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「ノルディ…どうしてここに…」
レピアは呟いた。
どうしてこんな皇都から離れたこの街に皇子がいるのか。
何しに来たのか。
レピアの表情に懐かしさや安堵はなくノルディを警戒し、怪しむように見つめた。
そんなレピアの心情を察したノルディは悲しそうにレピアを見つめ返す。
「そんな顔をしないでくれ。まずは治療が先だ。ハンバル!」
「はい。」
ノルディの後ろから男が一人現れた。
レピアもよく知っている人…
ハンバルと呼ばれたが、レピアから見たら近所に住むバルさん。
バルは気まずそうに頭をかきながらレピアから視線を外している。
「バルさん…あなた…」
レピアの元にバルがやってきた。
バルはハンバルの姿に戻りレピアに頭を下げる。
街人は何が起こっているのかわからず黙って様子を伺った。
ノルディの服装は明らかに高貴な身分であり、滲み出る威圧感に誰しも逆らったらいけないという本能が働いていた。
「騙していて申し訳ありませんでした。俺は皇室治癒班のハンバルという者です。聖女様の治癒をする為に待機しておりました。失礼します。」
ハンバルがレピアの額に手をかざした。
パァと明るい光がハンバルの手から漏れている。
「…あなたの噂は聞いていたわ。噂通りね。」
「噂?神殿を裏切って皇室に行ったというやつですか?すいません、神殿の役に立たなくて。」
ハンバルはレピアの傷の手当てをしながら言いにくそうに言った。
ハンバルが神殿を去る時にいい思い出などなかった。
誰も皇室に行くことを歓迎しなかった。
皇室の治癒団に行くというと神殿の皆から裏切り者だと見なされ、実際に嫌がらせも受けていた。
「恩を仇で返すのか。役立たずが。」
そう言う者もいた。
良い噂など自分に流れるわけがない。
そうハンバルは思っていた。
そんなハンバルにレピアはキョトンとする。
「どこで治癒師をしようが能力とは関係ないでしょう?神殿の役に立つかどうかではなく民の為に役に立てばいい。あなたは優秀な治癒師よ。」
ハンバルは今まで外していた視線をあげ、レピアと目を合わせた。
皇室を選んだのは給金が良かったから。
養うべき家族がいる。
だが、それだけではなかった。
神殿に治癒師が偏っている。
神殿と皇室は仲が悪く情報共有などもまともにできていなかった。
神殿には入らない情報の陰で苦しむ民がいる。
救うべき民がいる。
ハンバルは皇室と神殿を繋げたいと思っていた。
それを自分が担おう、そう夢見ていた。
その考えは神殿側の頑な態度に接するうちに諦めてしまった。
皇室やハンバルに対し神殿の嫌悪感がありありと伝わってくる。
関わるだけ無駄。
できることだけしよう。
ハンバルは最初に夢見たものからかけ離れた生き方をしていた。
レピアは神殿で育ち、その体制がおかしいなど考えたこともなかった。
皇室の治癒師の存在を認めていたし神殿を去るのも良いと思っていたが、レピアの前では神官たちも態度に出さなかったため、そんな差別があったと知らなかった。
レピアはハンバルの諦めた夢を肯定してくれた。
そんな風に聞こえたハンバルは涙が流れそうになるのをグッと堪える。
「もっと早くに聖女様と関われていたら違ったのかもしれない…」
そう思ってしまうのは神殿の圧に負けたハンバルの弱さだろうか。
レピアは呟いた。
どうしてこんな皇都から離れたこの街に皇子がいるのか。
何しに来たのか。
レピアの表情に懐かしさや安堵はなくノルディを警戒し、怪しむように見つめた。
そんなレピアの心情を察したノルディは悲しそうにレピアを見つめ返す。
「そんな顔をしないでくれ。まずは治療が先だ。ハンバル!」
「はい。」
ノルディの後ろから男が一人現れた。
レピアもよく知っている人…
ハンバルと呼ばれたが、レピアから見たら近所に住むバルさん。
バルは気まずそうに頭をかきながらレピアから視線を外している。
「バルさん…あなた…」
レピアの元にバルがやってきた。
バルはハンバルの姿に戻りレピアに頭を下げる。
街人は何が起こっているのかわからず黙って様子を伺った。
ノルディの服装は明らかに高貴な身分であり、滲み出る威圧感に誰しも逆らったらいけないという本能が働いていた。
「騙していて申し訳ありませんでした。俺は皇室治癒班のハンバルという者です。聖女様の治癒をする為に待機しておりました。失礼します。」
ハンバルがレピアの額に手をかざした。
パァと明るい光がハンバルの手から漏れている。
「…あなたの噂は聞いていたわ。噂通りね。」
「噂?神殿を裏切って皇室に行ったというやつですか?すいません、神殿の役に立たなくて。」
ハンバルはレピアの傷の手当てをしながら言いにくそうに言った。
ハンバルが神殿を去る時にいい思い出などなかった。
誰も皇室に行くことを歓迎しなかった。
皇室の治癒団に行くというと神殿の皆から裏切り者だと見なされ、実際に嫌がらせも受けていた。
「恩を仇で返すのか。役立たずが。」
そう言う者もいた。
良い噂など自分に流れるわけがない。
そうハンバルは思っていた。
そんなハンバルにレピアはキョトンとする。
「どこで治癒師をしようが能力とは関係ないでしょう?神殿の役に立つかどうかではなく民の為に役に立てばいい。あなたは優秀な治癒師よ。」
ハンバルは今まで外していた視線をあげ、レピアと目を合わせた。
皇室を選んだのは給金が良かったから。
養うべき家族がいる。
だが、それだけではなかった。
神殿に治癒師が偏っている。
神殿と皇室は仲が悪く情報共有などもまともにできていなかった。
神殿には入らない情報の陰で苦しむ民がいる。
救うべき民がいる。
ハンバルは皇室と神殿を繋げたいと思っていた。
それを自分が担おう、そう夢見ていた。
その考えは神殿側の頑な態度に接するうちに諦めてしまった。
皇室やハンバルに対し神殿の嫌悪感がありありと伝わってくる。
関わるだけ無駄。
できることだけしよう。
ハンバルは最初に夢見たものからかけ離れた生き方をしていた。
レピアは神殿で育ち、その体制がおかしいなど考えたこともなかった。
皇室の治癒師の存在を認めていたし神殿を去るのも良いと思っていたが、レピアの前では神官たちも態度に出さなかったため、そんな差別があったと知らなかった。
レピアはハンバルの諦めた夢を肯定してくれた。
そんな風に聞こえたハンバルは涙が流れそうになるのをグッと堪える。
「もっと早くに聖女様と関われていたら違ったのかもしれない…」
そう思ってしまうのは神殿の圧に負けたハンバルの弱さだろうか。
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