【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

文字の大きさ
44 / 87
第2章

神々とのやりとり(ラリーン視点)

しおりを挟む
「初めまして、ラリーンと申します。今日はよろしくお願い申し上げます。」
神との名付けの儀が急ぎ行われた。
神との絆を結ぶためには名前が必要だ。ラリーンは自分の名前を女神達に伝える。

「正式な儀式じゃないし、そんなにかしこまらないで」
物の時を操る女神メビールがラリーン周りを飛び回っている。

「メビール、その人はマークバルダの聖女、失礼しちゃだめよ!」
情報の神ルーマがメビール神を注意する。

「そうそう、ヴォルティス様といい、マークバルダといい、どうして男神達は聖女に執着するのかしらね。」
メビール神は大げさにため息をつく。
ルーマ神の注意はサラサラ聞く気はないようだ。

「確かにそうですね。」
静かに頷いているのは人の死や輪廻に関わる女神ミラージュだ。
言葉数は少なく、静かに立っているだけなのに存在感が大きい。その凛とした様子と銀色の真っ直ぐな髪がとてもよく合っている。

「もう、ミラージュまで‥」
ルーマ神は苦笑いをする。

この神々は仲が良いようだ。神々の仲が悪いと結ばれた後、聖女が間に入り苦労しているのを聞く。マークバルダ様は考慮してくれたのだろうか。

そんな事を思いながら神々のやりとりを見つめていたが、この3女神が選ばれたのは別の理由だとすぐに知る。

「聖女ラリーン、マークバルダが困らせていない?」
メビール神がラリーンの肩にとまり耳元で聞く。

「いえ、いつも気にかけていただいています。」

「それなら良いんだけど‥」
メビール神の言葉は何か含みを持つような感じを受けるが、追求はしない。神へ話しかけて良いのは神から許可があった時のみだ。

私の様子を見ていたミラージュ神は微笑む。
「自由に話していただいて構わないですよ。ここには私達しかいませんから。」

「心遣いありがとうございます。」
ラリーンもこの神々ならうまくやっていける気がした。

「どうせ、マークバルダ様は何も説明していないと思うのでは話しますが‥私たちは高位の女神ですが、それでももっと高位の神はいます。状況を考えるのならその神と絆を結ぶ方が浄化の力は上がり良いのは誰の目にもわかります。」
ミラージュ神が今回の儀について補足してくれる。

横からメビールが口を挟んでくる。
「それなのに私達女神をマークバルダは選んだのよ。あなたへの執着からきてると思っているわけ。男神は結ばせたくないなんて。」

世界の破滅にも影響するかもしれない事態を前にマークバルダ様の対応に怒っているのかもしれない。

ルーマ神は慌てて言う。
「誤解しないでね、こういう言い方なだけで怒っている訳じゃないのよ。メビール達が言っている神は多くの聖女と絆を結び、手を出しまくった挙句ヴォルティス様から神殿への出禁になったの。だから、マークバルダが警戒するのもわかるし。」

そんな神いたかしらと思っていると600年ほど前の出来事だと教えてくれた。
ついこの間のように話していたが、私からみたら遠い過去の話だ。神々との距離を感じ、少し胸がチクリと痛む。

「何が言いたいかというと‥あなたはマークバルダに気に入られている。他の男神が手を出すのを嫌がるくらいに。」
メビール神は話を戻す。

「はい。」

「私達が絆を結んでも少しだけあなたの負担が減るだけだと私達は見ている。マークバルダはヴォルティス様の次に神力が強いの。その神が力不足だというならきっと私達なんか気持ち程度にしかならない。」
ルーマ神は現状を説明してくれた。現状把握と分析能力は凄いとマークバルダ様から聞いたことがある。

ミラージュ神は私を見つめて問う。
「力を使いすぎて老化が始まっているのでしょう‥長くは持たないとわかっていますね。どうしてマークバルダ様に言わなかったのです?止められると思ったからですか?」

「はい。申し訳ありません。」
その事を知れば、きっとマークバルダ様なら私の浄化を止める。それがリーナさんにとって最悪な結果となろうとも。
この3神は情報、時、人の死に関わる神だ。私の状態などお見通しのようだ。

ルーマ神は言いにくそうに話し出す。
「そこで私達から提案があるの。高位の男神とも絆を結び、少しだけ状況を引き延ばすか、この状況を打破するためにを受け入れるか‥」

ある事?

「初めての試みだし、必ずうまくいくとは限らないからマークバルダは絶対に反対すると思うんだよね。怒らすと後が怖いんだけど、仕方ない。」
ブルブルとメビール神は震える。

「もし、そちらを選ばれるのならばマークバルダ様には何も言わずに進めます。邪魔されたら私達では止められないので。」
ミラージュも苦笑している。

「あなたの人生を大きく変えます。内容をきいてから決めてください。」

神々から語られた内容に大きな衝撃を受けたが、受け入れる事にした。
最優先にしなければならないのはリーナさんの完全な闇落ちをさせない事なのだから。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

元・聖女ですが、旦那様の言動が謎すぎて毎日が試練です

おてんば松尾
恋愛
かつて“奇跡の聖女”と呼ばれたステファニー・シュタインは、光の魔力で人々を癒す使命を背負い、王命によって公爵レイモンドと政略結婚を果たす。だが、奉仕の日々に心はすり減り、愛なき結婚生活はすれ違いの連続だった。 彼女は忘れられた灯台で不思議な灯台守と出会う。彼の魔法によって、ステファニーは聖女としての力と記憶を失うことを選ぶ。過去も夫も忘れた彼女は、まるで別人のように新しい人生を歩み始めるが―― 他サイトで完結している作品を上げます。 よろしければお読みください。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

処理中です...