【完結】聖騎士を死なせた聖女は平民として生きる?

みやちゃん

文字の大きさ
36 / 49

36

しおりを挟む
「もうやめて…」
レピアの声が震えている。
声は小さかったが、沈黙が続いていたその場で声がよく通った。

ノルディはレピアを見た。
レピアは俯いているが、目からポロポロと涙をこぼれているのが見える。

「レピア様…」
ノルディは駆け寄って抱きしめたかった。
だが、今レピア様を泣かせているのは自分であるという自覚はある。

話すべきではなかったか…

レピア様が誤解されて皆に恨まれたままなのが、どうしても嫌だった。
レピア様に嫌われる覚悟もしていた。
だが、こんなふうに泣かれるのを見たくなかった。

レピアが絡むとノルディは冷静ではなくなる。
オロオロと伸ばしている手のやり場はなく宙をかいていた。

「…私が全て悪いの。…私が愚かだったからアールを死なせたの。私なら何とかできるんじゃないかって傲慢になってたのよ。」

レピアはあの時を思い出すように静かにゆっくりと話し出した。
誰もレピアを止めない。
神殿の調査も周囲からの情報と状況から判断された。レピアがその当時の事を話すのは今回が初めてだった。

「前回、全滅した街を見て何もできない自分自身が悔しかったの。魔の扉が開きらないと何もできない自分が…」

レピアは震えて涙をこぼしている。
ノルディはもう何も言うなと止めたかったが、吐き出すことも今のレピアには必要だとグッと我慢した。
何に苦しんでいるのかわからなければ助けようがないから。

「そんな時、アールは自分の故郷を救ってくれと言ったの。アールも私の力を信じてくれたのだと思う…私もこの街を救いたい。その気持ちもあったけど…」

レピアは言おうか一瞬悩んでいるように見えた。
それほど言いにくい内容なのだとノルディにもノアにもわかった。

「それ以上に断った時のアールの反応が怖かったの…街がもし全滅すれば恨まれるのでないかと。聖女の力が及ばなかった時その後どうなるかわかっていながらね。アールに嫌われるのが怖くてそちらを優先した。私はアールを死なせ国も危険に晒した。聖女失格よ…私が死ねばよかったのに…」

レピアは今まで聖女である矜持を持って生きてきた。
誰よりも民の幸せを考えてきた。

ただ最愛の者を亡くしただけではなかった。
初めて自分の欲を優先させた結果、アールを死なせてしまったレピアの心の傷ははかり知れない。

それをこんな場で言わせてしまった事にノルディもノアも罪悪感で胸が押し潰されそうだった。

真実を知りたいなんて思うのではなかった。

「レピア様は今までだって民の為だけに生きてきました!一度くらい自分を優先させたからって何が悪いのですか?止められなかった私たちのせいです。」
ノアも涙を流しながらレピアに言う。

「そしてアールは聖騎士です。全てを知っていたのにあなたの命をかけされるなど許されない事です!」

そんなノアの言葉も否定してレピアは首を横に振った。
ノルディはそんなレピアを抱きしめた。

「ノルディ様…離して。」
レピアは驚いてノルディから離れようと手に力を入れた。
皇族といえど本来、抱き締めるなど聖女に対して無礼すぎる。
しかも婚約関係でもない異性を抱き締めるなどありえないが、レピアを抱きしめている両手が緩まる事はなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...