【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第2章

キースの語る過去3(キース視点)

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「マリー、どうして?」
涙でマリーがぼやける‥

「リーナが穢れを吸収したから動けるようになったの!あの時の恐怖や苦痛は全部リーナが持っていったわ!」
マリーは早口で説明してくれる。
マリーの横にはルートとネマが半透明でたっている。

あぁ、この村の穢れが消えている。
みんな穢れから解き放たれたのか‥

子ども達はマリーの後ろに隠れてこちらを伺っている。
「ルート、ネマあなたのお父さんよ。ずっとそばいてくれたのよ。」
マリーは子ども達に俺を紹介した。
2人とも小さかったから仕方ないが、父として認めてもらえていない事に心が痛んだ。

「ごめん、先に死んで‥今回も守れなくてごめん‥」
声が震える。
まだこんなに小さいのに死なせてしまった。どうしても守りたかったのに‥

「どっちもあなたのせいじゃない。この子達もちゃんと知ってるわ。だから、謝るのではなくてちゃんとこの子達を見て話して。」

マリーの後ろにいる子達に見る。

「俺の子どもとして生まれてきてくれてありがとう。お母さんを支えてくれてありがとう。」
泣きながらルートとネマに声をかける。

「お父さん?」
戸惑いながらネマは俺に言った。
初めてお父さんと呼ばれた。
俺の涙腺は完全に壊れた。止めどもなくこぼれる涙と鼻水を見てマリーも子ども達も完全に引いていたのは見なかった事にした。

「ルート、ネマ、先にあの世に行っててくれる?お母さん達はお姉ちゃんを助けたらすぐに後を追いかけるから。」
マリーは簡単に子ども達に状況を説明した。
お姉ちゃんがみんなの苦しみを取ってくれたこと、その為に今お姉ちゃんが苦しんでいる事、それを自分達が助けに行くことを。

「お姉ちゃん、みんなを助ける聖女になったんだね!」ネマが嬉しそうにいう。
「僕たちもう子どもじゃないから大丈夫だよ!必ずきてね、まだお父さんと話したいことあるんだから。」
ニコッと笑ってルートはマリーの言葉に従ってネマの手を握り村人達と一緒に天にのぼった。

俺とマリーは状況を確認しあった。
リーナの力を知っていた俺たちはその力を信じる事にした。




「聖女候補の力?」
マークバルダが呟く。

「おい、いちいち話止めるなよ。進まないだろ。」
キースはため息をつく。

「まぁ、いい。ちょっと逸れるがリーナの力について話さないといけないしな。どうしてヴォルティス様に聖女を作れないのか。それがリーナがヴォルティス様の聖女となれる理由だ。」

「聖女と絆を結べないのは、私が穢れどころか負の感情すら受け付けないからだ。」

リーナの力の話のあたりからヴォルティス様が急に興味を持ち出した。
リーナの髪を触りながらウットリと見つめるヴォルティス様。
わかりやすいというか、単純というか‥まぁ、我慢し続けたヴォルティス様にとっていい傾向だからよいけど‥父親としてはこんなとこ見たくない。

気持ち切り替えてないといけないと思い、息をフーと大きく吐いて話を戻す。

「そうですね。リーナも負の感情がないわけではないんです。だけど、浄化の力でその瞬間に消してしまう‥リーナ、お前は人に対して怒ったり、恨んだり、憎んだりしたことがないだろう?元々できないんだよ。」

リーナを見る。そんな風にしてしまったのは俺だ。よい感情ではないけど、それでも人としての感情を消した罪悪感はずっと抱えてきた。

「村を全滅させたあの男にすら怒りを感じなかっただろう?すまなかった、お前をそんな風にするつもりなんかなかったんだ。」

シーンと静まり返る室内。

なぜ、リーナがヴォルティス様の聖女となれるのかがわかったが‥人としての感情を消してまで叶える希望の力ってどうなのか。
みんな心の中で思ったが、当のリーナとヴォルティス様は違った。

「そうなんだ!私ちょっと変かもって思ってたけど、神様の為だったんですね!」
リーナは嬉しそうにヴォルティスに笑いかけた。

「リーナが私の為にか‥いい響きだ。」
ウットリとリーナを見つめるヴォルティス様。

「いや、ヴォルティス様とリーナが良ければいいんだけど‥今まで悩んで損した。」

リーナが生まれてからずっと罪悪感に苛まれてきたんだ。
ボソリと声が出てしまうのは許してほしい。

「もう、キースったら、だから大丈夫だって言ってたのに。」
フフフと笑いながらリーナの中からマリーが離れたのをリーナは直感した。

「ミラージュ、マリーにも頼む。ミラージュに実体化してもらえなかったら、みんなにマリーが見えないからな。」

「はい、キース様」
ミラージュが立ち上がり、何もないところに手をかざすとマリーが現れた。
霊体であるマリーを人の死と輪廻を司るミラージュが実体化させたのだ。

「マリー、会いたかった!」
キースはマリーを抱きしめ熱いキスをした。
皆が唖然とそれを眺めているが、いつまでも終わらない。
皆にマリーを見せたいのではなく、自分が抱きつきたいだけだと皆が思った。

「リーナ、お前の両親は‥何というかいつもああだったのか?」
コホンと咳払いをしてヴォルティスはリーナに尋ねる。

「そうですね、仲が良かったですね。私の憧れです!」

「そうなのか‥」

その場面を見慣れているリーナにはいつもの光景だったが‥

神々、聖女、神官は恋愛に関して初心者同然であり、完全に固まってその様子を見守るしかなかった。




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