【完結】聖騎士を死なせた聖女は平民として生きる?

みやちゃん

文字の大きさ
22 / 49

22

しおりを挟む
ノルディは治癒師として神殿に留まることになった。
その話は皇城でも大騒ぎになっていた。


聖女であるレピアを妃に迎えるためにノルディはかなり優秀な皇帝候補だった。
ノルディは早くレピアの元に行きたくて皇位継承権も捨てようとしたが、父親である皇帝に止められ結論としては皇位継承権第ニ位のままだ。

聖女不在の今、勢力図が変わることによる争いを避けたいと言われれば、ノルディも拒否もできなかった。

レピアは誰よりも平和を望んでいた。
自分が争いの理由にはなりたくなかったのだ。

だが、神殿内で起こった事件は皇城内でもかなり問題視されていた。
第三者として神殿に出向し調査するという形でレピアの側にいることが許された。

「レピア様、花がとても綺麗に咲いているから一緒に見にいこう。」
ノルディは意識のないレピアに話しかけ、抱き抱えて歩き出した。

レピアの好きな話をし、好きな景色を見せたらきっとレピアには伝わっているとノルディは信じている。

いつか辛い気持ちから抜け出せた時、戻ってきてほしい。
飲食ができないので治癒の力を使うのと同時に体のリハビリも行なった。
目覚めた時に全く歩けないのは辛いはずだと思うから。
お風呂や着替えなどはできなかったが、それ以外の日常生活の世話についてはノルディが中心に全て行った。

ノルディはレピアの状態を苦しく思う一方で側にいられる喜びを感じる自分に嫌悪感も抱いていた。


庭にノルディとレピアが出てくると優しい風が吹いていてレピアの綺麗な髪がなびいている。

「風が気持ちいいな。レピア様の好きな花も咲いてる。こんな中でお茶を飲めたら気持ちいいだろうな。」
ノルディはレピアに話しかける。

「レピア様の好きなお茶を用意しますね。」
レピアを抱き抱えたノルディの後ろを歩いていたノアはその場を離れた。

まだレピアは飲めないが、好きなお茶の香りは楽しめるかもしれないと思ったからだ。

「いつもここで一緒に色々と話したな。私はレピア様と過ごすそんな時間が本当に好きだったんだ。また一緒にお茶を飲もう。レピア様の好きなお菓子もたくさん持ってくるから。」

レピア様が戻ってきてくれるなら何でもするのに。
ここにいるのがアールだったら…レピア様は感情を取り戻してくれていたのだろうか。

レピア様がずっとこのままでも自分は一緒に生きていく。
そう決めていたが、レピア様がそう望んでいない可能性はある。

「レピア様、私は側にいていいのか?」
ノルディの独り言のような問いにレピアの反応はない。

考えても仕方がない。
感情を取り戻してレピア様が嫌がるまでは側にいよう。
どんな形でもレピア様がいてくれるだけで私は幸せだから。

「ノルディ様、お茶の準備ができました。」
ノアが迎えにきた。
庭を見渡せる場所にテーブルがセッティングされていた。
椅子ではなく大きめのソファが出されているのを見るとレピアを抱き抱えたまま、座れという事なのだろう。

ノルディは膝の上にレピアを抱き体が倒れないように固定した。

ティーカップを取り香りが楽しめるようにレピアの口のところまで持っていった。

「レピア様の好きなお茶だ。いい香りだな。」
ノルディはレピアに優しく話しかける。

その時ノルディはレピアの喉がコクリと小さく動くのを見た。

「レピア様?飲みたいのか?」
無表情のレピアは何の反応もしなかった。

「ノア、スプーンを持ってきてくれ。少しだけレピア様に飲ませようと思う。」
ノルディはノアに早口で依頼した。

もしかしたら…飲めるかもしれない。
ノルディはノアに小さなスプーンを持ってきてもらうとお茶を少し冷まし火傷しないことを確かめた上でレピアの口に少し含ませた。

コクッ
レピアの喉が動いた。

「レピア様…」
スプーンでお茶を飲めたのは2、3口だけだった。
だが、それだけでノルディとノアはとても喜んだ。

いつか元に戻ってくれる。
そう希望が持てたからだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...