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「…レピア様。」
ノルディはレピアが涙を流しているのをみて自分の失態に気づいた。
レピア様は今の話を理解していた…
レピア様の前でアールの話をしてはいけなかった。
なんて自分は愚かなのだろう。
反応がないからといって意識がないわけではなかったのに。
アールを亡くした悲しみにくれていたところに裏切られたと知った。
レピアと視線は合わない。
表情もない。
だが、目からポロポロと涙は溢れている。
「レピア様、これ以上あなたを悲しませるつもりはなかったんだ。」
ノルディはレピアの手を両手で握り頭をつけ謝った。
そんなノルディの手の甲にレピアの涙が落ちる。
レピア様を傷つけたくないのに。
ノルディはレピアの絶え間なく溢れる涙を前に胸が締め付けられた。
「レピア様…もう苦しむ必要はない。あなたは何も悪くない。だからアールを忘れて欲しい」
「私は悪くない?」
レピアから声が漏れた。
今までいくら話しかけても反応がなかったレピアの言葉にノルディは即座に返答した。
これ以上自分を責めないように。
「ああ、そうだ。レピア様は悪くない。」
「アールが悪いというの?」
「ああ、だから全部忘れていいんだ。」
早く忘れて欲しい。
あなたを傷つけるものなど必要ない。
ノルディはレピアの心配だけをしていた。
それがレピアを余計に苦しめるなんて考えもしなかった…
「アールは何も悪くない!私が全て悪いのよ!私がアールを殺した…!」
そうレピアが叫ぶと泣き崩れた。
「アァァァ!殺した!私が殺した!」
錯乱して暴れるレピアの手をノルディは抑えようとしてパンと顔を叩かれた。
目の前にいるノルディすらレピアの視界には全く入っていない。
「レピア様は悪くない!危ないから落ち着いてくれ!」
自分を殴ってレピア様の気がおさまるならいくらでもそうしてくれてもいい。
だが、今のレピア様は自分自身を許せていない。
悪意が自分に向かっている…
治癒師は心の傷まで癒せない。
手を抑え自傷行為を止めることしかノルディはできなかった。
「だれか、鎮静剤を持ってきてくれ!」
とりあえずレピアを落ち着ける事を優先させるしかなかった。
「はい!」
聖騎士の一人が答えバタバタと部屋を出た。
「私がアールを殺した!アールを殺した!アールを殺した!殺してしまった!」
レピアの泣き叫ぶ声が部屋の中に響き渡っている。
「レピア様…」
鎮静剤を持った治癒師が到着をし、レピアが眠るまで叫び続け暴れた。
ノルディはそんなレピアの手を抑えながら自分の無力さに痛感していた。
何を思い上がっていたのだろう。
自分がレピア様を支えられるなんて…
目を腫らしたレピアの寝顔を見ながらノルディの頬に涙が一筋流れた。
ノルディはレピアが涙を流しているのをみて自分の失態に気づいた。
レピア様は今の話を理解していた…
レピア様の前でアールの話をしてはいけなかった。
なんて自分は愚かなのだろう。
反応がないからといって意識がないわけではなかったのに。
アールを亡くした悲しみにくれていたところに裏切られたと知った。
レピアと視線は合わない。
表情もない。
だが、目からポロポロと涙は溢れている。
「レピア様、これ以上あなたを悲しませるつもりはなかったんだ。」
ノルディはレピアの手を両手で握り頭をつけ謝った。
そんなノルディの手の甲にレピアの涙が落ちる。
レピア様を傷つけたくないのに。
ノルディはレピアの絶え間なく溢れる涙を前に胸が締め付けられた。
「レピア様…もう苦しむ必要はない。あなたは何も悪くない。だからアールを忘れて欲しい」
「私は悪くない?」
レピアから声が漏れた。
今までいくら話しかけても反応がなかったレピアの言葉にノルディは即座に返答した。
これ以上自分を責めないように。
「ああ、そうだ。レピア様は悪くない。」
「アールが悪いというの?」
「ああ、だから全部忘れていいんだ。」
早く忘れて欲しい。
あなたを傷つけるものなど必要ない。
ノルディはレピアの心配だけをしていた。
それがレピアを余計に苦しめるなんて考えもしなかった…
「アールは何も悪くない!私が全て悪いのよ!私がアールを殺した…!」
そうレピアが叫ぶと泣き崩れた。
「アァァァ!殺した!私が殺した!」
錯乱して暴れるレピアの手をノルディは抑えようとしてパンと顔を叩かれた。
目の前にいるノルディすらレピアの視界には全く入っていない。
「レピア様は悪くない!危ないから落ち着いてくれ!」
自分を殴ってレピア様の気がおさまるならいくらでもそうしてくれてもいい。
だが、今のレピア様は自分自身を許せていない。
悪意が自分に向かっている…
治癒師は心の傷まで癒せない。
手を抑え自傷行為を止めることしかノルディはできなかった。
「だれか、鎮静剤を持ってきてくれ!」
とりあえずレピアを落ち着ける事を優先させるしかなかった。
「はい!」
聖騎士の一人が答えバタバタと部屋を出た。
「私がアールを殺した!アールを殺した!アールを殺した!殺してしまった!」
レピアの泣き叫ぶ声が部屋の中に響き渡っている。
「レピア様…」
鎮静剤を持った治癒師が到着をし、レピアが眠るまで叫び続け暴れた。
ノルディはそんなレピアの手を抑えながら自分の無力さに痛感していた。
何を思い上がっていたのだろう。
自分がレピア様を支えられるなんて…
目を腫らしたレピアの寝顔を見ながらノルディの頬に涙が一筋流れた。
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