52 / 87
第2章
キースが語る過去2(キース視点)
しおりを挟む
マリーと共に夫婦として人の街に住み出した。神殿から見つからないようにひっそりと生活していたが2人でいられるだけで幸せだった。
「キース、子どもができたの!」
マリーが嬉しそうに俺に報告してくれ、俺の手を自分のお腹に持っていった。
ここにマリーと俺の子がいるのか‥そう思うとジーンと熱いものが込み上げてくる。
あぁ、色々あったがマリーと夫婦になれて良かった。
こんなに幸せで良いのだろうか。
幸せを感じれば感じるほどヴォルティス様のブレスレットが目に入った。
ブレスレットは少し薄くなっている‥徐々に人に近づいているのがわかる。
もう後数ヶ月もすれば完全に人になって、このブレスレットも見れなくなってしまう。
だが、一生忘れない。
このブレスレットの存在もヴォルティス様の想いも‥
マリーが産んだのは女の子だった。
それはそれはかわいい女の子。
マリーは俺に似ていると少し拗ねていたが、自分に似ている事が少しだけ嬉しかった。
左手を伸ばすと小さな指で握ってきた。
その瞬間、大きな力を感じた。
聖女の力‥しかも見た事もない大きな力をこの子は有している。
もうほぼ見えなくなっていたブレスレットが赤ん坊の力に反応して光った。
俺の力に反応したのかと思い、残りの神の力を込めてブレスレットのない右手で握る。反応がない‥
「こんな事が‥」
このブレスレットはヴォルティス様の力で作られたものだ。
ヴォルティス様の力に反応したのだとわかる。
希望の神としての力がまだ十分にある時に祈った。
ヴォルティス様の希望の光となる存在に出会えるようにと‥
時同じくマリーは妊娠した。
これは偶然ではないと確信した。
この子はヴォルティス様の為に生まれてきたのだ‥
そこまで話すとマークバルダがバンと机を叩き立ち上がって怒鳴った。
「なぜ、そんな重要な事を今まで黙っていたんだ!早く言ってくれれば、こんなややこしい事にはなっていなかっただろう!」
怒鳴られたキースは
「だから怒るなって言ったのに」と耳を抑えている。
「確かにヴォルティス様の事だけを考えたらすぐに知らせるべきだっただろう。ヴォルティス様は大切に思っているが、同時に俺はリーナの父親だ。リーナの幸せも考えたい。運命で縛りたくなかったんだ。」
親心は複雑なんだとキースは言う。
「リーナを無理やりヴォルティス様の前に出したくはなかった。だが、リーナが自分から望むなら親としては認めるしかないだろう?運命なら必ず出会えるだろうしな。俺の希望の力が強いのは知っているだろう?」
誰も否定できなかった。
元々のキースの力の強さは知っていたし、何より祈りでヴォルティス様の聖女を誕生させるなんて‥あり得ないことをしたのだから。
この中で親であるのはキースだけだ。
親心がどうかは皆わからなかったが、リーナを思うキースの気持ちは皆に伝わっていた。
「幸せいっぱいだったのに、事故で死んじゃうし、マリーや子ども達には苦労かけたし‥」
だんだんとキースの声が小さくなってきた。
「マリーと一緒にあの世に行こうと思って寿命を全うするのを待っていたんだ。あんなにちょっとの時間しか一緒にいられないなんておかしいだろう?バラバラに生まれ変わりたくないし、次も夫婦になりたいからな。」
そこまで話すとキースは一旦止まる。
「それをあの男は‥マリーや子ども達、受け入れてくれた村人達まで手を出すなんて‥」
左手のブレスレットを見つめ悲しそうに言葉を吐き出した。
キースの声が低くなったのを皆気づいた。
いつも笑顔で皆を明るくしていたキースとは思えない悲痛の表情をしていた。
————————-
「なんでこんな事に⁉︎」
しばらく離れただけでどうしてこんな事に‥
リーナが心配で見にいっていて村から離れていたのだ。
目の前には愛しのマリーと子ども達が血まみれで亡くなっている。
「マリー!ルート!ネマ!すまない、守りきれなくて‥」
皆の亡骸の前で涙を流した。どのくらい泣いたのかわからないくらいずっと皆の側にいた。
そうしていると兵士たちが最愛なる妻と子ども達、村人達を埋葬してくれ祈りを捧げた。次の生では幸せになれるようにと‥
それにもかかわらず、見渡せば亡くなった村人の跡から穢れがうまれている。
村人達は相当苦しんで死んだ事がわかる。
俺の怒りは頂点に達した。
誰がこんな事をした!
