました。」
ノアが迎えにきた。
庭を見渡せる場所にテーブルがセッティングされていた。
椅子ではなく大きめのソファが出されているのを見るとレピアを抱き抱えたまま、座れという事なのだろう。
ノルディは膝の上にレピアを抱き体が倒れないように固定した。
ティーカップを取り香りが楽しめるようにレピアの口のところまで持っていった。
「レピア様の好きなお茶だ。いい香りだな。」
ノルディはレピアに優しく話しかける。
その時ノルディはレピアの喉がコクリと小さく動くのを見た。
「レピア様?飲みたいのか?」
無表情のレピアは何の反応もしなかった。
「ノア、スプーンを持ってきてくれ。少しだけレピア様に飲ませようと思う。」
ノルディはノアに早口で依頼した。
もしかしたら…飲めるかもしれない。
ノルディはノアに小さなスプーンを持ってきてもらうとお茶を少し冷まし火傷しないことを確かめた上でレピアの口に少し含ませた。
コクッ
レピアの喉が動いた。
「レピア様…」
スプーンでお茶を飲めたのは2、3口だけだった。
だが、それだけでノルディとノアはとても喜んだ。
いつか元に戻ってくれる。
そう希望が持てたからだ。
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