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第2章
ラリーンの回想(ラリーン視点)
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「今日から聖女となりました、ラリーン・アスベールです。よろしくお願い致します。」
ラリーンは16歳の時、聖女の儀でマークバルダと結ばれ無事に聖女となった。
聖女となり、先輩方に挨拶まわりをしていた。その中の一人にマリーという聖女がいた。
「あなた表情筋が硬いわね!美人なのに、もっと笑いなさい。」
頬を人差し指でツンツン押してくるのは神殿でも有名な聖女だった。
笑顔で誰よりも多くの穢れを浄化する最高位の聖女。聖女達の憧れの存在だった。
「やめてください。顔で得をしたことなんてありませんから。」
何もしていないのに目立つ顔のせいで妬まれたり、いじめられたりもした。
髪はきつくまとめ、地味な服を着て目立たないようにしていた。
マリーさんは「もったいない」とため息をつく。
「それがあなただと言うならいいけど、無理してそうしてるのならやめた方がいいわ。だって、人生は一度しかないのよ、自分の為に生きなくちゃ。」
明るく笑い飛ばすマリーさんを見ているとそんな風に考えられない自分が惨めになり辛かった。だから、極力関わらないようにしていたのに‥
それからも何かあるごとにマリーさんはラリーンに声をかけた。マリーさんのような存在ははっきり言って迷惑だった。
「初任務ご苦労だった。新人があれだけの穢れを浄化できるなんてな!将来有望だ。期待している。」
神官長は笑いながらラリーンに声をかけた。
「ありがとうございます」と頭を下げ、すぐに部屋に戻った。
ベットに飛び込みぼんやりと独り立ちの初任務の時の事を思い返していた。
何が将来有望だ‥
トントンと扉がノックされる。
誰にも会いたくなかったが、急な用事の可能性もあるため、扉を開けるとマリーさんが立っていた。
「初任務おつかれ!一緒に飲もう!って言ってもお酒じゃないけど。」
グラスとジュースの瓶を私の前に差し出す。
「‥そんな気分じゃありません。」
扉を閉めようとするもマリーさんはグイグイと中に入ってきた。
「いいから、いいから」
何がいいのかわからない。
そのまま押し切ってマリーさんは部屋に入り、グラスにジュースを注いだ。
「お疲れさま。」
しっかりと椅子に座っていて帰る気配がない。ポケットからお菓子も出てきた。
「いえ、疲れていません。これ飲んだら帰ってくれますか?」
マリーさんが鬱陶しかった。そっとしておいてほしい。今はそんな気分じゃない。空気を読まない彼女に苛立ちを感じていた。
「それは無理。今のあなたをほっておけない。」
いつも笑っているマリーさんが真剣な目で見つめる。いつもと違う様子に戸惑う。
マリーさんは椅子から立ち上がり、私をギュッと抱きしめた。何が起こったかわからず固まっていると耳元で囁いた。
「辛ったでしょう。あなたができる精一杯の事をした。頑張ったわ。」
みな、よくやったとしか言わなかった。
だけど‥違う。
穢れが発生し向かった先で私も神官も愕然として穢れをみつめた。
何があったのかはわからないが、6人の穢れがうまれているのだ。
聖女一人では力不足だ。浄化はよくやって2、3人が限度だと言われているため、応援がすぐに呼ばれた。
穢れはだんだんと大きくなっていく。このままだと闇落ちする‥
だけど、力以上の穢れに手を出せばのまれる。
初任務で経験の少ない私にはどのくらいまでの穢れが浄化できるのか判断できなかった。
そこで浄化する者を選んだ。先輩と一緒に浄化した時は3人はできていた。
今くらいの穢れの大きさならいけるはず。
私は4人の穢れを浄化した。助けられる人数を増やしたかったから、穢れの少ない者を優先した。