許せない、大切な者達をこんな目に合わせた奴らを俺は許さない。
復讐してやる。そう誓った。
俺は死んで土に埋められたが、腕にはヴォルティス様からのブレスレットがまだはまっている。ブレスレットの力なら人に復讐などたやすい事だ。
俺は二度と生まれ変われないだろう。輪廻の神ミラージュはそんな者を決して許さない。
だが、そんなの知った事か。
俺の家族や村人達を殺したやつを地獄に落とす。
そんな事を考えているとリーナが目の前いるのに気づいた。
どうしてここに来た?
「見るな!」
叫ぶがリーナには届かなかった。
魂しかない俺はリーナに触る事もできない。
村中の穢れがリーナに集まりリーナはガクガクと震えて倒れ‥苦しみだす。
リーナ、リーナ、リーナ!
リーナの側にいき届かない声をかける事しかできない自分が悔しかった。腹立たしかった。
何もできないまま、起き上がったリーナは闇落ちをしていた‥
どうしてこんな事に‥
全てを俺から奪うのか?皆が幸せに生きて欲しいと祈っていたのに。
ヴォルティス様のブレスレットは決して使わず人として祈ったのがいけなかったのか‥
リーナの闇落ちを見て涙が溢れる。
「キース!泣いている場合ではないわ!しっかりして!」
マリーの怒鳴り声が聞こえる。
「マリー‥」
目の前に半透明となったマリーの魂が浮かんでいた。
「キース、子どもができたの!」
マリーが嬉しそうに俺に報告してくれ、俺の手を自分のお腹に持っていった。
ここにマリーと俺の子がいるのか‥そう思うとジーンと熱いものが込み上げてくる。
あぁ、色々あったがマリーと夫婦になれて良かった。
こんなに幸せで良いのだろうか。
幸せを感じれば感じるほどヴォルティス様のブレスレットが目に入った。
ブレスレットは少し薄くなっている‥徐々に人に近づいているのがわかる。
もう後数ヶ月もすれば完全に人になって、このブレスレットも見れなくなってしまう。
だが、一生忘れない。
このブレスレットの存在もヴォルティス様の想いも‥
マリーが産んだのは女の子だった。
それはそれはかわいい女の子。
マリーは俺に似ていると少し拗ねていたが、自分に似ている事が少しだけ嬉しかった。
左手を伸ばすと小さな指で握ってきた。
その瞬間、大きな力を感じた。
聖女の力‥しかも見た事もない大きな力をこの子は有している。
もうほぼ見えなくなっていたブレスレットが赤ん坊の力に反応して光った。
俺の力に反応したのかと思い、残りの神の力を込めてブレスレットのない右手で握る。反応がない‥
「こんな事が‥」
このブレスレットはヴォルティス様の力で作られたものだ。
ヴォルティス様の力に反応したのだとわかる。
希望の神としての力がまだ十分にある時に祈った。
ヴォルティス様の希望の光となる存在に出会えるようにと‥
時同じくマリーは妊娠した。
これは偶然ではないと確信した。
この子はヴォルティス様の為に生まれてきたのだ‥
そこまで話すとマークバルダがバンと机を叩き立ち上がって怒鳴った。
「なぜ、そんな重要な事を今まで黙っていたんだ!早く言ってくれれば、こんなややこしい事にはなっていなかっただろう!」
怒鳴られたキースは
「だから怒るなって言ったのに」と耳を抑えている。
「確かにヴォルティス様の事だけを考えたらすぐに知らせるべきだっただろう。ヴォルティス様は大切に思っているが、同時に俺はリーナの父親だ。リーナの幸せも考えたい。運命で縛りたくなかったんだ。」
親心は複雑なんだとキースは言う。
「リーナを無理やりヴォルティス様の前に出したくはなかった。だが、リーナが自分から望むなら親としては認めるしかないだろう?運命なら必ず出会えるだろうしな。俺の希望の力が強いのは知っているだろう?」
誰も否定できなかった。
元々のキースの力の強さは知っていたし、何より祈りでヴォルティス様の聖女を誕生させるなんて‥あり得ないことをしたのだから。
この中で親であるのはキースだけだ。
親心がどうかは皆わからなかったが、リーナを思うキースの気持ちは皆に伝わっていた。
「幸せいっぱいだったのに、事故で死んじゃうし、マリーや子ども達には苦労かけたし‥」
