【完結】闇落ちした聖女候補は神様に溺愛される

みやちゃん

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第3章

リーナの望み(ヴォルティス視点)

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ヴォルティスはリーナのところに戻ったのは次の日だった。
ルキアからリーナの悩みを聞き、どんな顔をしてリーナに合えば良いのかわからなかったから。

「ヴォルティス様‥」

戻るとリーナが明らかにホッとした顔をした。その顔をみて嫌われてはいないと実感して私もホッとする。

「ルティと呼んでほしい。」
いつもは愛称でなかなか呼んでくれないが、ルキアとの絆の深さを知ってどうしても呼んで欲しくなった。

「‥ルティ、昨日はすみませんでした。自分の苛立ちをあなたにぶつけて、八つ当たりをしてしまった。」
リーナは謝ってくれるが、謝るべきは私の方だろう。

「いや、私がリーナの気持ちを全く考えてなかったんだ。すまない。」

「ルティが謝ることなんて何もないです。」
リーナは泣くのを我慢しているように見える。

こんな顔をさせたいわけではない。
リーナには笑っていてほしい。

「リーナ、何をしたいのか言ってくれないか?私はリーナの本当の思いを知りたい。言ったら傷つけるかもしれないなんて思わなくてもいい。言われない方がずっと悲しい。私のわがままに巻き込み、リーナを不安にさせた。」

何でも言い合える関係になりたい。
ルキアの話が本当だとするとリーナは私に遠慮して今までも自分の思いをのみ込んできたはずだ。

私はリーナとずっといられる事に浮かれていた。
何より嫌われて離れていくのが怖かった。

だから、リーナを甘やかした。ずっと側にいた。喜びそうな事は何でもした。
それはリーナが望んだ事ではなく、私がリーナが望んでいそうと思い込んで行なった事だった。
それがリーナの負担になっているなど考えた事もなかった。

「ルティ、あなたがいてくれて私は幸せです。そんな悲しそうな顔をしないでください。」
リーナの手が近づいてきて涙を拭き取ってくれる。
その時初めて自分が涙を流している事に気づく。

「そうですね、今私は何のために生きているのかわからなくなりました。ルティや他の神様たちはもともと永遠に生きているので、意識した事がないかもしれませんが、人は終わりがあるからこそ、一生懸命に生きるのだと改めて思いました。」

リーナは生まれも育ちも有限の命である人なんだとヴォルティスは改めて思った。
終わりがあるから頑張れる?
どんなに頑張って生きてもすぐに死ぬ。頑張った事が無駄になるのではないか。
なぜ、すぐに死ぬのにそんなに頑張れるのだ?

何のために?そういう顔を私はしていたらしい。

リーナは笑った。
「短い命だからこそ、明日こそは今日よりも良いものにしようと思うのですよ。私ももっと色々な事に挑戦していきたい。違う明日を見たい。」

前にも言っていた。聖女として頑張っていきたいと。あの時から何も変わっていなかった。

私はリーナがいるだけで幸せなのだが、リーナはそうではないようだ。

「では、私と色々な事に挑戦していこう。私はリーナといるだけで幸せだ。だから、リーナがしたい事をして私は横にいる。どちらも幸せだろう?」

リーナは目を見開いた。
きっと私が認めないと思ったのかもしれない。
実際、ルキアがリーナの悩みを教えてくれていなければ、そうなっていたと自分でもわかる。

リーナが自分から離れたがっていると思い、不安が強くなったはずだ。リーナをさらに甘やかして、否定されれば‥どこかに閉じ込めていたかもしれない。

ルキアはきっと私がそうするとわかっていた。だから、リーナの気持ちを教えてくれたのだ。
ルキアには迷惑ばかりかけている。
ルキアに会いに行ってもリーナの話ばかりしていた自覚もある。
だが、呆れた顔をしながらもルキアの眼差しは優しかった。生まれた時からずっと見守り続けた私の親のような存在。ルキアにも甘えていたのだなと今なら思う。
また、お礼を言いにいこう。

「リーナがやってみたい事を教えてくれないか?どうやったらできるのか一緒に考えるのもきっと楽しい。」

「ルティ、ありがとう。」
リーナを涙を流した。

リーナの望みを叶えるのが私の役目だ。リーナの気持ちがわかるとはいえ、ルキアにだって譲らない。

紙に書き出したリーナの望みはこの数百年の間にものすごい数になっていた。
絶対にかなわないと思うことから簡単にできてしまうことまで100以上の希望があった。

ウキウキしながらアレもコレもと書き出していたリーナがペンを走らせる手を止める。
「これを叶えて行くのには相当な時間がかかりそう‥減らした方がよいかな?」
ブツブツと独り言を言っている。

ヴォルティスがリーナの頭を撫でおでこに口づけをおとす。
「時間は無限にある。今思いつくものを書き出してみろ。一つずつ叶えていこう。」
ヴォルティスは優しくリーナを見つめる。

書きあがった望みをヴォルティスはパラパラと紙をめくった。
最初にあった紙の三倍には増えていた。

「リーナはおもしろいな。こんなにやりたい事があったのか。早く言ってくれれば良かったのに。」

「すいません、あまりにルティが楽しそうに明日私と過ごす予定をたてていたので‥それにルティは私が他の神様や人々に関わるのをよく思われなかったので言いにくかったんです。」
リーナは苦笑いをする。
そう、リーナが他の者と楽しそうに話すだけでも私よりその者が良いのかと不安になっていた。
そして、元の世界に帰りたいと言われるのも嫌だった為、人の世界に行くのも嫌だった。
口にこそ出していなかったが、きっと態度に出ていたのだろう。
リーナはそれらをわかった上で全てを我慢して私のそばにいてくれたのだ。

簡単に叶えられるものからやってみるか。

『故郷でお墓参りがしたい』

そんなすぐに叶えられる望みすら私に遠慮して言わなかったのかと思うとリーナに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「リーナの故郷に行こう。ついでに故郷近くの町の名物お菓子を買おう。これで2つの望みが叶うな。」

明日という日が楽しみだった。だが、リーナが楽しめば‥笑ってくれるならもっと楽しいはずだ。

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