【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

文字の大きさ
4 / 87
第1章

聖女候補の選定

しおりを挟む
王都の神殿に着き、神官と一緒に部屋に入ってリーナは驚いた。
同じ歳くらいの少女達がたくさんいたから。
明日から聖女候補を決めるための選定があるらしい。

「この子達はみんな聖女になるの?」

「まさか!この中で聖女になるのは数人ですね。元々穢れを浄化する力がなければ聖女になれません。そして神様と結ばれ初めて聖女として認められます。」

「神と結ばれる?」
リーナは神官の言っていることが理解できなかった。

「そうです。人間一人の力など、たかが知れています。神様と結ばれれば、神様の力を少しわけてもらえます。神様に嫌われた時点でもう聖女の道はありませんね。力の大きな神様と結ばれれば、その分力は強くなるのですよ。」

リーナは頑張れば、聖女になれると思っていた。
そうではない事がわかり、だんだん不安になってきた。
キラキラしたドレスを着て少女達も多い。
貴族なんだろうか?
村娘の自分がここにいるのがおかしいような気がしてきた。

こんなに多くの少女達の中で神様に選ばれて聖女になるとはどうしても思えなかった。

「あなた、みすぼらしいわね。平民がこんな所に来るんじゃないわよ。」
ドレスの少女達の中でも特に目立っていた少女が話しかけてきた。
きらびやかなドレスの腰に手を当てている。
フワフワの綺麗な髪、少しきつめな目元、色がつけられている可愛い口元。
誰が見ても美少女と言うだろう。
初めてお姫様を見たとリーナは思った。

「アリーティナ様、この方も聖女候補です。」
神官がアリーティナというお姫様の暴言をやんわりと注意をする。

「平民が聖女になどなるはずがないわ。穢れを浄化する力は高貴な血筋しか持てないものだもの。」
アリーティナはリーナに冷たい視線を送った。
彼女の視線には悪意がある。
この場に平民である私がいる事自体がおかしい。
全身でそう言っていた。

神官は答える。
「確かに貴族に多いですが、平民からも聖女は出ています。」

来る途中の馬車で神官は説明してくれた。
貴族の方が聖女になる事が多く、平民はほとんどいないと。
その原因は明らかになっていないらしいが、血筋が関係しているかもと言っていた。
遺伝的なもの?
なら私はどうして力があるのか聞いた。
突然、そういう方がおられるとだけ言っていた。
私にはその力があると神官は言っていたが‥
今、目の前の彼女をみるとやっぱり嘘なんじゃと思ってしまう。

「その話本当なのかしら。最後まで残るか楽しみよ。そんなみすぼらしい格好で神様なんかに選ばれるものですか!」
笑いながら私たちから離れる。

「あの方には気をつけてください。実家は公爵であり、王城や神殿にも権力が使えます。」
こっそり話してくれる。
神官さんはいい人だ。

「私残れないような気がしてきました。」

「きっと残れます。あなたの穢れを浄化する姿に私は感動しました。あなたが聖女でないなら、はっきり言って聖女になれる人なんていませんよ!」

神官さんは熱弁する。

「ありがとうございます。」
そんな風に人から褒められたことがなかったリーナは少し照れくさくなり、下を向いてお礼を言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

元・聖女ですが、旦那様の言動が謎すぎて毎日が試練です

おてんば松尾
恋愛
かつて“奇跡の聖女”と呼ばれたステファニー・シュタインは、光の魔力で人々を癒す使命を背負い、王命によって公爵レイモンドと政略結婚を果たす。だが、奉仕の日々に心はすり減り、愛なき結婚生活はすれ違いの連続だった。 彼女は忘れられた灯台で不思議な灯台守と出会う。彼の魔法によって、ステファニーは聖女としての力と記憶を失うことを選ぶ。過去も夫も忘れた彼女は、まるで別人のように新しい人生を歩み始めるが―― 他サイトで完結している作品を上げます。 よろしければお読みください。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...