【完結】聖騎士を死なせた聖女は平民として生きる?

みやちゃん

文字の大きさ
34 / 49

34

しおりを挟む
「…いい加減にしろ。何二人の世界を作っているんだ。もう治癒できただろう。離れろ。」
感動的な場面とノルディが思うはずもなくレピアとハンバルの間にノルディが割り込み強制的に終了した。

そんなに自分に警戒しなくてもいいのに。
ハンバルはレピアの前に立ちふさがり自分を威嚇するノルディにため息をついた。

「ノルディ様、自分が治癒できないからってひがまないでくださいよ。」

軽い気持ちでハンバルはノルディに嫌味を言った。
いつものノルディならハンバルのこんな一言二言など全く気にしない。
だからこそ言いたいことが言えていたが…

ハンバルはノルディの歪んだ笑みを見てしまったと思った。
絶対に言ってはいけない一言だった。
ノルディはレピアを他人に任せたくなかったのだとわかった。

神殿でも専属の治癒師として側にいたと聞いている。
そんなノルディがハンバルに治癒するように命じたのは…ノルディでは治癒できなかったから。

レピアの危機にすぐに駆けつけられるように常にレピアの周囲に聖力を張っていた。
そして今危険を読み取り、皇城からここまで瞬間移動で飛んだ。

それがどれだけの力を使うのかハンバルだって知っている。
しばらくノルディは聖力も使えないし、動き回ることも辛いだろう。

治癒師であるハンバルがいるからこそ、ノルディは力を温存するより危機に駆けつけることを選んだ。

「レピア様、私と一緒に戻ろう。ここはレピア様のいるべきところではない。」
ノルディはレピアに優しく話しかける。

「いいえ、ここは私のいるべき場所よ。」
レピアは首を横に振った。
ノルディはレピアの目を見て意思の強さを感じた。
いくら説得しても頷くことはないだろう。
仕方がない。こんな事は本当ならしたくなかったが…

「では皇族である私からの命令だ。皇都に戻れ。」
ノルディは臣下に言うように強い口調でレピアに言った。

レピアはそんな口調のノルディを初めて見てビクついた。
いつも優しく微笑んでいたノルディしか知らなかったレピアは唖然としてノルディを見つめた。

ノルディは淡々と言葉を続ける。
「あなたが聖女ではなく平民だというのなら私もそれに従わせてもらう。もう一度言う。私からの命令だ、今すぐここを去り皇都に戻るように。」

そういうとノルディはレピアからすぐに視線をずらした。
レピアの顔を見たくなかった。
意に沿わない命令に対するレピアの反応が怖かったから。

正体がバレた以上こんな危険なところにレピアを置いておくわけにはいかなかった。
嫌われたくはないが、レピアの身の安全が何よりも大切。
血を流しているレピアを見てしまったノルディは無理やりでも連れて帰る事を決めた。

「…わかりました。第2皇子ノルディ様のご命令に従います。」
レピアはノルディに初めて頭を下げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

処理中です...