後の2人は応援が間に合わず、闇落ちし明日処刑されると神殿に戻ってから聞いた。
自分が選ばなかった人は処刑される‥
マリーさんなら助けるられたはずだ。向かったのが私だったから‥自分の力不足のせいで2人は明日死ぬ。
優先するべきはその穢れの多かった2人ではなかったのか。後の4人は応援が来てからでも間に合ったのではないか。私の判断が間違ったのではないだろうか。
頭の中はぐちゃぐちゃだった。
私は4人を救ったと初任務での業績を神殿は褒め称えた。これからもっと力をつければ、最高位の聖女となる事も夢ではないと‥
そんなのどうでもいい。
ラリーンから見れば4人しか救えなかった。
自分で判断するのが怖くなった。
人を選び、残りは死なせてしまう。正しく判断できていたのだろうか。
マリーに抱きしめながら涙が溢れる。今まで泣けなかった。自分の間違いを認めてしまう気がして怖かった。
「もうやめたい‥」
今まで我慢していた言葉がこぼれる。
聖女は簡単にやめられるものではない。ラリーンだってわかっている。
神と結ばれた聖女を神殿だって手放すわけがない。
だけど‥私は‥
「あなたはなぜ、聖女を目指したの?」
マリーはラリーンに問う。
「私はみんなを救いたかったから‥でも救えない‥」
マリーの抱きしめる力は強くなる。
「その思いを貫きなさい。辛いからと言って逃げ出すと一生その事に囚われる。いくら嘆いても過去は変えられない。でも、これからあなたはまだたくさんの人を救う事ができる。過去に囚われてそれを放棄するの?この先、後悔しない?」
マリーさんの言葉は今の私にとって痛い言葉だった。自分の責任から逃げ出したかった。それをマリーさんはダメだと言う。
神殿のように私を使える駒として扱っているのではない。自分の為に言ってくれているのはわかる。
皆が褒めてくれる中、マリーさんだけは私が辛いと確信していた。
マリーさんもそんな風に辛い思いを抱えて今いるのだろうか。
だったら、どうしてあんな風に笑えるのだろう。
あんなに鬱陶しかったマリーさんをもっと知りたいと強く思った。
ラリーンは16歳の時、聖女の儀でマークバルダと結ばれ無事に聖女となった。
聖女となり、先輩方に挨拶まわりをしていた。その中の一人にマリーという聖女がいた。
「あなた表情筋が硬いわね!美人なのに、もっと笑いなさい。」
頬を人差し指でツンツン押してくるのは神殿でも有名な聖女だった。
笑顔で誰よりも多くの穢れを浄化する最高位の聖女。聖女達の憧れの存在だった。
「やめてください。顔で得をしたことなんてありませんから。」
何もしていないのに目立つ顔のせいで妬まれたり、いじめられたりもした。
髪はきつくまとめ、地味な服を着て目立たないようにしていた。
マリーさんは「もったいない」とため息をつく。
「それがあなただと言うならいいけど、無理してそうしてるのならやめた方がいいわ。だって、人生は一度しかないのよ、自分の為に生きなくちゃ。」
明るく笑い飛ばすマリーさんを見ているとそんな風に考えられない自分が惨めになり辛かった。だから、極力関わらないようにしていたのに‥
それからも何かあるごとにマリーさんはラリーンに声をかけた。マリーさんのような存在ははっきり言って迷惑だった。
「初任務ご苦労だった。新人があれだけの穢れを浄化できるなんてな!将来有望だ。期待している。」
神官長は笑いながらラリーンに声をかけた。
「ありがとうございます」と頭を下げ、すぐに部屋に戻った。
ベットに飛び込みぼんやりと独り立ちの初任務の時の事を思い返していた。
何が将来有望だ‥
トントンと扉がノックされる。
誰にも会いたくなかったが、急な用事の可能性もあるため、扉を開けるとマリーさんが立っていた。
「初任務おつかれ!一緒に飲もう!って言ってもお酒じゃないけど。」
グラスとジュースの瓶を私の前に差し出す。
「‥そんな気分じゃありません。」