だんだんとキースの声が小さくなってきた。
「マリーと一緒にあの世に行こうと思って寿命を全うするのを待っていたんだ。あんなにちょっとの時間しか一緒にいられないなんておかしいだろう?バラバラに生まれ変わりたくないし、次も夫婦になりたいからな。」
そこまで話すとキースは一旦止まる。
「それをあの男は‥マリーや子ども達、受け入れてくれた村人達まで手を出すなんて‥」
左手のブレスレットを見つめ悲しそうに言葉を吐き出した。
キースの声が低くなったのを皆気づいた。
いつも笑顔で皆を明るくしていたキースとは思えない悲痛の表情をしていた。
————————-
「なんでこんな事に⁉︎」
しばらく離れただけでどうしてこんな事に‥
リーナが心配で見にいっていて村から離れていたのだ。
目の前には愛しのマリーと子ども達が血まみれで亡くなっている。
「マリー!ルート!ネマ!すまない、守りきれなくて‥」
皆の亡骸の前で涙を流した。どのくらい泣いたのかわからないくらいずっと皆の側にいた。
そうしていると兵士たちが最愛なる妻と子ども達、村人達を埋葬してくれ祈りを捧げた。次の生では幸せになれるようにと‥
それにもかかわらず、見渡せば亡くなった村人の跡から穢れがうまれている。
村人達は相当苦しんで死んだ事がわかる。
俺の怒りは頂点に達した。
誰がこんな事をした!
許せない、大切な者達をこんな目に合わせた奴らを俺は許さない。
復讐してやる。そう誓った。
俺は死んで土に埋められたが、腕にはヴォルティス様からのブレスレットがまだはまっている。ブレスレットの力なら人に復讐などたやすい事だ。
俺は二度と生まれ変われないだろう。輪廻の神ミラージュはそんな者を決して許さない。
だが、そんなの知った事か。
俺の家族や村人達を殺したやつを地獄に落とす。
そんな事を考えているとリーナが目の前いるのに気づいた。
どうしてここに来た?
「見るな!」
叫ぶがリーナには届かなかった。
魂しかない俺はリーナに触る事もできない。
村中の穢れがリーナに集まりリーナはガクガクと震えて倒れ‥苦しみだす。
リーナ、リーナ、リーナ!
リーナの側にいき届かない声をかける事しかできない自分が悔しかった。腹立たしかった。
何もできないまま、起き上がったリーナは闇落ちをしていた‥
どうしてこんな事に‥
全てを俺から奪うのか?皆が幸せに生きて欲しいと祈っていたのに。
ヴォルティス様のブレスレットは決して使わず人として祈ったのがいけなかったのか‥
リーナの闇落ちを見て涙が溢れる。
「キース!泣いている場合ではないわ!しっかりして!」
マリーの怒鳴り声が聞こえる。
「マリー‥」
目の前に半透明となったマリーの魂が浮かんでいた。
0
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
元・聖女ですが、旦那様の言動が謎すぎて毎日が試練です
おてんば松尾
恋愛
かつて“奇跡の聖女”と呼ばれたステファニー・シュタインは、光の魔力で人々を癒す使命を背負い、王命によって公爵レイモンドと政略結婚を果たす。だが、奉仕の日々に心はすり減り、愛なき結婚生活はすれ違いの連続だった。
彼女は忘れられた灯台で不思議な灯台守と出会う。彼の魔法によって、ステファニーは聖女としての力と記憶を失うことを選ぶ。過去も夫も忘れた彼女は、まるで別人のように新しい人生を歩み始めるが――
他サイトで完結している作品を上げます。
よろしければお読みください。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~
夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力!
絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。
最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り!
追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる