【完結】聖騎士を死なせた聖女は平民として生きる?

みやちゃん

文字の大きさ
33 / 49

33

しおりを挟む
「ノルディ…どうしてここに…」
レピアは呟いた。

どうしてこんな皇都から離れたこの街に皇子がいるのか。
何しに来たのか。
レピアの表情に懐かしさや安堵はなくノルディを警戒し、怪しむように見つめた。

そんなレピアの心情を察したノルディは悲しそうにレピアを見つめ返す。

「そんな顔をしないでくれ。まずは治療が先だ。ハンバル!」

「はい。」
ノルディの後ろから男が一人現れた。
レピアもよく知っている人…
ハンバルと呼ばれたが、レピアから見たら近所に住むバルさん。
バルは気まずそうに頭をかきながらレピアから視線を外している。

「バルさん…あなた…」
レピアの元にバルがやってきた。
バルはハンバルの姿に戻りレピアに頭を下げる。

街人は何が起こっているのかわからず黙って様子を伺った。
ノルディの服装は明らかに高貴な身分であり、滲み出る威圧感に誰しも逆らったらいけないという本能が働いていた。

「騙していて申し訳ありませんでした。俺は皇室治癒班のハンバルという者です。聖女様の治癒をする為に待機しておりました。失礼します。」
ハンバルがレピアの額に手をかざした。

パァと明るい光がハンバルの手から漏れている。

「…あなたの噂は聞いていたわ。噂通りね。」

「噂?神殿を裏切って皇室に行ったというやつですか?すいません、神殿の役に立たなくて。」
ハンバルはレピアの傷の手当てをしながら言いにくそうに言った。

ハンバルが神殿を去る時にいい思い出などなかった。
誰も皇室に行くことを歓迎しなかった。
皇室の治癒団に行くというと神殿の皆から裏切り者だと見なされ、実際に嫌がらせも受けていた。

「恩を仇で返すのか。役立たずが。」
そう言う者もいた。

良い噂など自分に流れるわけがない。
そうハンバルは思っていた。

そんなハンバルにレピアはキョトンとする。

「どこで治癒師をしようが能力とは関係ないでしょう?神殿の役に立つかどうかではなく民の為に役に立てばいい。あなたは優秀な治癒師よ。」

ハンバルは今まで外していた視線をあげ、レピアと目を合わせた。

皇室を選んだのは給金が良かったから。
養うべき家族がいる。
だが、それだけではなかった。

神殿に治癒師が偏っている。
神殿と皇室は仲が悪く情報共有などもまともにできていなかった。
神殿には入らない情報の陰で苦しむ民がいる。
救うべき民がいる。

ハンバルは皇室と神殿を繋げたいと思っていた。
それを自分が担おう、そう夢見ていた。
その考えは神殿側の頑な態度に接するうちに諦めてしまった。

皇室やハンバルに対し神殿の嫌悪感がありありと伝わってくる。
関わるだけ無駄。
できることだけしよう。
ハンバルは最初に夢見たものからかけ離れた生き方をしていた。

レピアは神殿で育ち、その体制がおかしいなど考えたこともなかった。
皇室の治癒師の存在を認めていたし神殿を去るのも良いと思っていたが、レピアの前では神官たちも態度に出さなかったため、そんな差別があったと知らなかった。

レピアはハンバルの諦めた夢を肯定してくれた。
そんな風に聞こえたハンバルは涙が流れそうになるのをグッと堪える。

「もっと早くに聖女様と関われていたら違ったのかもしれない…」
そう思ってしまうのは神殿の圧に負けたハンバルの弱さだろうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...