扉を閉めようとするもマリーさんはグイグイと中に入ってきた。
「いいから、いいから」
何がいいのかわからない。
そのまま押し切ってマリーさんは部屋に入り、グラスにジュースを注いだ。
「お疲れさま。」
しっかりと椅子に座っていて帰る気配がない。ポケットからお菓子も出てきた。
「いえ、疲れていません。これ飲んだら帰ってくれますか?」
マリーさんが鬱陶しかった。そっとしておいてほしい。今はそんな気分じゃない。空気を読まない彼女に苛立ちを感じていた。
「それは無理。今のあなたをほっておけない。」
いつも笑っているマリーさんが真剣な目で見つめる。いつもと違う様子に戸惑う。
マリーさんは椅子から立ち上がり、私をギュッと抱きしめた。何が起こったかわからず固まっていると耳元で囁いた。
「辛ったでしょう。あなたができる精一杯の事をした。頑張ったわ。」
みな、よくやったとしか言わなかった。
だけど‥違う。
穢れが発生し向かった先で私も神官も愕然として穢れをみつめた。
何があったのかはわからないが、6人の穢れがうまれているのだ。
聖女一人では力不足だ。浄化はよくやって2、3人が限度だと言われているため、応援がすぐに呼ばれた。
穢れはだんだんと大きくなっていく。このままだと闇落ちする‥
だけど、力以上の穢れに手を出せばのまれる。
初任務で経験の少ない私にはどのくらいまでの穢れが浄化できるのか判断できなかった。
そこで浄化する者を選んだ。先輩と一緒に浄化した時は3人はできていた。
今くらいの穢れの大きさならいけるはず。
私は4人の穢れを浄化した。助けられる人数を増やしたかったから、穢れの少ない者を優先した。
後の2人は応援が間に合わず、闇落ちし明日処刑されると神殿に戻ってから聞いた。
自分が選ばなかった人は処刑される‥
マリーさんなら助けるられたはずだ。向かったのが私だったから‥自分の力不足のせいで2人は明日死ぬ。
優先するべきはその穢れの多かった2人ではなかったのか。後の4人は応援が来てからでも間に合ったのではないか。私の判断が間違ったのではないだろうか。
頭の中はぐちゃぐちゃだった。
私は4人を救ったと初任務での業績を神殿は褒め称えた。これからもっと力をつければ、最高位の聖女となる事も夢ではないと‥
そんなのどうでもいい。
ラリーンから見れば4人しか救えなかった。
自分で判断するのが怖くなった。
人を選び、残りは死なせてしまう。正しく判断できていたのだろうか。
マリーに抱きしめながら涙が溢れる。今まで泣けなかった。自分の間違いを認めてしまう気がして怖かった。
「もうやめたい‥」
今まで我慢していた言葉がこぼれる。
聖女は簡単にやめられるものではない。ラリーンだってわかっている。
神と結ばれた聖女を神殿だって手放すわけがない。
だけど‥私は‥
「あなたはなぜ、聖女を目指したの?」
マリーはラリーンに問う。
「私はみんなを救いたかったから‥でも救えない‥」
マリーの抱きしめる力は強くなる。
「その思いを貫きなさい。辛いからと言って逃げ出すと一生その事に囚われる。いくら嘆いても過去は変えられない。でも、これからあなたはまだたくさんの人を救う事ができる。過去に囚われてそれを放棄するの?この先、後悔しない?」
マリーさんの言葉は今の私にとって痛い言葉だった。自分の責任から逃げ出したかった。それをマリーさんはダメだと言う。
神殿のように私を使える駒として扱っているのではない。自分の為に言ってくれているのはわかる。
皆が褒めてくれる中、マリーさんだけは私が辛いと確信していた。
マリーさんもそんな風に辛い思いを抱えて今いるのだろうか。
だったら、どうしてあんな風に笑えるのだろう。
あんなに鬱陶しかったマリーさんをもっと知りたいと強く思った。
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